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 南イタリアには国内最大のマフィア、ボンゴレファミリーが存在している。

「黒の組織?」

 遠くに海を臨む山の中の屋敷の一角、一番陽の当たるボスの執務室。そこで私は綱吉と対面していた。

「はい。愛子さんには黒の組織へ潜入してもらいたいんです」

 開いた窓から入った暖かな風が、綱吉の胡桃色の髪を揺らした。ふわふわの髪を見つめながら、もう一度心の中で「黒の組織」と呟いた。

「ふうん。任務なんだから、もちろん断らないけど。……綱吉がそんなに嫌そうにするなんて、黒の組織って危険なの?」

 綱吉のデスクに近づきながら尋ねた。
 私はボンゴレの諜報組織であるチェデフにこそ所属していないが、自分の能力を活用するために潜入活動を行っている。マフィアの掟を守らない組織や、マフィアの領域に踏み込もうとする表の会社などに潜り込んで、その事実を確認するのがいつもの私の仕事だ。
 任務の書類を受け取ろうと腕を伸ばせば、綱吉の椅子の後ろからひょっこりとボルサリーノを被った少年が現れた。

「潜入捜査の得意なお前でも危険なくらいヤバい任務だ」
「リ、リボーン、そんな脅かすようなこと言うなよ! 愛子さん、慎重に動くから危険なんてないですよ、心配しないでください!」
「甘いこと言ってんじゃねえ。ボスがそんなんでどうする」
「そんなこと言ったって!」
「うるせえ」

 バンッと綱吉の頭スレスレに発砲したリボーンに、私も綱吉も硬直した。相変わらず短気すぎる。リボーンが本気で綱吉を撃つ気がないことはわかっているけど突然の発砲音に心臓がバクバクする。
 心臓に手を当てて落ち着かせていると、リボーンの矛先がこちらに向かった。

「愛子も早く書類を受け取れ」
「あ、はい」

 引ったくるように素早く受け取り、リボーンに促されてソファーに腰を下ろした。それからリボーンは私の前に足を組んで悠然と座った。
 リボーンはテーブルの上に置いた書類をトンと指差す。

「いいか、まず潜入の期間だが未定だ」
「未定?」
「ああ。だが確実に長期になる。黒の組織は世界中で活動している犯罪組織だ。正式名称ではなく、黒い服を身につけているからそう呼ばれている。奴らは完全犯罪を得意としていて証拠を残さねえ完璧主義者。……前から気になっていたんだが、最近イタリアと日本での活動が目立つからな、先に手を打っておこうってわけだ」
「たしかにそれは長期になりそうね」

 怪しまれないように、ゆっくり時間をかけて馴染まなくてはならない。

「潜入捜査っつっても、何かを探る必要はねえ。目立つ行動をするとバレるからな。有事の際に動ければいい」
「わかった」


 軽く書類に目を通すと、黒の組織についての情報が簡単に書かれていた。文字を追っていると、部屋の扉が開きメイドが入ってきて私たちのテーブルに紅茶とエスプレッソを、綱吉のデスクにカフェラテを置き一礼して退出した。無駄のない動きと存在感は、さすがはボンゴレのメイドといったところだ。

「幹部にはコードネームが与えられるのね。お酒の名前なんて洒落てるね」
「愛子には幹部になってもらうから、覚悟しろよ」
「へ? なに言ってるのリボーン! 私が驚くくらい弱いの知ってるでしょ? 幹部なんて死ぬわよ」

 優雅にエスプレッソを飲むリボーンを睨むが、リボーンは私のことなんて気にせず口元だけ笑っている。
 リボーンの次に奥の綱吉を睨むと目をそらされた。

「愛子さん」
「なに綱吉」
「俺は反対したんですけどね、リボーンが勝手に計画立てて……」
「だからって、綱吉も私の弱さ知ってるでしょ!」

 叫んだ口を潤すために目の前の紅茶を口に含むと、綱吉の顔は真っ青になりリボーンはより一層笑みを深くした。嫌な予感がする。

「その、本当にごめんなさい!」

 綱吉の悲鳴のような謝罪が聞こえるのと同時に強い目眩に襲われ、ソファーに倒れた。

ヒトリヨガリ