越前と青い春

 日焼けを知らない色白な肌に、やや切れ長の瞳。まっすぐな黒髪は高く結われていて、規定通りに着こなされた制服から伸びる脚と黒のハイソックスのコントラストが眩しい。
 身長、およそ百六十五センチ。中学一年生にしては高身長な彼女は、越前と同じ図書委員だ。

「今日は暑いね……」
「アンタは外出ないじゃん」
「気持ちの問題だよ、こういうのは。侘び寂びってやつ」
「絶対違うでしょ」
「そうかもね」

 ポニーテールにして露わになった白いうなじに汗が滲んでいる。病的なまでに青白い肌には仄かに赤みが差して、どこか退廃的な色気があった。

「ありがとう。――でも」

 間を置いて、少女が微笑を浮かべる。

「私、自分よりも背が低い男の子ってそういう目で見れないんだ」
「……じゃあ、アンタよりも背が伸びればそういう目で見れるって訳?」
「うーん……そうかもね。でも、背が伸びる頃には、もう別の女の子に目が向いてるかもね」
「ハア? 背なんてすぐに越えてみせるし、アンタ以外にこんなこと言うつもりないんだけど」
 腕を掴む力が強い。さすが運動部、とぼんやり考える。背丈は低くとも、既に膂力は彼女を上回っているようだった。
 困った、どう断るべきか。脳内で思考を巡らせながら、しかし口が自然と動いていた。

「――じゃあ、私より背が高くなって、それでもまだそう思ってくれてるなら。そのときは気持ちに応えるよ、約束する」

 彼女の返答に、少年はぎらりと眼光を強める。まるで狙いを定めた狩人のような。猫目がさらに鋭さを増した。

「上等じゃん。忘れないでよね、その台詞」
「もちろん」


「お、おチビどうしたんにゃー……?」
「越前のヤツ、好きな子に告白したものの自分より背が低い男は興味ないって振られたらしくって、背を早く伸ばして絶対に振り向かせるって牛乳めっちゃ飲んでるんスよ……ッ」
「なんて健気なんだ……」
「桃、告白してた子って?」
「ああ、一年の斎条って子ッス! 一年生にしては背の高い綺麗な子だったなぁ」
「あ、僕もその子知ってる。ポニーテールの子でしょ?」
「そうですそうです! 不二先輩知ってるんすか? 一年の子っすよ?」
「うん。あのちょっと浮世離れした感じが写真に映えそうな気がしてね。被写体になってもらいたいと思ってたんだけど、写真が苦手みたいで断られちゃった」
「あー。めっちゃ白いですもんね。いや、アレは病的……?」


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