お腹より先に



朝起きると、隣に彼女がいなかった。
と言っても、温もりはまだ残っているし、キッチンから音がするから出ていったわけじゃない。きっと朝ごはんを用意してくれてるんだろうことはわかる。

けれど、朝いちゃいちゃ……って、そういうことやないけど、……それもやけど、朝ならではのやりとりみたいなのをしたかったわけで、ちょっとむくれたれたふりをしてキッチンへ向かう。

「おはよう和也」
『……おはよ』
「昨日買ったパンでいいよね、あとミネストローネと、」
『うん、』
「すごいねえ和也の包丁、すごくよく切れる」
『せやろ?それな……あ、うん』
「どしたの和地、調子悪い?」

しまった、最後普通に会話しようとした。べつにいいんだけど、ちょっと拗ねたい気分なだけで。

手を拭いて近寄ってくる彼女。熱はないよね、なんておでこに手を当ててくる。さっきまで水を触っていた名前の手がひんやり気持ちいい。

「んーっと、顔も赤かったりしないし……、もうちょっと寝てたかった?うるさかったかな、」
『名前』

ぎゅう、と腰に手を回して抱きつく。どうしたの、と聞いてくる彼女から、ミネストローネの匂い。あ、なんやお腹すいてきた。
色んな意味で。

『起きたら、おらんかった』
「え?ああ、起きちゃったから、それなら朝ご飯作っとこうかなって思って」
『んー、いろいろしたかったんにー』
「なあに、色々って」

くすくす笑う彼女に、ぷくりと膨れてみせる。それでもつんつんと頬を指先でつついてくるのに、つい笑ってしまう。

「先起きちゃってごめんねー?」
『むーん』
「ねー?拗ねてないでさぁー」
『つーん』
「結構美味しく出来たと思うんだけどな、スープ」
『……、それは後で食べる』
「あとで?」

ちょっと釣られそうになったけれど、うん。スープはちゃんと後で食うし。見上げてくる彼女を見つめて、ちゅう、と唇に吸い付く。

「ん、和也?」
『先に名前食べたいなぁ思て』
「まだ朝なのに?」
『昨日、足りひんかった』

ちゅ、ちゅ、と音を立てて口付けて、舌を名前の口にねじ込んでいく。明るい時間に、こんなことをしている背徳感。戸惑っていた彼女も、緩やかに舌を絡めてきた。

「ん、う、和也ぁ、」

とろんとした目の彼女。Tシャツの裾から手を入れて、背中を撫で上げれば、ひゃぁ、と小さく声が上がった。そのまま全部捨り上げて、下着を、

『つけてないん』
「ちょっと、めんどくさくて、」

いきなり現れた二つの膨らみの間に顔を埋めた。

「ちょ、かずや、」
『んー、きもちええー』
「んもう、」

ふわふわな胸に挟まれる幸福感。さっきのモヤモヤなんかどこかに消えていくくらいの。むにむにと触りながら、軽く先端を折ると、

「かずや、ちょ、まって、」
『もうまてへん、』
「だって、もう、立ってらんない、」
『そらしゃあないなぁ』

そばのソファーに押し倒して、服を脱いで脱がして、名前の上に覆い彼さる。白い肌が、朝の光に反射して眩しい。

「こんな明るいの、恥ずかしいよ」
『ええやん、もう何度も見とるし、昨日だって』
「それでも、はずかし、んんっ、」

口づけで黙らせて、胸を触って、1枚残した下着の中に手を入れて。昨日、何度もしたせいか中はまだ柔らかくて、とろりとした液が指と下着を汚していく。

『なあ、もうええやろ、』
「まっ、や、ゴムは、」
『ここにもあるねんなー』

こんなこともあろうかと、ちゃんとソファーに隠してある。ここだけじゃないねんけどな隠してあんの、風呂場とか。全部言わへんけど、撤去されても困るしな。ぴっと封を開けて、準備万端の自身に彼せて、汚れた下着を脱がすと一気に奥まで押し込んだ。慣らさなくても簡単にはいってしまう。

『あーつ、きもち、』
「も、いきなりいれな、ああっ、でよ、」
『だって、我慢できんかってん、』
「だからって、あ、もう、ん、」

噛み付くようなキスで口を塞ぐ。ぐちぐちと水音だけが響く部屋で、ひたすらに快楽を求めて腰を動かす。
それ以外、何も考えられないくらいに。

明るいから、いつもよりも彼女の表情がよく見える。どこを触れば表情が変わるのか。どの動きがイイのか、じっと見つめていると、目が合う。大きく目を見開いた彼女は、赤くした顔を背けた。

「みない、で、って、」
『なんでやー、名前の顔、よぉ見られると思ったんにー』
「だって、はずかし、もん、」

まさに今その恥ずかしいこと、をしていると思うけれど、多分それは言ってはいけないんだろう。昨日だって、全部見たというのに。

『可愛いで、名前』
「なに、よ、きゅうにっ……、」
『俺でぐしゃぐしゃになってんの、めっちゃ可愛い』
「……っ、かずやの、ばか」

あ、ちょっと締まった。顔を隠すように身を振っているけれど、頬に手を添えてこっちを向かせる。いやいやするように目を閉じる彼女。

「なん、でっ、」
『キス』
「え、」
『キス、できひんとこまるやろ、』

何度目かの深い口付け。余計なことは気にせず、俺に溺れていればいい。細い脚を掴んで開いて、もっと深くまで押し込んで。繋がっているところがよく見えて、興奮が増してああ、そろそろ限界だ、昨日あんなにシたのに。

「あっ、や、はげし、」
『そろそろ、ええかなっ、て、』
「そん、あつ、そこ、きもちい、」
『名前、好きやもんなぁここ、ほら、』

ぐっと奥に押しつけて欲を吐き出す。中が締まると同時に彼女の顔が大きく歪んで、小さな征服欲が満たされた。倒れるように覆いかぶさって抱きしめる。

イイ雰囲気だったのに、ちょうどお腹が鳴ってしまって、次はそっちを満たそうかと笑い合った。






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