監督生:カップル
×skmt
一行でわかるあらすじ)セバちゃんとその彼女がなぜか闇の鏡に誘拐された。
監督生:JK3、来春から社会人。今年九歳になる弟がおり、ほぼほぼ親代わりに育ててた人。家事は得意。大好きな彼氏とデートしてたのに気づいたら彼氏と棺桶に入れられてた。
セバ:たぶん19とか?の現役殺し屋兼学生。生意気盛りの十四歳の弟がいる。かわいい彼女とデートしてたのに気づいたら彼女と棺桶に入れられてた。一応用務員だが、普通に神出鬼没なのと、工学系に詳しいこともあってイグニハイドほぼ専属雇用状態になっている。(異世界知識と嫁の飯を餌に荒稼ぎしている)

 式典服はふたりの上にそっと掛けられていた。わけがわからない。目を覚ましたらなぜか棺桶に居てスペキャ顔。例によってグリムに襲われたため、ふたり揃って謎の建物内を逃げることに。
 その後、学園長と遭遇。見慣れない男女の姿に「エ??????」ってなったものの、とりあえず選別につれていく。そして闇の鏡に例のことを言われ、ここぞとばかりにふたりから「ここどこやねんオオン?」とキレられてえらいことになる。
 学園内では自衛のためにセバは名字だけ、夢主は名字を捩って「ユウ」と名乗る。
監督生業は夢主が、セバは(武器製造科ってこともあって工学系に強そう)独自に調べてイグハイに凸する。
 グリムは監督生ママによって原作より良い子に。そして胃を掴まれる。セバはたぶんよくわかんね〜けど子分の番ならオレ様の子分なんだゾ!くらいにしか考えてない
 セバ的には将来的に同棲するつもりだったのでまあいいか〜ってなるけどそれはそれとして明らかに廃墟なのと経済DVは普通にハ??? ってなってるので、イグハイと親睦度上げて普通に学園長を何回か脅す。



『っていうかもしやあの女の子って偶然同じ棺桶に入れられてただけのそういうこと?』
「いや? 俺の彼女」
『ハ〜〜リア充自慢乙! ハイ解散解散』
「まあ聞けって……異世界の技術とか、興味ねえ?」
『異世界産技術〜? まあ勤勉を司るイグニハイド寮の寮長として無きにしも非ずではあるがそも陽キャとは関わりたくないんすわ』

「俺の彼女――あ〜、ユウって名乗った女の子だけど、弟いんだよな」
『フゥン、それが?』
「弟、まだ九歳なんだよ。それもほぼ育児放棄の親に押し付けられて当時九歳だったアイツがずっと育ててきたんだけど」
 ピタ、とタブレットが静止する。
『エッッ……い、いきなり異世界家庭事情(闇)ぶつけんのやめてもろて』
「その、オルト? 見てると、弟思い出してず〜っと心痛めてんだわ」

「ちなみに俺のジャケット、その異世界技術でこうなるぜ」
 パチン、とスイッチを入れると同時に、セバの体が風景に溶け込むように消えていく。それはさながら魔法のようで、タブレット越しにぎょっとした声が響いた。
『ハアア!? え、ちょ、どっからどう見てもそれ魔力もなんも無い……なのになんでそんなことできるわけ!? 魔導工学ならまだしも、え、なにそれ誰作ったんでござるかその男のロマンもりもり透明化スーツ!!』
「俺の自作」
『ようこそイグニハイド寮へ、彼女殿ともども永世名誉イグニハイド寮生に登録しますわヨロ』

「あの、差し入れにごはん用意したので、もしよかったら」
 食べませんか? と微笑む監督生。
「にゃっはー! おめーら運が良いんだぞ! ユウの飯はうめーからな、一度食べたら病みつきになっちまうんだゾ!」
 監督生の隣、小躍りしながらグリムがそう宣った。
 室内に漂う嗅ぎなれない――しかし食欲を唆る香りに、知らず知らずのうちにイグニハイド寮生たちは唾を飲んでいた。
「材料費はシュラウドさんから頂いたので」と、監督生は微笑んで。
「よかったら、異世界の料理を召し上がってくださいな」
 男たちは、その言葉に陥落したのだった。

「う、うまぁ……!」
「んあああシンプルながらしかし奥の深いお味……この飾り気のない茶色が美味さの証明なんだよなぁ〜!」
「僕、今ほどイグニハイド寮で良かったと思ったことないでしゅ……」
「寮長最高〜〜!!」

 監督生が用意したのは男子高校生なら誰しも好みそうな、いわゆる茶色いおかずたちだ。
 あまじょっぱい味付けと、炊きたてのご飯の相性は格別である。ましてイグニハイド寮は気質的に個人で動くことが多く、こういった手作りのご飯よりもインスタントやレーションなど、効率的な食事をとる生徒の方が多い。
 肉の下に敷かれた、肉汁でしみしみのミックスキャベツ、これでもかと乗せられた肉に、その上からマヨネーズが細めの格子状に掛けられ、彩りのネギはお好みで。
 この実家の母親が作ってくれたかのような、一見大雑把だが味も何もかも自分好みの丼に、育ち盛りの男子高校生の胃はもう逆らうことは出来ないだろう。

「あ、セバさんのはこれです。グリムとセバさんのは別にしておいたので」
「お〜、サンキュ」
 見慣れた包みを受け取り、セバはさっさと縛られた結び目を解いていく。
 グリムは驚くべきスピードで、器用にスプーンを駆使しつつモリモリ飯を食べていた。
 監督生は嬉しそうに目を眇ませて、談話室のキッチンを借りて用意したスープを器に注いでいく。

「欲しい方はいつでもいれますから、言ってくださいね」
 その言葉に、珍しく談話室に集まった青少年たちは我先にと手を挙げる。
 清楚なお姉ちゃん系女子(異世界から誘拐された、健気でいじらしくもいざという時には必死に立ち向かう姉力(ぢから)の持ち主)、そして家庭的なその姿に、年頃の青少年が陥落しないわけがなかったのである。



「あ……か、監督生氏は永世名誉イグニハイド寮生ですしおすし」
「おかげさまで、オンボロ寮のインターネット回線ができたの。本当にお世話になってるんだよ」
 ありがとうねえ、また差し入れ持っていくね、とニコニコ微笑む監督生(おねえちゃんのすがた)に、イグニハイド所属のクラスメイトたちは、顔を赤くしつつヘドバンよろしく首を振る。
 監督生は一定の社交性はあるものの、どちらかといえば日本人らしく職人気質、あるいはオタクの精神を宿しているタイプのおねえさんだった。
 まして幼い弟をひとり育てていたことで、一定水準以上の育児スキルを兼ね備えている。
 有り体に言うと、監督生にとって基本的にナイトレイヴンカレッジの男たちはほぼ全員『イヤイヤ期が長引いているお子ちゃまたち』だった。
 ぶっちゃけ、監督生業務はほぼほぼ育児に近い。自尊心がエベレスト並にある男の子たち(青少年のすがた)をあの手この手で言いくるめ、なるべく穏和な解決策に導く保育士のようなものである。これをカウンセリング室で聞いたカウンセラーと担任教諭プラスアルファは、手で目元を押え無言で天を仰いだ。言うまでもなく、生活費がその後上乗せされたという。閑話休題。

「光学迷彩はロマンですよねえ」
『エッなんなの、監督生氏も話分かる系?』
「いや〜? そいつ普通に文系。ただ弟がこっち系に興味示してるから、事前知識が欲しいんだと」
『ハ〜〜突然の姉要素ぶち込みは勘弁ですぞ、拙者の中にあるお兄ちゃん属性が共鳴しちゃう』
 視線の先では、見事姉力に陥落した寮生たちがここぞとばかりに自分の専攻する分野の初心者向け教本を布教している。
 監督生はひとつひとつに丁寧に相づちを打ちながら、聞いたことのある分野や、弟が興味を示しそうな分野の本を手に取っていた。
「パソコン……いいですね、BTOパソコンっていうんですかね、自分で組みたてたりとかするっていう……」
「へぇ、監督生の世界にもそういう文化あんだな……文明レベル的に、話聞く限り魔法があるかないかくらいの違いか……?」
「そうですね……秋葉原、という街があるんですけど、そこはオタク御用達、サブカル文化の中心地として有名ですよ。こういう、パソコンのパーツが売ってる店とか、ジャンク店? みたいなのもあるんだとか」
「なにそれ最高じゃん」
「寮長! 某は異世界に移住しますはよ異世界転移装置発明してクレメンス!」
『う、うるせ〜っ! てかそんな天国あんの!? 裏山死刑すわ』
「あ〜、まあ、いろいろあるぜ。つっても、最初に目的地決めとかねえとごちゃごちゃしすぎて迷うけどな、あそこは」
『カーッ、そのグチャクチャ感がオタクっぽくていいんでしょやっぱ行きたいっすわ異世界……アキハバラ……あっちにしか無い異世界パーツとか手に入れたらオルトをよりバージョンアップさせられるかもしれないし……』



『セバ氏なら今ウチの実験場で実験中っすわ』
「あら、随分と仲が良いみたいじゃない?」
『ヒッ……い、いや? まあ? どこぞの頼りにならない学園長が帰還方法探してくれるのより、いっそ自分たちで作った方が早いとなるのは工学系の自明の理というか? セバ氏が天才肌なのは見てればわかりますしおすし、ならいっそイグニハイド寮で協力して異世界への通路作るのもアリでは? みたいな?? しかしそれはそれとして学園長はさっさと帰還方法を探すべきだし中間報告すらろくざましてないとか何? それでも名門校の学園長な訳? 自覚足りなさすぎワロタ』
「ヒンッッッ」
 正論の嵐にグサグサ刺され、胸を抑えるクロウリー。しかし全くもって正論であるため、彼を擁護しよう――などという生徒はここにはいない。
 異世界から誘拐された、男女で棺桶から現れた生徒――それも魔力を持たず、既にハイスクールを卒業する目前だった身の上や、特に監督生と呼ばれる少女に、年の離れた、親代わりとなって育てている弟がいることを生徒も教師もほぼ知っている。少女が弟のため、どれだけ尽くしていたかを、深く愛しているのか知っている。母の愛に近いそれに、生徒もちょくちょく異世界について調べ始める始末である。
 だってあの子本当にいい子だし、いざとなったらフライパンで体格差のある青少年たちを叩きのめすくらいには胆力もある。
 セバという彼氏一筋なのも(学園内唯一の女子の恋人であるセバについては普通にむかつくが)好感度が高い。ワンダーランドの住人であるため、そういう甘酸っぱい話には敏感な男子高校生たちだった。
 セバに至っては魔法が使えないはずなのにまるで魔法を使ったかのように姿を消したり、単純にフィジカルが強く伸された生徒も少なくない。殺し屋なんだからそら簡単には負けないわな――と、話を聞いた監督生は苦笑いしながら、年上の恋人を窘めた。


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