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「なんかプロポーズみたい」

 緊張の高まりから、ついそんなふざけたことを口にしていた。
 降谷くんは、そんな私の軽口に納得げに頷いた。

「それも悪くないけど、プロポーズはまた改めてがいいかな」
「ま、待って、私まだ付き合うなんて言ってない!」
「でも僕のこと好きなんだろう?」
「好きだけど」
「じゃあ問題ないじゃないか」
「問題ありまくりだって。私は降谷くんと友達でいたいんだから!」

 思わず声が大きくなってしまって、降谷くんは「しー」と口の前に指を一本立てた。
 はっとなって口を手で押さえた。

「……つまり、一花は景たちの代わりになりたいの?」
「代わりってわけじゃないけど、まあそれに近いのかな」
「じゃあそれは無理だよ。景の代わりは誰にもできない。……一花だから無理なんじゃない。もし萩原や松田、伊達が生きていたってそんなことは無理だった。同じように松田を萩原の代わりにすることも、伊達を松田の代わりにすることもできはしないんだ。もちろん、一花の代わりを誰かに任せることもできない」
「そう、だね」
「それに一花は友達ってことに拘っているけど、別に僕は友達であるあいつらを好きだったわけじゃない。友達なんて、ただのカテゴリーでしかないだろう?」

 言葉にされると、それは当然のことだった。私が変に意固地になっていただけだった。そんな私の凝り固まった性質を、降谷くんは優しい声と言葉でするすると解かしていく。

「僕は一花が好きだし、一花も僕のことが好きだ。感情は今までもこれからも変わらない。変わるのはカテゴリーが友達から恋人になること。たしかにそれで僕の友達はまた一人いなくなる。だけど、僕が愛して、そして僕を愛する人間の数は一緒のままだ。僕は悲しくも寂しくもならない。逆に幸福さえ覚える」

 それでも、僕の言葉を受け取ってはくれない?
 降谷くんに問われて、私は無言で首を横に振る。
 言葉は出せなかった。膨大な感情が胸につっかえて、いっぱいいっぱいだった。
 何度も何度も呼吸をして気持ちを整えてから、やっと「私も、降谷くんのことが好きだよ」と言うことができた。
 そのあとは、栓が抜けたように言葉が溢れ出す。

「大学のときから好きだったよ。好きに決まってるじゃん。ずっと好きだったのに、萩原くんも諸伏くんも松田くんも伊達くんも、みんないなくなっちゃうんだもん。私が、私だけが残って……降谷くんを一人にさせないようにしないとって……」
「うん。ありがとう」
「本当に、みんな、なんでだろうね。私、みんなに降谷くんのこと相談してたんだよ? 応援してくれてて……。……みんなに報告したかったなあ」

 みぞおちあたりが、もやもやする。
 好きだった降谷くんと想いを通わせられたのに、こんなにつらい。
 冷たくなったペットボトルを握り締める私の手の上から、降谷くんが柔らかく手を握った。

「報告しよう。今はまだできないけど、時期が来たら一緒に墓参りに行こう。それで盛大な結婚式でも挙げて、あいつらを存分に悔しがらせよう」

 そう言っていたずらっぽく目を細めた表情は、少しだけあのころのようで、だけどあのころにはなかった愛情を感じた。
 今度こそプロポーズみたいな言葉だったけど、私はそれを茶化すことなく力強く頷いた。
 ふたりきりの夜の公園で、十年越しの片想いはこうして静かに幕を閉じた。

ヒトリヨガリ