おこもりステイ



『なぁ、二日連続オフなんやけど、どっか泊まりに行こか?』

デビューしてから連続で休みなんて、珍しい。ドラマの撮影が終わったからだろうか。
大吾の発案に一も二もなく頷いた。

どこに行こうか、あんまり遠くだと運転が大変かな、でもせっかくだから遠くに行きたい気もする。かといって、もう若い子にはだいぶ顔が知られてしまっただろうから、遊園地、ユニバとか絶対に無理。全国マップを眺めながら、どうしようかなぁと悩んで、結局大吾になげた。

「大吾はどこ行きたい?ほら、ツアーでさ、いろいろ行くじゃん、どっかないの」
『そうなー、ここで泊まったホテル、結構よかったんよ。ホテルでのんびりするってのはどう?』
「いいねそれ、楽しいかも」

調べてみると、最近はおこもりステイとかで早い時間からチェックインできるプランなんかも結構あって、その中の一つを予約することにした。可愛いルームウェアに下着を新調して、お気に入りのワンピースを鞄に詰めて、あとは直前に大吾の仕事が入らないように祈るだけ。

当日は雨も降らず仕事も入らずの旅行日和で、大吾の運転でホテルに着くと開放感にひとつ伸びをした。

「綺麗なところだねえ」
『せやろ?だからそのうち名前と来たいなーって思っててん』
「……ばか」
『ばかってなんやねん』

結構広い部屋で、バルコニーまでついていて日当たりもいい。お風呂も広くて、のんびりできそうだな、とふかふかのベッドに腰掛けた。当たり前のように隣に座ってくる大吾。

そのまま口付けられば、押し倒されるのは当然の流れで、のんびりするんじゃないの、などと文句は言ったものの大吾がそんなことを聞いているわけもなく、拒む理由もない私は大人しくシーツの海に溺れることにした。



何度もイかされて、欲を吐き出されて落ち着いたろには汗だくだった。肩で息を繰り返して、荒っぽい口づけを受ける。

『もう一回、せえへん、』
「まっ、て、その前に、シャワー浴びたい」
『また汚れるやん?』
「でも、べとべとだし、」
『えー……、……あ、ええで、入ってき?』

シャワーを拒む大吾はいつも通り……、だったけれど、今日はやけにあっさりと解放された。まるで何かを企むように。

倦怠感の残る身体で、汗とそのあと、でベトベトになった体を洗い流す。今日の激しさはいつも以上で、すでにちょっと腰が痛い。どのみちおこもりは必須だったか、明日どうなるかな、と思っているところに……、

『名前〜』
「だっ、大吾、何で入ってくるの、」
『俺もシャワー浴びたくなったし、やったら一緒のほうがええやん?』
「よくない」
『え〜?』

追い出される気なんてさらさらない大吾は、後ろから抱きついてくる。その手は当たり前のように前の方をまさぐってきて、さっきまで散々イカされた体はすぐに反応して、
小さく腰が揺れた。

『もうそんななってるん?さっきまであんなにしてたんにな』
「だって、それは、大吾が、ああっ、」

身体を大吾の正面に向けさせられる。
すでに準備万端だった彼は手早く膜を被せると、私を壁際に押しつけ、片脚を持ち上げるとすぐに挿入してきた。無理やりみたいな格好なのに、直ぐに快楽を引き出されるのがちょっと悔しい。

『名前、ちょっと強引なの、好きよな』
「え、そんなこ、とな、あっ、」
『さっきより今のが締まってんで?』
「それっ、は、たいせい、が、やあっ」

体勢がというのは実際そうで、普段よりもちょっと奥にあたること、あとは音が響いて、いつもよりも脳を揺さぶられるかのような感覚があること。でもそれ以上に、少し乱暴なまでにされるのも、大吾なら悪くないな、と思ったりして……

口づけをねだって、噛みつかれそうになるくらいに返ってくるのも、興奮材料にしかならなかった。

「っ、ぁ、だめ、いっちゃ、」
『もう? っ、ええで、ちゃんと顔見せてな?』
「やら、みない、で、あっ、やあっ…!」

きゅっと中を締め付けて、彼へもたれ掛かるようにして脱力した。まだびくびくと中が動いてるのがわかるくらい、快楽が止まらない。

お風呂でまでしてしまって、また洗い流さなきゃ、とぼんやり思っているのに、大吾はまだ抜いてくれない。

「ね、大吾、シャワーするから」
『俺、まだイッてへんのよなー。名前、もうちょっと付き合ってな?』
「えっ、まっ、て、ちょっと、大吾っ…!」

まだ硬いままだった大吾のそれが、ぐっと奥までくる感覚。そのあとふわりと宙に浮いて、反射で大吾にしがみつく。
膝を広げて抱えられた体勢、というと、

『ちゃーんと俺に捕まっててな、名前?』

駅弁、というやつだ、多分。
そういえば新幹線で駅弁を食べただのなんだの、言ってた気がする。それで思いついたのか。そんなことを考える余裕もすぐに無くなって、不安定な体勢に、奥まで入る感覚にと頭がいっぱいになった。

「だ、いご、これ、こわい、」
『俺にくっついとき、ほら、体重俺に全部預けて、』
「だって重いって、」
『俺の職業なんやと思ってん?ちゃーんと鍛えてんで?』

たしかに、出会った頃よりも随分と鍛え上げられた気がする、けれども、発揮する場所は多分ここじゃない。それでも重心を大吾に預ければ幾分と楽になって、それと同時にさらに深く揺さぶられる感覚に、身体の奥がぞわぞわとする。

「なん、か、へんなかんじ、するっ…、」
『んー?イきそうなんと、ちゃうん?』
「ぁっ、んっ!なんか、おく、変…っ、でてきそ、な感じ、」

いいところ、を突かれる回数が格段に多い。
激しく揺さぶられる感じとは違って、重点をずっと攻められているような、気持ちいいが止まらなくて頭の中が真っ白になりそうな、

『はは、名前、それ、ずっと感じとって、な?』
「えっ、あっ、無理、まっ、あっ、も、やめっ、ああっ…!」

漏らしたのか、と思った。けれど、心当たりは一切なくて、

『やーっと吹いたな?』

にやっと笑う大吾に、そういうことか、と顔が熱くなった。
半ば介護のように身体を拭いてもらって、バスローブに身を包まれ、ベッドまで運ばれる。せっかく詰めた可愛いルームウェアの出番は来るのか、乞うご期待、なかったらちょっと悲しい。その反面、大吾は疲れてるだろうに、上機嫌で私の横に寝転んだ、タオルだけ巻いてるのは気遣いか。

「……ちょっとやりすぎだと思う」
『ごめんてー、でもたまにはええやん?潮吹いてるのも見られたし』
「っ、いわないでって、なんか、はずかしいし」
『えーなんで?俺は嬉しかったけどな』

ぎゅうと抱きしめる手も、口づけも優しくて、さっきのちょっと強引な大吾もいいけれど、こっちも好きだなと思う。
こうやってずぶずぶと溺れていくんだろう。
差し出された腕に頭を乗っける。その温もりがあったかくて、甘えるように目を閉じた。






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