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 数日前、この忍術学園に天女と呼ばれる女が現れた。その噂を耳にしたとき、意味がわからずぽかんと間抜けな表情を晒してしまった。同級生たちが言うには、どうやら先輩方の多くはその天女さまに惚れてしまったようで、今、忍術学園はてんやわんやの騒ぎだそうだ。とはいっても騒がしいのは惚れている先輩方のみで、無関係の俺たち四年生以下はのんびりと過ごしている。
 今日は俺の部屋に同じ組のタカ丸の他に仲の良い滝、喜八郎、三木を呼んで茶会を開いている。学級委員長委員会に属する俺は、こういったのんびりと茶を飲み、菓子を貪る時間が好きでよく同級生を部屋に招いている。
 悠然たる空間に、外のざわめきが響く。どうやら例の天女さまと六年生が近くを通っているようだ。

「それにしても天女人気はすごいな」

 なんとなくぽつりと呟くと、各々違うことをしていたみんながこちらを向いた。滝は苦々しい顔を浮かべている。

「……七松先輩も天女様に惚れたそうで委員会活動が減ったんだ」
「へー、いいことじゃん」
「まあ、今のところは束の間の休息と思えるが、少しでも体が鈍ると、七松先輩が戻られたときにどうなることか!」

 想像もしたくないようで、アイドルにあるまじき形相を浮かべている。しかし、七松先輩の殺人サーブを受けないのはありがたいようで、ぐぬぬと唸っている。
 そういえば滝がボロボロになって帰ってくることも減っているな。それでも滝が主体となって委員会活動を行っているので疲れて帰ってきているのだが。七松先輩も、ランニングと塹壕掘りはともかく、一方的なバレーはやめたらいいのに。親睦を深めるどころか溝が深まっている。
 珍しく三木も滝の話に共感している。会計委員会も、潮江先輩が委員会活動を行う回数が少なくなっているらしい。そして主戦力である潮江先輩が来ないことは痛手だが、無茶な要求をされることがないことは嬉しいらしい。
 みんなの話を聞きながらずずっと茶を啜り、我関せずな様子で踏子ちゃんと戯れる喜八郎を見た。

「喜八郎のところの立花先輩はどうなんだ? 俺は立花先輩が、たとえ天女であれ我を忘れて愛を囁くところが想像できないんだけど」
「立花先輩ならちゃんと委員会に来てるよ。天女さまにも惚れていない」
「ほー、それは立派なこった」
「いや市蔵、それが当たり前だ。はぁ、僕のところの潮江先輩も立花先輩のようにきちんと委員会に来てくださらないだろうか……」
「僕のところの久々知くんもそうだよ。来るのは来るんだけど、上の空で……。久々知くんしか委員会をきちっと行えないからみんなはらはらしてるんだ。土井先生がその分を補ってるんだけど大変そうで心配なんだよ」

 喜八郎以外は各々先輩に不満があるようで煎餅をかじりながら文句をつらつらと垂れている。まるでいつもの学級委員長委員会の風景のようだ。
 みんなの話を聞きながら俺の先輩たちを思い浮かべていると、三木に「市蔵、お前のところはどうなんだ?」と訊かれた。

「いやー、前の委員会行かなかったからわかんないや」
「……そうか、立花先輩のようだといいな」

 滝が遠い目をしながら励ましてくれた。まったく嬉しくない。
 それに尾浜先輩も鉢屋先輩も、そんな女性に熱心になるような人では……ない、と思う。いやそんなにたくさんの先輩方を魅了するのだから先輩方も引っかかってそうだなあ。
 まあ、先輩方が誰を好きでも、平和に過ごせたらそれでいいや。

20120825/blog掲載
20131230/remake

ヒトリヨガリ