入らなかったけど勿体ないから晒します。
怒鳴り声の原因はこちらだった。
***
プルルルルルル…
聞き慣れない音に、はて、と善逸は読んでいた雑誌から顔を上げた。暫くして滅多に鳴らない固定電話だと気付く。固定電話は基本爺ちゃんの知り合いからしか掛かってこないから仕方ない。
「はい、もしもし?」
「……チッ」
え、舌打ち。こんな理不尽極まりない事をする人間はうちでは唯一人である。
「はあああーぁあっ!?開口一番に舌打ちってなんだよクソ兄貴!!」
「…っ!電話口で大声出すんじゃねえよ!カス!!」
「お前もな!」
キーンと耳鳴りのする右耳を押さえて、逆の耳に変える。
「で、何?用件は?」
「携帯に出なかったんだが先生はいるか?」
「爺ちゃんは鱗滝さんちで酒盛り。」
「そうか。俺も今日は帰らねえから。」
「え!マジか!」
じゃあ今夜俺一人って事じゃん。好きな物食べられるし、いくら遅い時間まで起きてても何も言われないし、リビングでお気に入りのアイドルのDVDも見放題じゃん。わくわくしてきた。
こんな奇跡の夜は中々ない。
「獪岳も友達のとこ?」
「……じゃあな。」
妙に間に善逸は首を傾げる。
「まさか、彼女と、か」
「……」
「うおぉーい!お前許さねえぞ!!彼女?彼女なの!?彼女なんですか!!?お前いつから彼女なんて居たのよ!?」
返事が来る事はなく、電話は通話が切れた事を教えるのみ。ツーツーと機械音を律儀に鳴らす受話器を叩きつけるように置く。
あの傍若無人に彼女が?自分で言うのもなんだけど自分だって見た身も中身も悪くはない。なのに恋人なんていた事がないのは何故だ。そういえば、この前炭治郎が獪岳と会った時女子と一緒だったって言ってたな。まさかその子か。その子なのか。詳しく聞けばよかった。俺とした事が。てか、泊まりってそういう事?やる事って一つだよね。大人の階段登っちゃう感じ?
「あああぁあぁぁあ!!ほんっと許せねえあのクズ兄貴があぁあ!!呪ってやる!呪ってやるぅう!」
キエエェーと善逸の奇声が夜空にこだましたのだった。