五条の嫁

五条 ほまれ
 永遠の童顔枠。なお童顔は血筋によるもの。仕事は在宅で主に書類整理。姉と兄が野良の呪術師であり、自身も呪霊を視認することができる。
 大学在学時に入籍、現在は五条の家で暮らしているが夫は多忙で不在が多いので頻繁に実家に泊まる。

 /


「ほまれさあ、僕と結婚しない?」
「……は?」

 全てはこの一言から始まった。

 卒業が迫ってきている中、単位を取るために死ぬ気でレポートを作成していた私に対し、彼は飄々とした顔で「だぁかぁらぁ、結婚してよ、僕と」と言い放った。

「……頭、沸いた?」
「ひっど! 暴言だよ暴言、これは完全に傷ついたわー、結婚して慰めてもらうしかないわ〜!」
「当たり屋じゃんか……」

 これはレポートどころの騒ぎではない。データを保存し、ノートパソコンを閉じた私は彼に視線を向ける。

「ちゃんと説明して、五条さん」

 ニヤリと彼が笑った。



「……つまり、なに。偽装結婚しろって?」
「んー、ちょっと違うんだけどね」
 じゃあどういうことなのか。睨む私に、彼は「前から考えてたことだから」とあっさり言う。
「遅かれ早かれ、ほまれと結婚するつもりだったんだよね。ほら僕、こう見えて一途だし」
「怖気が走る台詞さらっと言うのやめてもらえませんかね」

 どの口が一途なんて言葉を吐き出すのか。彼がそれなりに女性とそういう経験を積んでるのは知っている。なんせ、本人が自ら嬉々として公表されたからだ。それを聞くたび、姉の目がどんどん虫けらを見るそれになっていってるのを知っていて言うのだから最高に性格が悪いと幼心に思ったものだ。

「ほまれにもメリットはあるよ? 結婚したらウチで暮せばいいから家賃気にしなくていいし、僕は忙しいから家事の負担も少ないし、余ってる部屋は仕事部屋にしてあげるよ? どうよ?」
「どうよっていわれても……ていうか五条さん、忙しすぎて部屋解約して高専で住んでるって言ってましたよね? 姉と兄が許しませんよそれ。一応質問しますけど、応じた場合私がしなきゃいけないことは?」
「僕といちゃいちゃして初々しい新婚の甘ーい雰囲気作りとかー、人前で僕の惚気するとかー、いちゃいちゃするとか」
「いちゃいちゃの具体的な内容は」
「ダーリンの僕とラブラブセックス」
「解散でお願いします」

 ふざけてんのかと声を大にして言いたい。休み休み言えというツッコミも彼は笑って流す。そもそも断るなんて選択肢は私に用意されてない――そんな予感があった。
 こうなったら最終手段しかあるまい。

「ていうか私、処女なんだけど。それでもいいの?」
 男の人ってそういうの面倒臭がるよね。お兄ちゃんは違うけど。自分の爪を見ながら言う私に、返ってくるのは沈黙だけ。……やはり言い方が生々しかったか。そう思いながら顔を上げると、掛けていたサングラスを外し、宝石のような青色の瞳がこちらを凝視していた。

「ほまれって処女なの?」
「そうだよ。……男いない歴は年齢」
「えっ、なんで? 明らかに非処女っぽい雰囲気じゃん」
「このおっさんはよ……垢抜けて見えるのは、私の周りに垢抜けてる人が多かったからでしょ。うちは女子大だし、そもそも盛りのついた猿みたいな男子大学生に、うちのきょうだいのお眼鏡に適う男が居るとでも?」
「おっさんやめろ。まあいないだろうね」
 下心を持って近寄ってくる男を容赦無く排除していく姿が目に浮かぶ。
 ほまれの姉と兄は根っからのシスコンである。


 初めて五条と出会ったのはまだ小学生の頃。
 ほまれが小学校五年生、五条が高校二年生の頃であった。
 五条と同学年であった姉と、姉よりひとつ下の兄と三人で帰宅するところを、偶然高専から出ていた五条と親友である夏油に見つけられたのが始まりだった。

「あっれ、なにしてんの? それなに? 兄弟?」
「……弟と妹よ。ちょっと近寄んないでよアホ菌が伝染るでしょ!」
「は? 最強に向かって失礼すぎじゃね? その気になればお前なんてイチコロなんですけど?」
「うるっせえなあ。同業でも敵わないんだから一般人の私なんてそりゃイチコロでしょうよ、これだからボンボンは世間知らずで困るわあ、ああ怖い怖い」

 自分を隠すように抱きしめながら警戒した様子の姉に、何も知らない私はその人を見た。
 白い髪と黒いサングラスが特徴的な背の高い男の人だ。見たことのないタイプ。一番近くにいる男の人である兄はこんなオラついた危ない男ではないので尚の事だった。
 その男が、ふとこちらを見た。

「おっ、普通だけどまあまあいいじゃん。妹は何歳?」
「おいどこが普通だって宇宙一可愛いだろうが凡俗が! 五年生よ、おい触るんじゃねえ! しっしっ! 失せろ!!!!」

 一歩、一歩と近づく度に後退る姉の姿は新鮮で、抱きしめられて息苦しさを感じつつもその人をじっと見る。
 サングラス越しに男と目が合う。とりあえずにっこり笑いかけると、男もニヤッと笑って返してくれた。
 何となく思う。ああ、姉の苦手そうなタイプだなあ、と。

 /

 ほまれの家は呪術師の家系ではない、普通の一般家庭だ。
 ただ上の兄弟は物心ついた頃から『そういうもの』が見えやすく、独自にその対応策を研究していたというだけである。
 そしてそれは、やや歳を離れて産まれてきた待望の末子も同様だった。
 見えることで日常生活にも苦労が多かった兄弟達は強く決心した。妹にはこんなおぞましいものを見せてはいけない。

「ほまれの家はすっごいレアケースだよ」
「でしょうね。両親も『周波数』が合うと視えるから、家族共有の秘密だと思えば結束力も高まるし」
 本来、ほまれの両親は呪霊など一切見えない一般人だ――子供達と居ると『周波数』がチューニングされ、一時的にそういうものが見えるようになってしまうだけで。
 本来ならあり得ない、前例がほぼない現象が血の繋がりか感応してしまったらしい。
 姉がまだ幼児だった頃、見えない『なにか』に襲われているのに遭遇してから存在こそ認知していたものの、どうやっても視えなかったのが両親だ。
 両親は今まで見えなかったものが見えるようになってしまうことに驚きつつも子供を疎むことは無かった。
 自他ともに認める親バカだった彼らは、自分達に異形が見えるようになったことよりも、幼い子ども達にこんな怖いものが視えていることに心を痛めたのだ。

「理想型だよねえ。普段は見えないけど、いざというときは冷静に対処できる。強みだよこれは」
「あんまり褒めると悟さんの株上がるからやめてくんない」
「なんで?! いいじゃん、旦那の株が義両親の中で上がるんだよ?」
「よくない。姉さんと兄さんが怒る」

 両親は五条と結婚したことを受け入れてるが兄弟は違う。未だに妹が弄ばれてるのではと疑いの目を隠しもしないのだ。


 /


「私と一緒に行かないかい?」
「行かない」
 穏やかな声で誘った夏油に対し、ほまれは硬い声でそう断言した。

「怖がらなくてもいい。君は僕らと同じなんだから」
「……私の両親は、猿なんかじゃない。そんな失礼なこと言う男についてくバカはいない」
「ああ! それに怒っていたのか。ほまれの両親は限定的だが視えてるし、子供を恐れるどころか受け入れて守ろうとしているんだったな――すまない、猿というのは撤回する。まだギリギリ人間だ」
「私だって視えてない。見えない一般人は猿だっていうなら、私も猿なんじゃないの?」
「君は違うさ。だって君のそれは、凛子と頼の努力の賜物であって、本来は視えているんだから」
 じり、と後退るほまれに対し、余裕の笑みを隠さない夏油。
 それはその気になればほまれを始末することなど簡単にできるという余裕の笑みだろう。実際、呪術高専でずっと鍛えてきた夏油に対し、兄弟の庇護で一般人として暮らしてきたほまれはあまりにも無力だ。
 ――けれど、対処策を持ってない訳ではない。

「私は、行かない」
 制服の上着の背に手を入れたほまれは『それ』を取り出した。
「――へえ、二人も考えたものだ」
 感嘆の声を上げる夏油に、ほまれは『それ』――刃の部分が古めかしい包帯でぐるぐるに巻かれた小刀を向けた。
 包帯には蚯蚓のような読み取れない細やかな字がびっしりと書かれ、文字は血のように赤黒い。少なくとも、まだ中学生の少女が持つとあまりにもアンバランスな代物だった。

「随分と古めかしい呪具だね、ほまれにそれを持たせるなんて――二人も決意は変わらないか」
「姉さんも兄さんも、貴方のもとには行きません。……私も、そうです」
 だから帰ってください。そう断言したほまれの瞳は固い決意で彩られている。
「あなただってわかっているでしょう。私がなにも知らないとでも?」
「……」
「猿だ、とあなたは言うけれど、それは呪術界にも適用されるべき発言でしょう。もう一度いいます、私がなにも、知らないと思ったんですか?」

「……残念だ。――気が変わったらいつでもおいで、待ってるよ」
「待たなくて結構」

 どろりと、空気に溶けるように夏油が去っていく。
 その姿を見送り――緊張の糸が切れたのか、地面に座り込んでしまったほまれは深く息を吐き、呟いた。

「怖かった……」

 これ以上一緒に居たら、恐怖で泣いてしまうところだった。
 もう二度と会いたくない。と強く思う。今の夏油はもう覚悟を決めてしまっている――最悪の方向に。
 小刀を背に戻し、鞄から携帯を取り出す。震える指を叱咤しながら、ほまれはメールを送った。件名は無題、内容は『夏油さんに会いました』――送り先は、姉と兄、そして五条悟。

 /


「あの、私にはそっち系の素質はないはずだけど……?」
 戸惑う#名前#に、スーツの女性も困った様子で「それがですね、」と口を開く。
「#名前#さん、審神者の素質バッチリあるようでして……」
「……うそ」
「悲しいかな、事実です。私もうちの本部――監査も止めとけって再三言ったんですけど、お上の馬鹿どもが#名前#さんの旦那様のことをご存知みたいだったらしく」
「ねえ、まさかそれって」
 頬を引きつらせる#名前#に、女性は無情にも頷いて返す。
「あの五条の妻なのだから、こちらに取り込めばいい道具になるだろう、そしてあわよくば五条もある程度利用できるかもしれない――という下心では、というのが監査《うち》イチの推理力を持つ審神者さんの読みです」
「上層部は馬鹿なの?」
「大半は難色を示してたようなのですが、一部の馬鹿がまだしぶとくて……いやはや、お恥ずかしい限りですよまったく。古い時代の遺物はこれだから困るんですよね」
 軽快な口調とは裏腹に、その声色には隠しきれない苦味を伴っているのが分かる。相当苦労しているのだろう。目の下にうっすらと見える隈と、化粧では隠しきれない血色の悪さがそれを証明していた。まだ年若いというのに、随分老け込んでしまったような印象を受ける。
 飲み物をストローでかき混ぜ、一口飲んで息を吐く。#名前#としてはできれば逃げ切りたい。が、それも彼女が来たという時点で難しいのだろうということくらいは察しがつく。
 この場合何が最善なのか、#名前#はもう分かっていた。

「けれどね、#名前#さん」
「うん?」
 一拍の沈黙の後、顔をあげると、真剣な面差しで女性は#名前#を見つめていた。ピリッとした感触に、自然と#名前#の背筋も伸びる。
「もし、万が一審神者になるのなら、私たちは全力で貴女のバックアップをします。……つまりですね、監査側(こっち)の審神者になりませんか、というお誘いなのですが」
「まあ」予想外の展開だ。
「それはまた急ね。どうして?」
「ぶっちゃけ、最終手段というやつです。このままだと、貴女は強制的に誘拐されて審神者の任を強要される可能性が高い。まだ私達側なら、研修先もうちの協力者のところへ斡旋してあげられますし、何より身の危険を最小限に押さえられます」
 貴女の旦那様を敵に回すのは、私達も出来うる限り避けたいのです。最後に絞り出すように呟いた声が、おそらく本音なのだろう。戸籍上の夫とはいえ、流石に妻に何かあれば口出しする可能性は無いとは言い切れない。……多分、ではあるが。
 彼女は、監査側は、それを心配しているのだろう。妻である#名前#から見ても夫は食えない男であるからして、何をするか分かったものではない。
 ふう、と溜め息を吐きながら、ぼんやりと思考を巡らせる。さて、この手を取るべきか、それとも。



「あのね、自分の幸せにくらい欲ばったっていいのよ」
 呆れた様子でそう言う#名前#は、真っ直ぐ五条の目を見ている。
「好きじゃなかったら結婚なんてしないよ、馬鹿だねえ」
 なんてことはない、そう言わんばかりにあっさりと告げられた好意に、驚かないわけにはいかなかった。
 如何せん、これまで五条が仕掛けたモーションは全て呆れ顔の#名前#に須らく流されてきたからだ。

 半ば脅迫じみた、彼女の逃げ道を奪っての結婚だったとは自覚しているし、世間一般でいうまっとうな恋愛や結婚とはかけ離れた経緯で結ばれた――結んだのだ。嫌われてるのも承知の上だった。
 だかしかし。彼女の言葉が真意であるならば、それは。
「えっ、#名前#、僕のこと好きだったの?」
「それこっちの台詞。あんたのなかに私への好意とか情とかそんなものがあるとは思ってなかった」
 それなりに良いお家の坊っちゃんみたいだし、なんか反発ついでに根っからの一般人の私を手込めにしたのかと思ってた。
 あっさりと吐露された言葉はなかなか刺激的だ。これで自分よりも六つほど年下なのだから困ったものである。
「……ふーん?」
 ニヤニヤと笑みを滲ませながら#名前#に近づくと、眉を顰めながらも拒否されることはなかった。新たな発見だ。思えば、彼女が嫌がるのは、いつも倫理的に危ういときのことが多かった気がする。
「随分と楽しそうね」
「まぁね。嫌われてると思ってた奥さんから愛されてたなんて、そりゃあ嬉しいだろ?」
「愛は呪いとか抜かす男の発言じゃないわね、それは」
「ひどいなあ、まあ確かにそう言ったけど」


「じゃあ、君にとっての愛は何なんだい?」
「……希望とか、祈り、あと、未来、かな」



「親権はやらん」
「開口一番がそれ?」
 ぐったりと寝台に体を沈めながらも、五条を見据える瞳の奥の鋭さは変わらない。点滴に繋がれ、満身創痍と言わんばかりの顔色の悪さは彼女がどのような修羅場を乗り越えたのかを雄弁に語っていた。
「顔見たけど、赤ん坊ってあんな感じなんだね」
「これから、もっと人間らしくなっていく」
「髪色は僕に似てたよ。てっきり#名前#と同じ黒髪だと思ってたんだけど」
「それだけ、あんたの遺伝子が強かったってことじゃないの?」
 産まれてきた子供は男児だった。これはまた周囲にバレたら何かと厄介なことになりそうだ――そう思っていると「だから言ったでしょ」と、眼下の#名前#がうっすらと笑みを浮かべる。
「あの子は、私の子供。ただの一般人で、あんたの子じゃない。“私が別の人との間に作った子”。何て言われたって、そう言い張る。……その為に、別れるって決めたんだから」
 吐息と共に吐き出された言葉は、#名前#が腹の底から思っていることなのだろう。
 同時に、結婚する前から#名前#はある程度の覚悟を決めていたのだと察する。もしものときに足手まといにはなるまいと、潔く離別できるように自分に対して寛容で愛情深くしながらも離れる覚悟もしてながら、毎日を何てことはないと言わんばかりの顔で飄々と過ごしていたというのなら。
 彼女の強さを、自分は見誤っていたのだろう。

「強いなぁ」
「あの子の親は私だけだもの」
 そう語る顔は正しく母親のそれで、



 五条と#名前#が結婚したのは、#名前#が二十歳、五条が二十六の時だった。
 #名前#はまだ大学生で、短大に通っていた彼女は卒論に追われ悲鳴を上げながらも充実した日々を送っていた――そんな矢先。
 なんの前触れもなかった唐突な#名前#の結婚に、周囲はもちろん、#名前#の家族――主に姉と兄は難色を示した。きっちりスーツを着て挨拶に訪れた五条に何かを察しつつもあえて(・・・)言及することなく「ほまれの決めたことなら」と受け入れた両親とは違い、二人は五条の仕事が何であるか知っていたからである。
 愛する妹を渡してたまるかという気持ち半分、危険な仕事に就いている上、泥沼の権力争いが常としてある呪術界でも御三家と言われる一角を担う五条の真意を図りかねたのが半分。
 ピリピリと殺気立つ二人を諭したのは、当人である#名前#だった。

「大丈夫だよ。私のことは心配しないで。何かあったら、すぐに二人に連絡するから。ね?」
 悲しいかな、妹の決意が固いことは容易に分かった。最終的には二人が折れることで、この結婚は認められたのである。

「あれー、凛子じゃん」
「げっ」

 手を上げる五条に対し、彼女――#名前#の姉は嫌そうに顔を歪めた。
 #名前#の姉は五条と同い年であり、高専に通いはしなかったものの呪力も術式も持っている、所謂突然変異というものだった。
 呪術師は万年人不足であり喉から手が出るほど欲しい貴重な人材である。そんな彼女が高専に通わなかったのは、本人の鉄より硬い意志と一般人とは思えない呪術の腕前にあった。夜蛾とひとしきり揉めた後、依頼を受けるというカタチで高専行きを逃れた稀有な人材である。
 その物珍しさもあったのか、五条は学生時代から何かと同期である夏油や家入を連れてちょっかいをかけに行っていたのだった。彼女はそれが心底嫌で避けてきたのに、しまいには愛する妹まで奪われ、五条に対して大変辛辣な対応を徹底している。彼女にとって妹とは、つまり己の生きる意味であるがゆえに。

「かわいい義弟にする反応じゃなくない? ねっ、お義姉さん」
「お義姉さんと呼ぶな若白髪ァ……お前なんでここにいんのよ……帰れよ……」
「ほら、愛する奥さんが実家に泊まってるっていうから、気の利く旦那様としてお迎えに来たってワケ」
「要らん。このまま離婚させるから帰れ帰れ! #名前#にはもっと普通のイイ男を探す!」
「そんなの僕が許すとでも?」
「お前のその執着じみた感情は何なのよ……そんな激重クソ感情妹に向けんじゃねえよ……」
「辛辣ぅ!」
 ケラケラと笑う五条に対し、渋面を隠しもしない#名前#の姉。
 彼女はしばし沈黙し、「一つ訊くけど」と口を開いた。

「あんた、何でほまれを娶ったの」
「えー? なに、藪から棒に?」
「ずっと気になってたのよ。あんた、昔から何かとほまれのこと気に入ってたけど、まさか結婚を望むほど執着してるとは思わなんだし」
「うーん、ま、

 
 /


ALICE+