彼思うまま



特に決まった将来の夢もない帰宅部の私は、学校帰りにこの土手のコンクリートブロックの上を歩くのが日常となりつつある。それはひとりで帰っている時でも、幼馴染の彼と帰っている時でも変わらない。

「転けても知らねえぞ」

そう言って前を向いたまま歩き続ける幼馴染の彼を追う。素っ気ないセリフを言いながらも、歩幅を合わせてくれる、そういうところにすごく優しさを感じる。

「転けないよ。転けそうになったらさ、ちゃんと支えてくれるわたしのヒーローがいるから」

笑って応えた私に、表情を変えることなく歩みを進める彼。その姿に、彼の個性に、いつも釣り合うわけがないと思っても好きだと感じてしまうのだ。

「名前はこれからどうすんだ」

「どうって…進路のこと?」

無言でこちらを見つめる瞳に、肯定であると認識する。彼の進路は前から知っていた。私立雄英高校、様々なヒーローを輩出してきたその高校に、彼が進学することなど考えるまでもないことであった。

「うーん、焦凍の行くところではないのは確定かなぁ」

ヒーローになりたいと憧れて、幼い頃から2人でわいわい遊んでいたはずなのに、いつの間にか彼に劣等感を感じている私が、小中学校と同じでいて高校まで同じにする理由などなかった。
その私の発言に、ちらとこちらを見た彼の瞳に気がつかないふりをしてブロックの上を歩き続ける。

「そうか」

「焦凍は雄英合格のためにさ、私と帰ってる無駄な時間過ごしてないで身体鍛えた方がいいんじゃない」

本音を悟られないように、彼の目を見ずに歩きながらそう答える。劣等感を抱きながらも、彼といたいと思う強欲な私を知られたくなくて、必死に冷静を装う。

「焦凍はきっとさ、すごい個性の子を見つけて楽しい学校生活を送るんだよ。わたしはそう信じてる」

「…お前はそれでいいのか」

何を考えいるのかわからない瞳に少しの不安感じるが、大切だと思うからこそ彼の幸せを願わずにはいられないのだ。
放課後の、夕日が綺麗に沈んでいく頃になって今まで言ってこれなかった本音を告げる。

「焦凍はお父さんの事も受け入れて進める日がすぐにくるよ」

そう言うと、ふいに彼の歩みが止まってこちらを振り返る。

「名前も来いよ、雄英」

その言葉を聞き、まだ合格もしていないのに、大好きな幼馴染に、私のヒーローである幼馴染に、そう誘われて断れるほどまだ大人になんてなれていないのだと思う。

「ヒーロー科に入れとは言わない。でも、同じ学校に行こう。それが俺の願いだ」

「…じゃあさ…落ちないようにさ、勉強の面倒みてよね」

そう言うと、彼は目元を緩めて優しく手を握ってくれるのだ。