カチカチと絶え間なくテレビの画面が移り変わる。どの番組も正月特有の特別企画のものばかり。
「…暇だ。」
お気に召す番組が無かったようで獪岳が頬杖を付いて独りごちだ。正月の三日目となればテレビ番組もどれも似たようなもので飽きもくるのは仕方ないだろう。
「じゃあ初売りに出掛ける?」
「このくそ寒い中外に出る奴の気が知れねえ。」
名前が苦笑し、剥いていたみかんを一つ彼の前に差し出した。あ、と口を開けて咀嚼する様が雛が親鳥から餌を貰うようで少し可愛い。寄越せと再び口を開くのも右に同じだ。
「……姫始めしねえか?」
「ん?」
雛に餌を、否、獪岳にみかんをあげる手が止まる。
首を傾げて意味を問うか、それとも頬を朱に染めて怒るかのどちらかだろうと獪岳は思った。が、彼女の反応はその二つのどちらでもなかった。
「いいね!今からやる?」
「はあ?」
あまりそのような色事を嬉々にする子ではない事を獪岳はよく知っている。もっと積極的になってくれればと思う程だ。(押しに弱く流されやすい為に獪岳が好き放題しているので気にはならないが。)
「じゃあ、準備してくるね。」
そう言い炬燵から立った。
準備とは?そうは思ったが、それよりも乗り気な彼女に柄にもなく少し胸がときめく。
そして待つ事およそ三十分。
「遅過ぎるだろ!」
炬燵が軋まんばかりに拳を打ちつけて、名前を探すべく立ち上がる。
風呂場か寝室かと見に行くが姿は無く、結局彼女が居たのは台所だった。
「…何してんだよ、お前。」
漂う美味そうな匂いに先の会話から何故そのような流れになったか皆目見当もつかず、その背中に声を掛けた。振り向く不思議そうな表情に更に謎が深まる。
「え?姫始めでしょ?」
「なんでそれで飯なんか作ってんだよ?」
「いや、だから、姫飯を」
「あ?」
『姫始めとは?一、正月に柔らかく煮た姫飯を食べる事。ニ、その年の最初に男女が交わる事。』
スマホの辞書を眺めて顔を見合わせる。
「……却下!!」
「あ゛あ!?ふざけんなクソ女!!」
顔を真っ赤にして逃げ出した名前を寝室に連れ込み好き放題にしたのは言うまでもない。
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0109 裏に続き書きました。