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「大丈夫かな……飛雄」
12月ともなればここは寒い。バスを乗り継ぎ到着した見慣れない風景の中を、歩きながら吐く息は時折視界を白く染める。
「ダメかもね、もしかしたら東京駅あたりで野垂れ死んでるんじゃない?」
「げっ、やめてよ! リアルにありそうで怖い……」
立ち上る白を視線で追いかければ、平然とした調子で隣を歩く月島の横顔に行き着く。これから県内の精鋭達が勢揃いの疑似ユース合宿に参加するというのに、緊張の色が一切感じられない月島の嫌みは今日も今日とて絶好調だ。サポーターとして従兄から要請を受け、やや強制的に搬送されるハメになった私ですら若干気後れしているのに。月島は環境に順応するのが早いと言うか、いや寧ろ環境に流されない強固な姿勢を常に保っている気がする。流石クレバーボーイ。
「武ちゃんが詳しくルート書いたメモを預けたみたいだけど……あの子真朋に漢字読めないからなぁ……」
「分からなかったら駅員に聞くデショ」
「飛雄にそんなコミュニケーション能力があると思って?」
珍しいフォローの言葉すら蹴散らし、頭に思い浮かべるのはあのおバカな幼馴染みのこと。心配だ、心労が祟って禿げそうなくらいに心配だ。仮に動物的本能で目的地に着けたとしても、コミュニケーションを取るのが勉強とトントンで苦手な飛雄が、見ず知らずの人しかいない肩身の狭い空間で上手くやっていけるとは思えない。到底思えない。
「ああ……着いていけば良かった」
「過保護すぎ」
はぁと吐かれた月島の溜息は、やっぱり私と同じくらい白かった。