金をかけだす女達
吉子ちゃんがサンタ帽をつくってきた。
「高校の家庭科以来にミシン出したわ」
「えっ、すごいね。この素材とか、なんていうの? ベロア?」
「こだわりましたとも」
なんてったって准くんにかぶせるやつだからね、と吉子ちゃんが胸を張った。ガチじゃねえか。
「途中お母さんが茶々入れてきたりしてさ」
「ああ、あるある」
裁縫とか、慣れないことしてると珍しがってお母さんが「あんたもっと綺麗にやりなさいよ」だとか口出ししてくる。そして見かねたお母さんが結局貸しなさいとか言って全部やってくれるやつ。吉子ちゃんは実家暮らしだ。
「吉子母と共作?」
「いや、これは自分で作るからってお母さんの手出しは禁じた」
「ええ、あまりにもガチ」
びっくりした。吉子ちゃん、予想以上に准くんに対して本気だ。
「おはよ〜。わっ、帽子がついてる!」
「めぐみちゃんおはよう。吉子ちゃん渾身の作品だよ」
「頑張りました」
「え〜、すごいね、この、素材とか」
「なまえちゃんと同じこと言ってる」
だって予想外にちゃんとした素材のサンタ帽だったから。本当に作るとしてもフェルトみたいなのをボンドで貼って工作するぐらいだと思ってたからミシンを出してきた吉子ちゃんにびっくりしたんだよ。
そう言ったらフェルトって小学生じゃないんだから、と言われた。うるさい、小学生で止まっているんだよ私の家庭科は。
「ちゃんとぽんぽんもついてる」
「かわいいねえ」
准くんの前で吉子ちゃん作サンタ帽をかぶった准くんをひたすら眺めていると根付さんが出社してきた。
またあなたたちは……と言わんばかりの顔だ。わかってる、妙齢の女たちが等身大人形にはしゃいでいるのはキツいっていうのは分かってるから何も言わないで根付さん。
祈りが通じたのか「ほら、早く仕事をしなさい」と散らされるだけで済んだ。いつもなら嫌味のひとつやふたつ言われるがいい加減呆れ果てたのかもしれない。根付さんも帽子がついたことに気付いたのか一瞬准くんに目を留めたので心の中でそれ、吉子ちゃんがつくったんですよ、と言っておいた。
***
「えっ、なんか増えてるんだけど」
翌日出社すると准くんが昨日より強いクリスマス感を放っていた。
「あ、なまえちゃんおはよ〜」
吉子ちゃんはまだ出社していない。ということはこれはめぐみちゃんが?
「めぐみちゃん、これは?」
「吉子ちゃんがサンタ帽作ってきたから私も何かできないかと思って!」
「えっ、このマントみたいなのめぐみちゃんが作ったの?」
「いや、買った」
不器用なので、と言っためぐみちゃん。確かによくコーヒーの粉をこぼしている。
「頭だけだとさみしいかなと思って……。吉子ちゃんみたいにちゃんとしたのじゃなくてパーティグッズだけど」
「でもクリスマス感は増したよね!」
服は着せられないけど服にもクリスマス感を出したいので赤いマント。首のところでリボン結びにするタイプで、ひもの先に白いぽんぽんもついている。裾にも白いふわふわ。もともと上の隊服が赤なのでよりサンタコスに近づいた感はある。
「おはよ〜。わっ、なんか増えてる!」
「めぐみちゃんが買ってきてくれた」
「わ〜! 准くんがサンタに近づいてる! めぐみちゃんナイス!」
「えへへ〜」
「え〜、私もなんか買ってこようかな」
みんなが准くんに貢いでいるのを見ると私もメディア対策室の一員として何かしたいなってきもちになってくる。でもあとサンタに足りないものってなんだろう。
「あと何がいるかな」
「うーん、電球とか……?」
「電球!?」
「ほら、イルミネーションみたいな感じでさ」
「めぐみちゃんは准くんをクリスマスツリーにする気なの?」
当初の目的はサンタだったはず。サンタは光らないよ。
「アリっちゃアリ」
「吉子ちゃん?」
「ほら、本物の嵐山くんもなんか光ってるからさ」
「光……? いや、でもちょっとわかるな」
嵐山くんの笑顔がまぶしくて輝いて見えることはある。それはわかる。
「でもそうすると准くんの顔に電球を巻きつけることになるんだけど」
「それは普通に嫌」
「そもそも電気使うやつって根付さんに怒られるんじゃない?」
「確かに」
こんなことで無駄に電気を使うなって怒られる気がする。ただでさえ呆れられてんのに。
「あ、わかった」
「はい、吉子ちゃん」
いつの間に挙手制になったのか吉子ちゃんが手を挙げたので指名してやる。
「この准くんサンタに足りないの、トナカイだ」
「はあ〜、なるほど」
「今日買って帰るわ、トナカイのぬいぐるみを」
任せといて、と親指を突き出した。
181207