このご時世
世界のおおよその人間が特異体質を持ったこの現代では、自分の個性を使いこなす者がほとんどだ。しかし、中には個性が複雑であったり使い慣れていなかったりという理由で、うまく制御ができない例もある。
例えば同じクラスにいる緑谷出久、彼がいい例だ。高校入試で仮想敵をすごいパワーで倒した後、ズタボロになったまま動けないでいた。あそこまで自分の個性を制御できないのは珍しい部類ではあるが、今後この高校でどう成長していくのか、一番気になる人物でもある。
それともう一人、推薦でこの雄英高校に合格した轟焦凍も、うまく個性を制御できていない部類だと思う。まあ彼の場合は、自分の感情のコントロールといえば良いのか定かではないが。
そんな私も、個性をうまくコントロールできない部類に含まれる。個性"エンドレス" 私はそう呼んでいるが、ぶっちゃけ最初にこの個性が発現した時はチートかと思った。何せ、時間を繰り返すことができるのだ。例えるなら、もし目の前にバナナの皮が落ちていて、それを誤って踏んでしまいこける日があったとする。そんな漫画みたいな恥ずかしいことを、その日を繰り返してそれを回避することで、なかったことにできるというわけだ。
だが、個性が発現したばかりの私は、無意味に日々の繰り返しをしてしまうという地獄を何度も過ごしてきた。そうこうしている間に、自分の個性が大嫌いになり、今ではなるべく個性を使わずに生活することに慣れてきたのだ。
そんな私でも一丁前にヒーローに憧れて、雄英高校ヒーロー科に入学するためにたくさん勉強をした。ヒーローになるための力は、道場に通ったり毎日自分でトレーニングをすることで培ってきたつもりだ。
今までの努力が実ってか、めでたく雄英生徒となることができた私は、入学してから初めてのオールマイトの授業に備えて準備を始める。
「わーたーしーがー!普通にドアからきた!」
ザワザワとする教室の中で、憧れのヒーローに目を奪われる。本当にこの人からヒーローとしての基礎を学べるのだと思うと、嬉しさが込み上げてきて自然と笑顔になってしまう。
そして、オールマイトの口から今日は戦闘訓練を行うということを聞かされ、各々のコスチュームに着替えてグラウンドβへと向かった。
最初の対人戦闘訓練は、オールマイトの引いたくじによってヒーローチームに緑谷と麗日、敵チームに爆豪と飯田という組み合わせになった。
他の残った生徒は、少し離れたモニタールームで彼らの様子を見て自分の出番まで備える。
訓練が開始してすぐ、爆豪くんからの激しい攻撃をうまく避けたりする緑谷くん。映像しか見ることのできない私たちは、彼らがどんな言い合いをしているのかわからないが、皆がただならぬ雰囲気を感じていた。
最終的にボロボロになりながらもヒーローチームの勝利で終わったこの訓練に、クラスメイト全員が息を飲んでいるのを感じる。
勝ったはずの緑谷くんはリカバリーガールの元へ運ばれ、最初の訓練の講評が始まった。
その時の爆豪くんの様子が、いつもの雰囲気と違い思いつめたような表情をしており、少し気にはなったが今はこれから始まる訓練に目を向けた。
そこでクラスメイトの個性を改めて見て、轟くんの強さだったり芦戸さんのセンスを肌で感じ、いい個性が少し羨ましくなる。私のこんな個性、ヒーローには向いていないし、もっと派手で実用的なものが良かったと心から感じた。
全員の戦闘訓練が終わり、緑谷くんの帰りを教室で待つことになる。
その間、帰ろうとする爆豪くんを呼びとめたりする生徒もいたが、彼は聞かずに教室を出て行こうとする。
戦闘訓練後から、なんだか彼の様子が心配になって、
「爆豪くん!」
と彼の名前を呼び咄嗟に腕を掴んだ。途端、ぐるぐるという久しぶりの感覚を体感した。
やばい、と思う心とは裏腹に、私と爆豪くんは今日をやり直すこととなる。