ライ×お昼ごはん
「うわ」
「『うわ』とはなんだ」
お昼ごはんを食べようと食堂に行けば、ライがいた。思わず声を上げてしまったけれど、Uターンして部屋に戻ろうとしたがライに捕まってしまった。厄日か。
「どうして逃げるんだ」
「だって目つきが怖いから」
「……確かに優しい目はしていないが、それはジンも一緒だろう? 俺だけ避けられるのは納得いかないな」
「そんなこと言ったってしかたないじゃない」
「まあ、それよりも昼飯を食べに来たんだろう? 食べずに部屋に戻ってどうするつもりだ」
逃がさないように私の腕をぎゅっと力を込めて握りながらライが言った。
部屋にはケーキがあるから大丈夫、と言えばライは顔をしかめた。「感心しないな」と呟くように言って、無理やり私を食堂のカウンターに連れて行った。
「何を食べるんだ?」
「いや、だから……」
「何を食べるのか聞いているんだ」
二度目の言葉は反論できないほど強い口調だった。ピクリと体が硬直して、反抗するのは諦めてメニューを見た。ずらっと並んだメニューを一通り見てから、ミニ天丼を頼んだ。待たされることなくお盆にミニ天丼が乗せられ、私が持ち上げる前にライに奪われた。
「あ、ちょっと」と言っている間に、空いている席にライが座った。しかたなくライの正面に座ると、ようやくミニ天丼を返してもらえた。
「しっかり食べろ」
「食べてるよ」
「お菓子ではなく、ごはんを食べろ」
「だから、ごはんも食べてるよ。そりゃあ、たまにめんどくさくなってケーキで済ませちゃうときもあるけど。……あ、だからたまにだって、そんな睨まないでよ」
ライのジトっとした目を無視して、いただきます、と割り箸を割った。サクサクの天ぷらにトロっとしたタレが絡んで美味しい。エビにホタテも乗っていて無駄に豪華。野菜の天ぷらもほくほくしていて食感が楽しい。
お菓子だけじゃなくて食べることが好きなんだから、好んでごはんを抜かさないよ。そもそも成長期でいくらでも食べてられるんだから、どんどん食べたいよ。そんなことをグチグチ言いながら天丼を食べていると、あっという間に食べ終わった。
「いい食べっぷりだな」
「でしょ。よく言われる」
「そんなに食べるのにヒョロヒョロなんだな」
不思議そうに私の体を見るので、呆れてしまった。成長期って言葉、保健の授業で習わなかったのかな。
「食べても食べても成長に栄養が使われるから、適度に運動していたらこんなもんだよ。ライも昔はそうじゃなかったの?」
「そうだが、俺は男だから女のお前は違うのかと思ったんだ」
ライは面白そうにしばらく私を見たあと、何も言わずに席を立った。まさか勝手に帰るなんてことはないだろうから、お茶を飲んで待っていると、すぐにライは戻ってきた。
ライの手には可愛らしいプリンが握られている。そのプリンを私の前に置き、「食べろ」言ってから席に着いた。食べろと言われたら食べるけど、一体なんだ。ヒョロヒョロのガキは嫌いだから太れってこと?
頭の上にハテナをいっぱい浮かべながら、ありがたくプリンをいただいた。
「ケーキの代わりの甘味だ」
プリンをほとんど食べてから、やっとライがプリンを持って来た理由を話した。今さら感があるけれど、ライがそんなことを気にしていたことが面白くて気にならなかった。プリンを食べ終えてからお礼を言うと、ようやく今日初めてライが笑った。笑ったと言っていいのかわからないくらい変化はないけれど、雰囲気が柔らくなったから笑ったんだろう。
いつも、こんな雰囲気ならもっと親しみやすいのに。なんて、ライには絶対に教えない。
――――
「ライ×お昼ごはん」のリクエストありがとうございました!
お昼ごはんのデザートにプリンを追加させていただきました。