リボーンの命令で子供の姿で巨大な裏の組織に潜入して半年ほどが経った。初めは、子供の姿は楽だなあ、と気楽に考えて過ごしていた。だけど日に日に様子がおかしくなっていくお世話係のバーボンやその他大勢に、最近はほとほと疲れはててしまった。

「ほら愛子、今日のおやつはプリンですよ」

 悪の組織に所属していると思えないほど、締まりのない笑顔を浮かべたバーボンは私の部屋に入ってくるなり手のひらサイズの瓶を見せてきた。中身は薄い黄色と、艶やかな茶色の二層。
 いつからか、バーボンはことあるごとに私に色んなものを貢ぐようになった。さすがに五歳の私に高級なものは渡してこないけど、頻度が多すぎる。その貢いでくる物の中でもダントツで私は食べ物が嫌いだ。なぜならば――。

「どうしたんですか? 食べないんですか?」

 私は左手で瓶を掴み、右手にスプーンを握ったまま固まっていた。
 私の正面に椅子を置いて座ったバーボンは、じいっと私を見つめている。
 私はできるだけバーボンのことは意識から排除して手元だけを見た。瓶の中に長いスプーンを差し込んで、なめらかなカスタードを掬い上げる。振動でぷるぷると震えるカスタードに、照明が当たってきらきらと輝いている。
 見た目だけでもったりと濃い甘さが想像できる。
 そうっと小さなスプーンから落とさないように慎重に口の中に入れれば、思った通りの濃厚な味が広がった。

「上手に食べられましたね!」

 顔を上げるとバーボンが満面の笑みで私を見ていた。

「……そりゃあ食べられるよ、これくらい」
「でも不安定なのに落とさず食べたのは偉いじゃないですか」
「こぼさないよ」
「昨日そう言って部屋の中をめちゃくちゃにしたでしょう?」
「あ、あれはパイだったから!」

 バーボンは小さなことでも褒める。それはもう盛大に褒めてくる。
 こんな外見だし多少は仕方がないと思うけど、度を越していると最近は思う。止めてとも言いづらいと黙っているうちに、一人でプリンを食べただけで偉いと言われるまでになってしまった。
 食べ物をバーボンに与えられるときは、セットで私を褒め殺すというイベントも発生するから嫌なんだ。
 他の本とか服なら、褒めるのは読んだあととか着たあと。それに私も褒められて嬉しい。
 それも、そのうち「一人で服が着れて偉いですね」とか言ってきそうで怖いけど。
 黙々とプリンを食べ終えると、バーボンは「よく食べましたね」とお決まりの台詞を口にしてから私の頭を撫でた。私がバーボンと初めて会ったとき、私はまだ骸の幻覚によって虐待され続けたボロボロの子供になっていたままだったから、ごはんを最後まで食べたらバーボンは褒めてくれたのだ。生きるために食べて偉い、と。
 そういった経緯を知っているからこそ、強く拒絶できないまま。

「なんでそんなに優しいの?」

 多少歪んでいるような気もするけど、根底にあるのはバーボンの優しさだ。
 組織に拾われたボロボロの子供なんて、点滴で栄養を与えて飼い殺してもいいはずなのに、バーボンは私を褒めて育てようとしている。まるで私は生きてもいい人間だと教えるように。
 バーボンは、笑みを濃くした。

「好きだからですよ」

 ありがとう、私もバーボンのことが好きだよ。なんて返せない、重々しい雰囲気があった。

「そ、その好きって……」
「ん?」
「いや、なんでもない……」

 絶対に藪蛇だ。深く聞いてはいけないし、考えてもいけない。
 バーボンは私を可愛がってくれてる、組織にしてはいい人。私はそんな優しさを無邪気に甘受する幼い子供。そう自分に言い聞かせて、できるだけ軽く「ありがとう」とお礼だけを返した。




***
リクエストではありませんが、以前いただいた「ロリコンif」のリクエストを再度挑戦してみました。
前はロリコン成分が少なかったなあと思ったので。
今回の話ではバーボンだけですが、一応ウイスキートリオ全員のロリコン傾向は考えています。

バーボン→初恋のお兄さんになりたい
スコッチ→庇護欲を拗らせた親バカ
ライ→恋愛対象がティーン以上(ジョディさんや明美さんがいるから直接的なアプローチはしないけど、夢主がライを好きになったら対等に扱う)

バーボンとライは「捕まえたいから大人まで待つ」ってタイプ。スコッチは「子供を可愛がりたい(庇護欲)」だから、大人になったら距離を置く。巣立たせる。

結局私の倫理観的に、幼い子に一方的な欲をぶつけるのは好きじゃないから、好きだとかなんとか言ったり過保護だったりしても、あくまで立場をわきまえたもので、大人になるのを虎視眈々と狙ってと思う。

その他裏設定(救済ifの世界軸とか)があるけど、そこまで書くと長くなりすぎるのでこれくらいにしておきます。

ヒトリヨガリ