ユリ夢

「――#名前#、出ておいで」

 ユリウスの一言で彼の足元の影が揺らぐ。そこから現れたのは、一人の女だった。

「……お呼びですか、ユリウス様」

 身の丈ほどのローブを身にまとい、黒色の髪を一つに結った女。彼女の口元は三日月を描いた。


「やあ、#名前#」
「……どうしてここに?」

 思わず訝しむ声が出たのは仕方ないだろう。目の前に居る彼は、本来執務室で仕事をしているはずなのだから。
 #名前#は被っていたフードを取り、目の前に立つ男へと視線を向けた。

「ユリウス様、仕事はどうされたんです」
「いやー、一段落ついたから、ちょっと気晴らしに町をぶらりとね」
「マルクスに確かめても?」
「あ、アハハ、それはちょっと……」
「……はー……あまり、あの子を困らせないでください」
「帰ったらちゃーんとやるよ」


「ユリウス様。#名前#が加われば、連れて行ける人数を増やせるのでは?」
「うーん、それは難しいかな」
「そういやァアイツ、ここしばらく姿を見てねぇが……なんかあったのかァ?」
うん、とユリウスは頷き、
「エルフと同化して以降、#名前#はちょっと力を持て余し気味でね……疲れが出たのか体調を崩して、しばらく休ませることにしたんだ」
「#名前#はいざという時のために体調を整えるのに専念してもらうつもりです」
「……珍しいな。あの者が体調を崩すなど」
「確かにそうだな。元々力自体は強いと知っていたが……エルフ状態の時のマナがそれほど強かったということか」
「あの影魔法、これ以上強くなんのは楽しみだなァ、裂きがいがあるぜ」
「これだから元平民は……」
「アァ!? やんのかテメェ!」
「こらこら。まあ、#名前#のことは私やマルクスくんに任せておいて。私達なら部屋に入っても怒られないからね」


「……#名前#」
「ユリウスさま……もうしわけ、ありません……」
「いや、大丈夫だよ。今は体を調えることに集中しなさい」
「はい……」

青白い顔で眠りにつく#名前#の頬をひと撫でし、ユリウスは複雑な面持ちで立ち上がる。
――負担を掛けすぎたかな。
腹部にそっと手を当て、ユリウスは小さな声で呟く。

「大丈夫だよ。私が必ず守る」

君も――お腹の子も。


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