たぬきは恩返しがしたい
ワナにかかった足がいたい。
ニンゲンになって外そうと思ったらさらにギザギザした部分が足に食い込んできて、足がちぎれるかと思った。
ほんとにほんとに痛くて、気絶するかと思ったくらい。
だからたぬきのまま口で外せないかな〜ってがんばったけど、全然だめ。
あばれたら余計に傷が深くなったし、もう一回ニンゲンになる勇気は出ない。
そうしてるうちに太陽が3回も山の向こうに消えてった。
ニンゲンに蹴られたお腹も痛いままだし、このまま死んじゃうのかな。
もっと美味しいもの食べたかったし、番も欲しいし、子どもも欲しい。
最近やっとニンゲンの振りが上手くなってきて色々できるようになってきたのに。
***
なんか聞こえる。
ガサガサ言ってるけどなんだろう。たぬきだといいな。
狐はちょっと嫌だ。なんか罠にかかってるところ見られたらバカにされそうだし。
オオカミはもっと嫌だ。食べられちゃう。
とにかくこっちに気づきませんよーに!
って思ってるのに音が近づいてきてる。
「はー、食い逃げでこんな所まで追いかけられたのは初めてだぜ。随分と山奥まで来ちまったな」
あー!ニンゲンだった!
どうしよう。ニンゲンの振りをしてる時ならご飯を食べさせてもらえるけど、今はたぬきだからな。
捕まったらどうしよう。
とりあえず伏せて様子を見るか。
そのニンゲンはみかん色の帽子?と言われる物をかぶっていて、上半身が裸だった。
私が街へ行った時はみんな全身服を着ていたけど、なんでこの人は裸なんだろう。
誰かに取られちゃったのかな。
それとも着てくるのを忘れたのかな。
あ、一瞬横を向いた時に背中に絵が書いてあるのが見えた。
絵が書いてあるから服は着なくて良いのかな。
ニンゲンよくわかんない。
「ん?なんか視線が…たぬき?」
うわー見つかった!
地面に伏せてるから見つからないと思ったのに〜!
見過ぎちゃった!
あー近づいてくる!たぬき鍋にはなりたくない…!
「逃げないと思ったら罠にかかってるのか。よっ、と」
ガチャン、という音がしたと思ったらワナが外れていた。
「逃げないのか?よしよーし。あ、怪我してんのか」
気づいたら撫で回され。
「じゃあ船に連れてって薬でもつけてやるよ」
そう言ってニンゲンは手を伸ばして来たけれど、誰かの声がして手を引っ込めていった。
「嘘だろ!?食い逃げでこんな所まで追いかけてくるのか!!なんか悪いことした気になるなァ…。じゃ、たぬき。手当てできなかったけど元気でな」
そう言ってもう一度たぬきの頭を撫でてニンゲンは去っていた。
たぬきも別のニンゲンに見つからないうちにここから離れよう。
***
なんだかあのニンゲンに撫でられてから体がふわふわする。
あとふとした時にニンゲンの顔が頭に浮かぶ。
ニカっと笑った顔…あったかい手。
お日様みたいだった。
もう一度会って撫でてほしい。
そうだ、お礼をし会いに行けばいいんだ!