舞姫


「男子はいったいいつから超人万国博覧会みたいなことになってるの?」

 ドン引きされていた。

「女子はまだ普通だもん……こんなやべーことになってないもん……」

 お前らと一緒にするなと言外に訴えられる。ちょっと傷つくが、確かに彼女の言い分もわかるのだ。男子テニスと比べて、女子テニスはまだ常識の範疇というか、苛烈な戦いの中にも男にはない華やかさが表に出ていた。
 その女子テニスで全国大会の個人優勝を果たした『舞姫』が言うのだから、きっとそうなのだろう。

「でもほら、ミックスダブルスとか」
「死んでもやらない」
 食い気味で拒否された。「そこまで言わんでも……」と言いたげな視線を向けられても、彼女は頑なであった。本気で嫌がっている。

「大体なんなの? 男子テニスはどこを目指しているの? あと男子はテニス強いやつは顔もいいルールでもあるの? もう訳わからんねん、理解拒否ですわほんま」
「つ、疲れすぎて関西弁になってる」
「えっ、彼女関西出身やったん?」「いや、生まれも育ちも東京の筈なんだが……」


「――ねえ、私と楽しみましょう?」

 好戦的に目を輝かせながらもその表情は穏やかで、いつだって相手を尊重していた。試合の外でも物腰柔らかで、そのプレイスタイルも彼女の人格を余すとこなく表している。
 彼女のプレイスタイルは、例えるなら立海の幸村に近い。どんな相手にも正確に打ち返し、的確に相手の体力を削っていく。違いがあるとすれば、どんなに厳しい状況でも、どんな相手であっても笑みを崩さないところだろうか。
 不思議なことに、彼女と対戦した相手は、皆自分の持つ実力以上の力を見せ、その上で負けるのだ。それも清々しい顔で。

 コート上を舞い踊るように戦う姿から、つけられた異名が『舞姫』。絶対知られたくない。

 そも、私は高校進学と共にテニスは引退したのだ。すっきりさっぱり、縁切りである。

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