狼 ネタ
おそらくこの先書くであろう場面を一部抜粋
(悪いな、ゼロ……)
ライと接近した際に奪った銃の銃口を胸に押し付ける。このデータだけは、地獄に持っていかなければならない。自分達が警察組織からの潜入捜査管であるとバレるわけにはいかないのだ。
緊張状態に息が上がる。後悔があるとすれば、組織に飼われているあの小さな少女に、せめて一度くらい外の世界を見せてあげたかったということだろうか。
「待て、スコッチ」
追手である目の前の男――ライに、自分は味方だと言われ、スコッチは眉を顰めた。緊張は解けない。そんなスコッチに対し、ライは自分がFBIからの潜入捜査管である赤井秀一だと名乗った。自分達と同じく、この組織に噛みつこうとしている犬の一人だと。
(信じても良いのか……?)
思案していると、カンカンカン、と階段を上る音が響いた。新たな追手に収まりかけていた緊張感が戻る。最早時間はない、そう思い引き金を無理矢理引こうとした、その瞬間。
「イヤーッ! ちょっっとお邪魔しまーす!」
「グアッ!?」
メキョッ、とライの頭部にものすごい勢いで何者かの膝蹴りが決まったのである。
(以下省略)
「待ってくれ、き、君の名前は!?」
「私?」
月光に照らされて、ゴーグルで顔を隠した女はニッと笑みを浮かべた。
「通りすがりの、ただの元ライダーだよ」
こんな感じで謎の幸運値で死亡フラグを回避したもろふしさん。
この後無事逃げ切ってふるやさんや風見さんと合流。情報を流した内部の人間は特定されて御用になる
「――降谷さん」
「どうした?」
「少々、お時間を頂くことはできませんか?」
声をかけてきたのは、公安で働く降谷の部下の一人だった。ノンフレームのメガネを掛けた、これといって特徴の無いのが特徴とでも言えそうな、茫洋とした雰囲気の男だ。
「これを、見て頂けますか」
その言葉と共に渡されたのは、一枚の年季の入った写真だった。それに写されていたものを見て、降谷の目が大きく開く。バッと顔を上げると、部下である男は唇を噛み締め、目尻に涙を溜めて、必死に激情を堪えるような表情をしていた。その姿に、全てのピースが繋がった。
「……彼女は……お前の、」
「はい。――あの子は、俺の妹だった子です」
ぽたりと涙が溢れる。どういうことなのかと努めて冷静に訊ねると、男は自分の来歴を手短に話してくれた。
可愛がっていた歳の離れた妹がいきなり死んでしまったこと。遺体も見せてもらえなかったこと。妹に掛けていた多額の保険金を持って引っ越し、家族三人で過ごしてきたこと。高校の頃、心を病んでいたらしい母親が自殺したこと。遺書に妹のことが書かれており、それを見た父親も心を病み、男が大学を卒業してから間もなく眠るように死んだこと。
男に残されたのは、母親の遺書と、父親の残した、可愛い娘を助けられなかったという手記。そして、妹がどこへ売られたのか、という可能性。
「公安に入ったのは、妹を探したかったからです。正直、生きてるとは思っていませんでした。……だから、あの子を辱めた組織を潰せるのならと、粉骨砕身の思いでここまで来ました」
「……もう、思い出せなくても、あの子の中の妹が死んでしまったのだとしても、それでも俺は、あの子に幸せに生きてほしい……そのためなら、なんだってします」
「俺は、許される人間じゃないんです――俺がこうして学校を出て、一人で生きてこれたのは、あの子を売った金と、親の保険金があったからだ……」
「ずっと、変わらないんです。髪の色が変わっても、目の色が変わっても、ええ、変わりませんでした。あの、優しい笑顔は――記憶の中にある、妹と、何も変わってない……」
「おにいちゃん、どうしたの? いたいいたいの?」
「……いいや……大丈夫……お兄ちゃんは、大丈夫だよ……」
「――生きててくれて、ありがとう。……幸せになるんだよ」
「? うんっ。わたしねえ、いまね、とってもとっても、しあわせだよ!」