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私は立派な建物を背にして公園に向かった。ここは池がたくさんある。池の周りには大勢の観光客。今思うと建物のそばには観光客はいなかったから随分と静かだった。
家族連れの集団に紛れて、池に浮かんだ石の上を歩いたり、小さな橋を渡ったり。幼少期の探検みたいなことをして楽しんだ。
まだ気温は高くない季節だけど、太陽の下で動き回っているとじんわりと汗をかく。ちょっと休憩しようと木陰を探すと、黒いジャージの男性が木の根元に寝転がって、ぼうっとしていた。サングラスで目もとは見えないけど、たぶん眠っているわけじゃなさそう。
「おじさん、何しているの?」
声をかけると、男性はゆるゆると私を見上げた。
「おじさんじゃなくて、お兄さんだ」
「おじさんみたいなお兄さん、何してるの?」
「空見てんだ」
そう言って上を指差すが、葉が生い茂っていて空なんて見えない。
「今日、平日でしょ。お兄さん大人なのに働いてないの?」
「お休み中だ」
「ふーん」
無愛想だけど、なんとなく親近感を覚える男性だ。おしゃれサングラスにジャージというチグハグさが、外見と中身が違うアンバランスな私に合っているのかもしれない。
妙な居心地のよさを感じて、私はお兄さんの隣に寝転がった。
「なんで横に寝ころぶんだ」
「お兄さんが寂しそうだから〜」
心底、鬱陶しそうな空気を出してきたが、どっかに行けとは言われなかったからそのまま見えない空を見上げた。
柔らかな太陽の光を受けた葉がサワサワと揺れる。芝生のしっとりとした感触が露出した肌に感じる。
少し早い春の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
前途洋々、希望に満ちた門出が似合うような日だ。
それなのに、お兄さんの纏う色は黒。服もそうなら気持ちもそうだ。サングラスで表情ははっきりとはわからないけど、強張っているように見えた。
何か嫌なことでもあったのか。私の存在を許容しているというより、すべてのものに対して無関心と言った方が正しい気がした。
なんとなく、そんなお兄さんを一人にできず、ベルモットが建物から出てくるまで私はお兄さんの横で見えない空を眺めて時間をつぶした。