学校見学
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受験戦争少し前の高校見学。友達数人と来たものの、それぞれ部活見学に行ってしまった。ある程度経ったら玄関前に集合ね!と約束して、今。部活動に興味は無いしとフラフラしていたのが良くなかった。完全に迷った。
「えー、こっち玄関じゃないの……」
貰ったパンフレットの校内見取り図と、教室のプレートを見比べながら、現在地を割り出そうとする。が、それが出来たら迷っていない。とりあえず来た道を戻ろうか。でもそれでまた迷ったらどうしよう。
「お嬢さん」
「ひぃっ!」
あーだこーだ考えていたら、背後から声。驚いてばさばさと落ちるパンフレットやらプリントやらの束。振り向くと、男子生徒が立っていた。
「おっと。すみません、驚かせてしまいましたね」
心臓をバクバクと全力疾走させていると、男子生徒が落としたプリントを拾おうとして膝をついた。
「ああああ、すいません、私のです!」
「そうでしょうね、落とす所を見ていましたから」
「そうですね!?いや、そうじゃなくてですね!」
慌ててしゃがむが既に集め終わっていて、まとめたものを渡される。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
その時、漸く顔を見た。黒い髪。紫の目。日本人ではない顔立ち。白い学ランがよく似合っている。パッと見ただけでは女と間違うかもしれない。それくらいとても綺麗な人だった。目が合うと、にこりと微笑まれて、かなりモテるだろうなとぼんやり考えた。
「ところでお嬢さん」
「はい?」
「お嬢さんの目的地は何方ですか?」
「玄関です」
そうだ、こんな所でしゃがんでいる場合じゃない。一刻も早く玄関に向かう必要がある。約束の時間は目前で、早くしないと置いて行かれてしまう可能性がある。
「玄関?部活動見学に行くのではなく?」
「こっちに部活動の活動場所あるんですか?」
「文系部がこの廊下の突き当たりですね。ちなみに玄関は反対方向にあります」
「え……」
玄関だと信じて突き進んでいた方角は、玄関から遠のく方向だったらしい。これだから単独行動は嫌なんだ、と校内見取り図を睨む。
「ぼくで良ければ案内しますよ」
「良いんですか?」
「ええ、驚かせてしまったお詫びです」
「ありがとうございます……お手数お掛けします……」
前を歩く男子生徒の、半歩後ろを着いて行く。しかしこの人、背が高い。手足も長い。美人で高身長とか、神様は不平等だな。
「ところでお嬢さん」
「そのお嬢さんって何ですか?」
「女子に使う二人称として最適かと思いましたが」
嫌ですか?と軽く首を傾げて聞かれる。嫌ではないけど、呼ばれ慣れて無いからそわそわする。
「落ち着かないのでそれ以外でお願いします」
「ではお名前は?」
「小田です。小田詩音」
はい、と名札を見せる。鞄にならノートがあるけど、いちいち出すのも面倒臭い。
「では、詩音で」
いきなり呼び捨て。しかし流石、自然にやってのける辺り全く嫌味を感じない。美人の力って凄い。
「詩音は行きたい高校は決まりそうですか?」
「何処もいまいちピンと来なくて、まだ決まりそうにないです」
「そうですか。それは軟派のしがいがありますね」
「えっ」
「冗談です」
思わず顔を見上げた。くすくすと笑われる。真逆軟派なんて単語が飛び出してくるとは思わなかった。
「素直なのは良い事ですが、少しは疑う事を覚えましょうね。でないと、案内する振りをして変な所に連れて行かれるかもしれませんよ」
「真逆玄関に向かってないなんて事は」
「安心なさい、ちゃんと玄関に向かってます。ですがこの場合、ぼくの案内を受けるより迷子にならない友人を呼ぶのが一番安全でしたね」
「あ、その手があったか」
早く早くと気が急いて、友達に連絡をするなんて考えもしなかった。成程、確かにこれは危ない。小学生の頃散々知らない人には着いて行くなと言われていたのに。
「次は気を付けます」
「次が無いと良いですね」
「そうだ、そこからだ……」
そもそも迷子にならなければ済む話。今さっき出会ったばかりの高校生に馬鹿さ加減を露呈されてしまってる。当の高校生はまた笑っている。また笑われた……。
「全く……詩音は面白いですね」
「褒めてない!それ絶対褒めてない!」
「褒め言葉ですよ。先程までの素直さは何処に行ったのですか?」
「先輩が疑えって言ったんだもん!」
「直ぐ実践に移そうとする心構えは評価しますよ」
話している間に玄関へ。長かったような、いや、そんなに長くも無かった。ただ、歩くのがゆっくりだった。約束の時間は少し過ぎてるけど、まだ誰も居ない。一番乗りだ。
「ありがとうございました」
「駅まで迷わないで下さいね」
「友達が居るんで大丈夫です」
駅まで行ければ後は迷う方が難しいくらいに歩き慣れた道しかない。友達さえ待ってれば問題ない。高校生が居なくなると程なくして友達がやって来た。
「えっ、詩音が一番乗りとか明日嵐じゃない?」
「それ酷くない?!」
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