番外編4 眠れない日
時々故郷を思い出して眠れなくなる日がある。
白ひげの船に乗る前は海に潜って気を紛らわせていた。
船に乗ってからは海に潜って気を紛らわせる事はできなくて、何か食べたり、夜中1人で音楽室に行って歌ったり、海を眺めたりしていた。
それでもどうしても気持ちの切り替えが出来なくて、自分でもどうして良いか分からなくなる日がある。
今日はそんな日。
そんな時は夜中にマルコさんの部屋に行く。
マルコさんの部屋に着き、ノックもせずそっと扉を開ける。
マルコさんは私が何も言わなくても、そろそろ来そうだなって思う時は部屋の鍵を開けておいてくれる。
そのまま部屋に入って真っ直ぐにベッドに向かうと、マルコさんは布団をかけたままうーんと唸っていた。
一応さっきのノックの音でうっすら目が覚めたのかもしれない。
唸るマルコさんに声をかける事もせず、そのまま隣に潜り込んだ。
もぞもぞと動く気配にやっとマルコさんが目を開ける。
「・・・眠れないかよい。」
「うん。」
マルコさんの腕を枕にして胸元に擦り寄ると、もう片方の手で背中を優しく叩かれる。
「帰りたい。」
「ああ。」
「お母さんとお父さんに会いたい。」
「ああ。」
「友達にも。」
「・・・ああ。」
「きっと心配してる。」
「・・・そうだな。」
「帰れなかったら、どうしよう。」
「・・・大丈夫だよい。」
涙が溢れて目の横を伝い耳に流れて行く。
毎回同じ事を言って、マルコさんも毎回同じ返事をする。
このやりとりは私が眠るための一種の儀式のようなものになっている。
マルコさんの言う「大丈夫」は、ちゃんと帰れるの大丈夫なのか、帰れなくても何とかなるって意味の大丈夫なのか、どちらだろう。
両方かもしれない。けど一度も確認したことはない。
だって、もし私が帰れないと分かったらこの船に置いてもらえるくらい、気に入られてると思うから。
背中を優しく叩いていた手が止まり、頭上から静かな寝息が聞こえてくる。
そうしてやっと私も眠りにつく事ができるのだ。