じけんぼ
祝 宝寿(いわい ほうじゅ)
極東の島国からやって来た少女。一族から出された『ロード・エルメロイU世の護衛役』というバイトで遥々英国まで訪れる。その後、彼と彼の内弟子である少女と共に剥離城へと向かう。
一般人でありながら人間離れした瞬発力と身体能力を持つが、普段は人並みに抑えている。
実は「未来視」の能力を持ち、今回英国に来たのもその未来を回避させるため。
元々一族の重鎮の一人がU世――ウェイバーと旧知の仲で、彼女からの頼みで引き受けた。
第四次聖杯戦争当時は冬木市に住んでおり、大災害にて両親を喪い、また最愛の『兄』を失っている。そのため基本魔術師には辛辣で悪意しか無いのだが、それ以上に本人の善性でこの依頼を引き受けたという経緯がある。
ウェイバーとも過去に面識があったのも大きい。
未来視の能力は、映像というよりも小説を読む感覚に似ており、本人曰く文章が頭の中に流れ込むようなものらしい。それによると男性が死ぬのは分かったが、それがウェイバーかどうかは分からなかったため今日に至る。
そして予知は的中――重傷のハイネ・イスタリを助け、自身の能力で依代を複製、『魔術刻印まで再現した』偽造死体を作り上げ、彼を城から離れたところで看護する。
事件終盤にてハイネをお姫様抱っこの形で現場まで連れて現れ、自身の正体を告げる。
その後、ハイネに「もし覚悟があるのなら」とある言葉を残し、日本へと帰った。
その後、日本に妹を連れて亡命してきた彼の魔術刻印を取り除き空輸で送り出したり色々と生活のサポートをして行くうちに色々起きるのだが――それはまた別の話。
一族は代々続く神秘を内包しながら神秘を破壊し人と共にヒトとして生きることを決めた旧家の血筋。
大聖杯の異常に勘づいており、第四次聖杯戦争で終止符を打つべく奔走したが魔術師殺しの暴走など様々な要因で大災害が起き、一族の方からも魔術師のせいで死者が出た。祝の家族もそれが原因で死んでいる。
そのため、魔術師殺しには呪っても呪いきれないほどの怒りと憎しみを持ち合わせており、万が一衛宮士郎と出会うことがあれば惨劇が起こるのは間違いない。
『兄』を目の前で殺されたが、後に兄だったものは能力が発動し別のなにかとなって蘇る。幼くなったが兄であることに変わりはなく、宝寿は『弟』として愛する兄の生まれ変わりをひとりで守り育てている。仕事を引き受けたのも報酬が良かったため。

そもそも御三家の所有する土地は彼女の一族から奪ったものであるという物証が揃いつつあり、これは後に大聖杯解体に向けて動き出す際、存分に活躍すると思われる。
遠坂も間桐も等しく盗人の末裔としか思ってないので辛辣。
第四次の際、間桐家はこの一族の手により実質滅びており、現在は生き延びた長男が当主として形だけ残っている。慎二もやや捻くれてはいるが妹思いで、一族から与えられた霊術にて素養を発揮している。
『霊術』は魔術とは異なるもので、魔術回路を必要としない。むしろ邪魔になるので、魔術回路を絶やす者も少なくない。
かつてウェイバーは一族の少女――後の重鎮の一人である――と接触、霊術の存在を知ると共に聖杯戦争にて生き残る。その際少女と親交を深め、現在に至る。

重鎮・吊蒼生(つるしあお)
かつてウェイバーと接触し捕獲した一族の少女。稀有な魂を持つ保持者のひとりであり、常に死を望む体質。衝動的に首を吊ろうとし、ウェイバーもその手法で捕らえた。
目が死んでいるがそれなりに人生を楽しむライトなオタク。自殺衝動は保持者であるが故の弊害に近い。
現在は二十代半ばほどで一族の重鎮のひとり。片脚が不自由な状態で、車椅子に乗せられていることが多い。嫋やかな和風美女となったが中身は変わらない。
あだ名は「首吊り姉さん」
かつての夫の影響で首吊りやら策を弄するのに強い。姉がかつて時計塔に留学していた。

ハイネ・イスタリ
一度は陰惨な側面の強い魔術を厭い出奔したが妹のために出戻ってきた高潔な青年。
瀕死のところを祝に救われ、彼女の術で死体を偽装、献身的な介抱で生き延びる。
その際「霊術」の存在を知り、彼女から「もし覚悟があるのならば」とある提案を受ける。
その後、妹とともに一時実家へと戻り、隙を見て日本へと訪れる。祝の手により摘出した魔術刻印と魔術礼装を本家へと空輸し、その後は妹と日本で一般人として暮らすことを決意する。
「騎士」と称されるほどの高潔さや聖堂教会に所属していたという過去もあり、一族からは祝が面倒を見るのならという条件で保護されることに。魔術に関わらない一般人の暮らしに思うところはある様子だが、魔術刻印を取り出せたことで延びた寿命と幼い妹を安全なところで見守れるという魔術師だった頃には見れなかった未来を与えてくれた少女に感謝している。
後に日本に帰化し名字を変えて暮らすかもしれない。
魔術回路を封じることで霊術を使うための導線を開花させ、擬似的に魔術と同じようなことをやってのける程度には才能マンである。

花心(かしん)
宝寿の親戚の少女。純日本人なのだが先祖返りなのかどこか異国を思わせる風貌。父親似の姉と母親似の兄を持つ。
父方の先祖が英国にルーツを持つ血筋で、現在は父親以外の親類はいない。その関係か魔術の素養があるようだが、本人は霊術を極めるべく魔術回路を全て潰している。のちに父方に先祖代々受け継がれたある「物」によって、サー・ケイを喚び出し一波乱起きることになる。
実はかつてケイと関係を持ったとある女が身ごもり産み落とした子の末裔で、受け継がれていたものは聖遺物に近い。ケイ卿自身も「あー……アイツかな」と一人心当たりがある様子。

時計塔からのコンタクトによりある意味人質のような形で一族の数人が時計塔に留学をしている。ただ、留学したのは一族の中でも厄介な面々なため、万が一があれば時計塔は半壊する可能性がある。
うち数名は現代魔術科に在籍しており、ウェイバーの指導を受けながら一族と彼とのメッセンジャー役をになっている。




「嗚呼、良かった。間に合ったみたい」
「……は」
 軽やかな足取りで現れたのは宝寿である。衣服が若干汚れ、目元には薄らと隈ができているが、その表情は変わらず朗らかなものだ。
 しかし、その場の全員に衝撃を与えたのはそこではない。
 少女が軽々と抱き抱えて連れてきた男性――死んで弔ったはずの、ハイネ・イスタリの姿がそこにあったのだ。

「な、なんでや! 確かにハイネはんはワイが始末した筈やのに……魔術刻印やって……!」
「当たり前のことを訊くんじゃないわよ。そんなの私が『魔術以外の力を使ったからに決まっているじゃない』」
 あっさりと、事も無げに少女が肩をすくめる。それに声を荒らげたのはルヴィアだ。
「ありえませんわ!」
「ありえちゃうから招聘されちゃったのよねえ」

「フワッフワの思考回路だなポンコツ野郎。そのうちふわふわとシュワシュワパチパチ口の中でビックバンを起こすわたパチみたいに脳味噌溶けんじゃねえのか」
「わ、わたパチ?」
 ぱちぱちと目を瞬かせる清玄に宝寿は不快そうに顔を歪める。
「アアン? クソったれ! 日本の愛すべき伝統文化DAGASHIも分からないなんて……山伏スタイルで如何にもコッテコテなクールジャパン気取りやがって魔術なんぞ嗜むファッキンエセ天狗が……日本人を名乗るんじゃねえ、ケツの穴を三つくらいに増やしてやろうか?」
「……レディ。さすがにあまり言葉がよろしくないですよ」
 と、宝寿の腕に抱かれるハイネがやんわりと諭す。
 命の恩人とはいえ、度が過ぎたスラング混じりの英語を純朴で愛嬌のある乙女が話す姿は見ていられなかったようだ。
 ハイネを抱えている状態なため身動きは取れないが、今にも喉笛を食いちぎらんと言わんばかりにギラギラと穏やかだった瞳が怒りに染まっている。
 U世は疲れ混じりに片手で顔を覆いながら、その場に居る全員に聞こえるように声を上げた。
「もともと、彼女は私の古い知り合いが遣わしてくれた少女でね。――彼女は未来視の能力を持つ」
「未来視……!」
 その場がにわかにざわめく。冷静さを保っているのは、あらかじめ事情を知っていたグレイや本人から説明を受けたのであろうハイネくらいのものだ。
 当人である宝寿は面倒そうな顔を隠しもせず、ハイネを抱きかかえたまま現場を見渡している。
「とはいえ、彼女の未来視は魔眼などの類ではなく――魔術とも異なるものだ。下手に踏み込めば彼女らの『一族』に抹殺されかねない」
 と、U世は肩をすくめる。それに反応したのは宝寿だ。
「別に抹殺はしませんわよ。クソったれ魔術師共に散々人の母国の霊脈踏み荒らされて汚染されて好き勝手された怒りで手加減しないだけです」
 生きたまま空輸で返してるんだからセーフでしょう? と、あっさり宣う少女の目は澄んでいる。
 帰国ではなく空輸でという部分に手出しした魔術師の末路が目に見えるようだった。
「……と、まあ、ご覧の通りでね。彼女らの一族は基本国内から出ることは無いのだが、彼女が私に関わる未来を視た結果、人が死ぬと分かり、彼女が遣わされた」
「……ふむ。じゃがのうエルメロイU世。それだけではないのだろう? 魔術師をそこまで忌み嫌う娘が、何故魔術師のお主を守るためにここまでやって来た?」
「ンなこと決まってる。ベルくんを守るためよ」
 答えたのは宝寿だ。少女はハッキリとした口調で言う。
「この人を助けたのは結果論。私の未来視は誰が死ぬのかまでは分からなかった。故に、万が一ベルくんが死んでしまわぬように頼まれて来たということ。……ベルくんは魔術師ですけど、本人自身の能力は私でも圧倒できますし? そんなの、他の魔術師に手出しされたら死んでしまうもの」
「……レディ、もう少しオブラートに包んでもらうことは可能かね?」
「むむむ。……よし、わかりましてよ」
 つまりこういう事だ、と彼女は言う。
「うちの一族の重鎮がベルくんと昔個人的に友達になって今や唯一の友達だから死なせないように来ましたの! 蒼生さんベルくん居なくなったら死んじゃうので」
「」

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