一虎が大好きで大好きだった女の子
×学アリクロスオーバー。
夢主
一虎の年下のお友達。だいたい二つか三つ年下。ぴょこぴょこ二つ結びのかわいい普通の女の子。
グレる前から一虎に懐いていて、会えるのは小学校の中くらいだけだったけどいっつもにこにこ笑顔で「かずとらくん」とヒヨコのようについて回ってた。
どんな一虎くんでも大好きなので、パンチパーマをかけた姿を見ても「いめちぇんだねえ」と微笑み、周囲がどれだけ離れていってもずっと隣に居た。誰も祝ってくれなかった誕生日を唯一覚えていて祝ってくれた女の子。
一虎の不安定な情緒を安定させてくれる上、自己肯定感を爆上げしてくれる一虎にとっても「好きだなぁ」と思ってるかわいい年下の女の子。
あまり自分の家庭のことを話す子ではなかったけど、自分と同じ母子家庭で、居場所が無いのは分かっていたので共依存に近いような認識(を一虎はしていた)。
実際はそういうわけでもなく。夢主は自分が親にとって不要なものだって分かっていたのでどこかへ早く行けるようになりたいと漠然と思っていた。精神的に既に夢主のほうが一虎よりもずっと大人で、成熟していて、だから一虎の目の奥の色んな感情を何となく察知していた。寂しがりやの幼い男の子が見えていた。選択を迫るのはかわいそうだったけど、でもそれをしなきゃどこにも行けなくなるとわかっていた。
ずるいとは分かっていたけど、その上で側に居た。
母親にとって自分は不要なものだとわかっていたから本当はどこかへ行かなきゃ行けなかったけど、それでも。ただ一虎くんが好きだったから。
ーーだから、これでよかった。
真夏の夜のこと。
友人と共にバイク屋に忍び込んで人を殴ってしまったーーそれも、プレゼントしたいと思っていた相手の兄の頭部を殴ってしまった一虎の前に夢主は現れた。
「だめだよ、かずとらくん」そう言った顔はいつもと変わらないーー否、悲しげに微笑んだ小さな女の子は、血を流し倒れる男性に手を翳した。淡い光。数秒後、殺してしまったと思っていたはずの相手の呻き声が聞こえた。ーー生きている。まだ、息をしている。
夢主は言った。「頭だから、ちゃんと病院で診てもらわないと」血で濡れた手を見て、彼女はくるりと後ろを振り返る。「お願い、できますか」
いつからいたのか。そこには一人の女性が立っていた。「ええ、もちろん」と頷いた彼女によって、そこからはまるで流れるように。
「このまま行くことになる」と伝えられた夢主は、呆然とする一虎の手を引き、そっと小さな体で自分より大きな、でもまだ幼い子供の体を抱きしめる。
「かずとらくん、選ぶのはね、ゼロか百じゃなくてもいいの。中途半端だってなんだって、敵か味方かきっちり分ける必要なんてないの。それを忘れないでね」
「ずっとずっと大好きだよ。ーーもう、わたしは一緒に居てあげられないから……『次』は無い。間違えちゃだめだよ、かずとらくん。……ずっとずっと、だいすき……」
絞り出すような声でそう伝え、血のついた手で一虎の頭を優しく撫でる夢主。警察に連れて行かれ、言葉を返すこともできず、離別。
少年院に居る間、「特例」だと拙い文字で送られてきた手紙を見て、彼は知る。
夢主が「アリス」という不思議な力を持つ子供だったこと。
一虎と一緒にいたくて、前々から学園の教師に接触されていたけどずっとはぐらかしていたこと。ーー学園に入れば国からお金がもらえるので、母親はきっと自分を売り渡すだろうということ。
幸いにも、やって来た先生は理解のある、自分と同じアリスを持つ人だった。危うい雰囲気の大切な人を置いて行きたくなくて、なんとか話を合わせてもらって、そして。
運命の夜を迎えた。
少年院を出ても、彼女はもういない。
絞り出すようなあの「大好き」の声が頭の中で何度も繰り返されて、何度も夢を見て。
衝動的に学園に送った手紙に返事が来たことが、どうしようもなく嬉しくて悲しかった。
大人になるまで、少女はあの檻の外へ出ることはできない。ーーなら、いつか迎えに行こう。もうあの子の手を離さないように、それができる大人になろう。
空っぽだった男の子の心の中で、少女はかけがえのない存在になった。
いつか、いつか、いつかーー手が届く未来を夢見て。
そして学園を卒業した女の子は、檻から出た「外」の世界で、懐かしい面影を持つ青年をーー
みたいな感じのオムニバス中編が見たい。
各視点で書かれていて、エピローグは女の子の卒業後の話で締めくくるやつがいい。
夢主はたぶんめちゃめちゃ頑張って一年くらい前倒しで学園を卒業する。能力は「治癒」だけど、実は「自分の『命の欠片(寿命)』を相手に渡す」ことができる。これが初校長にバレてたらヤバかった。瀕死だった真一郎くんを助けるときにその事実に初めて気づく。
アリスのタイプは「細く長く」と「無制限に使える代わりに寿命が削られる」タイプの混合型と思われる。「基本的に細く長くだが場合によっては寿命を削ることもある」感じ?
一虎の方は夢主セラピーで原作よりマイルドだけどちゃんと(?)歪んだ部分もある。女癖悪かった事実を再会後必死に隠そうとしてるけど全部バレてるのに気づいていない。