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「報復型懲罰術式……おねえさんが天元と取引をして、高専に遺していった忘れ物≠ナす」
――罪には罰を。
大切な人が誰も手を汚さないよう、自分が死した後発動する――それも、術者が定めた一定の条件を満たすことがなければ、永遠に発動することもなかった。縛りに縛りを重ねた、そんなわすれもの=B
果たしてその術式は発動した。それは総監部ならやりかねないと、彼女はわかっていたということでもある。
しばし口を閉ざしていた五条は、静かな瞳で手紙を見つめる。
「……僕に一言くらい言ってもよかったじゃん。一応、担任だったわけだし」
「教えたくなかったんだろ」天井を見つめたまま枯葉は答えた。「あのこはやさしい子だったから、ひとり抱えて地獄へ持っていくと決めた。……そもそも、条件が厳しすぎる。本人だって発動させるつもりなんてなかっただろうに」
「どうしますか学長。追及しようにも、本人はとうの昔に死んでいますが」
「死者を罪に問うことはできない。我々は彼女の願いすら叶えてやれなかった。たったひとりの妹までこの世界に復讐者として招き入れた時点で、彼女を罪に問う資格はない」
故に、この件に関しては不問とする。
枯葉が横たわるベッドの隣、上半身だけを起こした夜蛾は、沈痛な面持ちで家入へ答えたのだった。
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浄界(より優れた結界)梵界(浄界より優れた結界)
「日本には天元が呪霊の発生抑制と補助監督役の結界術の精度を底上げするため数多の浄界がある
その中で要となる四つの浄界、皇居を中心とした浄界、東京遷都候補地だった高専地下薨星宮(こうせいぐう)の浄界、京都山国御陵(やまくにのみささぎ)浄界、そしてここ日本を東西に分断する巨大浄界……飛騨霊山(ひだれいざん)浄界
死滅回游はこの天元が作った浄界をベースに作られた梵界だ。
死滅回游の管理者は誰でもない、だが強いて言えば私でもコガネでもなく天元だったんだよ。勿論私が勝手に仕立て上げたんだけどね
渋谷事変の後、彼奴(やつ)がこれらの浄界を解き放てば死滅回游は終わり、私の思惑はすべて水泡に帰したんだ
だがこれらの浄界がなければ脈々と受け継いだ呪霊との戦いや結界術のノウハウを1000年前からやり直すことになる。多くの人間が死ぬだろう。彼奴は賭けたんだ、私ではなく彼等が勝つことに」
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「術式自体は『死滅回游』からインスピレーションを得て形成しました。ベースはおねえさんの残した結界のメモをおねえちゃんに譲っていただいて、そこから組み合わせで……簡単に言うと、北海道から沖縄まで、各都道府県にひとつずつ『楔』を置いて、霊脈……天元さまの維持していた結界をもう一度繋いでいく感じで…あ、海外ドラマとか見ますか? 相関図にピン刺して糸で繋いでるやつ、あれを想像するとわかりやすいかもしれないです」
「死滅回游は梵界、なら、その基盤となった浄界の情報を書き換えて、死滅回游のシステムそのものをつくりかえればいい(・・・・・・・・・)
「……あっさり言ってくれるなあ。それ、つまり千年ものの結界術を根底から改竄するってことでしょ」
「おねえさんはそれをするつもりでしたよ。もちろんひとりではなく、呪術界の外の界隈――異能を扱うあらゆる機関と接点を持っていたのはそれでしょう。呪術界の実質的転覆まで見据えて、十数年の長期的計画として考えていらっしゃいました。……けれど、志半ばでそれは頓挫した」
悲しそうに肩を落とす弟子のちいさな頭をひと撫でし、九十九は言った。
「自分の死が避けられないと悟った彼女は、私だけじゃなく、私を介してさまざまな勢力と意見を交わした。もちろん、そこの天元とも何度も取引をしていたようだね」
「