幼稚園の先生は初恋になりがち
「じゃ、後はこっちでやっとくから」
『わかりました』
『お疲れ様です、名字補佐!』
「はーいお疲れ」
ひらひらと手を振って一番隊と十番隊を見送り、不貞腐れた様子で橋に腰掛ける銀ちゃんに近付く。
「お待たせ銀ちゃん」
『ケッ』
「ごめんってば。ちょっとふざけただけじゃん」
『いいか、Sは打たれ弱いんだ。そこんとこちゃんと覚えとけよ』
「今度私のおごりでケーキバイキング連れてってあげるからそれで許してよ」
『…絶対だからな。忘れたら承知しねェぞ』
「はいはい」
思いのほかチョロい銀ちゃんの前にしゃがんで手錠にカギを差し込む。
『結局、一番デカい魚は逃がしちまったよーで。悪い奴ほどよく眠るとはよく言ったもんでさァ』
『ついでにテメェも眠ってくれや永遠に。人のこと散々利用してくれやがってよォ』
夕焼けに染まる空を見上げる総悟を見て手錠が外された銀ちゃんは手首を回しながら額に青筋を浮かべた。
『だからちゃんと助けに来てあげたじゃないですかィ。ね、土方さん?』
『テメーらなんざ助けに来た覚えはねェ。だがもし今回の件で真選組に火の粉がふりかかったらテメェらのせいだからな。全員切腹だ』
『『…え?』』
『いや、無理無理!あんなもん相当ノリノリの時じゃないと無理だから!』
「大丈夫だよ新八くん、その時は私が介錯してあげるから」
『いやどこが大丈夫?やばい予感しかしないんですけど』
『おいコラ一人だけ逃れてんじゃねェよ。お前も一緒だ』
「えっ」
『なら代わりに俺が介錯してやるよ。チャイナ、テメーの時は手元が狂うかもしれねーが』
『コイツ絶対私のこと好きアルヨ』
『総悟、言っとくがテメーもだぞ』
『マジか』
「逆に何で見逃してもらえると思ったの?」
『何ちゃっかり免れようとしてんだテメーは』
『銀髪の兄ちゃん!』
終わりの見えない会話を繰り広げていると、万事屋で待っていたはずの子どもたちが一斉に駆け寄ってきた。
『ありがとう、先生の仇取ってくれて!』
『ありがとう!』
『俺ァそんな大層なことしてねェよ。ドッキリマンシール分働いただけだ』
万事屋が子どもたちに囲まれるのを見ていると突然隊服の裾がぐいっと引っ張られた。目を向けるとそこには一人の少年が立ってこっちを見上げていた。
『姉ちゃんも、ありがとな』
「私は別に何もしてないよ」
『俺たちのこと兄ちゃんのとこに連れてってくれただろ。姉ちゃん美人だしさ、大きくなったら俺が結婚してやるよ』
「えっ」
意外ッ!それは愛の告白!
『珍獣使い希望かィ、中々見どころありそうなガキじゃねェか』
『おいマセガキ、悪いことは言わねェ。そいつだけはやめとけ』
「二人とも後でゆっくりお話しましょうね」
しゃがんで少年に視線を合わせる。
「残念だけど、君が大きくなる頃には私もうおばちゃんになってるから無理だと思うな」
『おばちゃんでもいいよ、姉ちゃんだったら』
「でもね、きっと君はこの先私なんかと比べ物にならないくらい素敵な女の子にたくさん出会えるよ。間違ってもこんながさつで乱暴で年中アイスのことしか頭になくて常にサボる言い訳探してるメスゴリラに引っ掛かっちゃダメだよ」
『おいブス、自分で言ってて苦しくねェのかィ』
「だまれ性格ブス」
『何で?姉ちゃんは素敵な人だよ。綺麗なのに強いし、優しいし、俺たちのこと助けてくれたし』
「……」
『おいショタコン予備軍、何ときめいてんでィ』
「ちょっとやめてくんないその言い方」
断じてショタコンのつもりはないが不覚にも真っ直ぐな目で愛の告白をしてくる少年に胸を撃たれてしまった。それもこれも顔はいいくせに性格ゴミクズなドSバカと、同じく顔はいいくせに味覚が限界突破している土方さんに毒されたせいだ。
「えっと…じゃあね、君が将来私より稼げる男になって、私より強くなったら、その時また考えてあげる」
『ほんとか?』
「うん」
『絶対約束だぞ!』
「うん、約そ、く…」
頬に柔らかいものが当たる。
『じゃあな、名前姉ちゃん!』
呆然とする私を残して走り去っていった。思わず乙女のような仕草でキスされた頬に触れる。
『おいショタコン、生きてやすかィ』
「だからやめてくんないその言い方。私どちらかといえば年上の方がタイプだって」
『なるほどおじ専ですかィ』
「総悟、中間って言葉知ってる?」
0か100なのかこいつは。
「いやーそれにしても最近の子どもはませてますねェ。私不覚にもドキドキしちゃいましたよ。ねっ土方さ、あいたァァっ!?」
土方さんに顔を向けた瞬間、私の額で割と強めのデコピンが炸裂した。デコピンとは思えない痛みに悶絶する。あれ、これもしかしておでこ割れた?
「ひっ…土方さん、もしかしてニコチン切れてます?」
『違ェよこの馬鹿』
「そらこんな扱い受けてたら馬鹿にもなりますよ。あーいった、パワハラで訴えますよ。それか私のおでこ割った罪」
『んな簡単に割れるか』
『土方さん、男の嫉妬は見苦しいですぜィ』
『はァ?誰が』
「大丈夫ですよ土方さん!純粋さと優しさを失っても土方さんにはそれ以外に女が落ちる要素てんこ盛りですから!顔とか顔とか、あとほら顔とか!」
『そういうことじゃねェよこの馬鹿!つかそれ以外にもあるわ!』
「いだァァァァァ!ちょ、フォローしたのに何で二発目!?私今日は結構真面目に働いたのに!」