「スレイ、そっちはどうだい?」
「うーん……いや、特に何もなさそうだ」
自分の反対側で調査をしていた幼なじみの問いかけに、首を振ってこちらにも収穫がないことを伝える。その返答に、彼もまた「何も掴めなかったよ、引き分けだな」と肩をすくめた。
「初めて来た場所だったし、新しい発見があると思ったんだけどな」
「そうだね……見たところ、遺跡の様式は変わってないし同じ時代のものだとは思う」
「だよな。……ん?」
考察を聞いて同意しつつもう一度周りを見渡していると、壁の一部に違和感を感じて目を止めた。
「見てよミクリオ!知らない文字だ!」
「なんだって?!」
近づいて見ると、明らかにオレの知る文字とは全く異なる文字の羅列があった。規則性もなく、丸みを帯びていたり複雑な線だったりで暗号なのかすら想像できない。新発見だ!と心が踊った。
「思わぬ収穫だったね。……また明日にしてそろそろ戻ろう、憑魔も増えてくるだろうし」
「そうだな。ん〜明日まで待ちきれない!」
せめてメモだけでもしたかったなぁ。そう思いながらミクリオの後を追おうとした。
ガラッ…
「っ、う、わ……?!」
「スレイ!!」
脆くなっていたのか踏み出した先の床が沈み、崩落した。遺跡探検のあるあるだけど、気持ちが高揚していたからか反応が遅れて地面をつかみ損ねる。気付いたミクリオが引き返してオレの腕を掴もうと手を伸ばし、オレも手を伸ばすが虚空を掴んだだけだった。
遠くでミクリオがオレを呼ぶ声が聞こえた。
下を見れば相当高い穴のようで、さすがに死を覚悟した。しかし、いつまで経っても衝撃はこず、代わりに妙な眠気が襲ってくる。抗えなくてオレはそのまま意識を飛ばした。