最初と最後


 これは何となく、意地みたいなもの。
 日付が変わった瞬間に、ドス先輩に電話を掛ける。
 数回の呼び出しの後、「はい」、という少し無愛想な声。
「ドス先輩、おはよ?」
『そうですね、おはよう、で合ってます。深夜ですが』
「でも起きてくれる先輩好き」
 知ってます、って何時もの反応。本当に眠そう。
「先輩、あのね、お誕生日おめでとう」
『ありがとうございます。早く寝ないと、明日起きられなくても知りませんよ』
「ドス先輩より朝強いもん。じゃあね、また明日ね」
『ええ、おやすみなさい』
「おやすみ」
 通話を切って、布団に潜る。
 明日、……もう今日か。今日も学校があるから、ちゃんと起きないと。

 朝になって、アラームの音で目が覚める。ご飯を食べて、身支度を整えて、行ってきます。
 ドス先輩のお家に寄って、先輩を連れて学校に行く。
「先輩、眠い?」
「誰かさんに起こされたものですから」
「あー、そういう事言う」
 意地悪だ。意地悪するならプレゼントあげない。
 そっぽを向いたら、髪を撫でられた。
「冗談です。そんなに拗ねないでください」
「ドス先輩が意地悪なのが悪い」
「何時もの軽い冗談でしょう?ところでそれ、貰っていいですか?」
 それ、と鞄からはみ出してる袋を先輩が指差した。中身はお菓子。頑張って手作りした。
「今年は何です?」
「パスチラ」
「それはまた手間のかかるものを」
 それはもう、恐ろしいくらいに時間がかかった。材料はシンプルで、その分難しくて。でも上手に出来たとは思う。
「後で頂きますね」
 渡せば、にっこりと微笑まれる。嬉しいような、流されて悔しいような感情を抱いて、門を潜った。

 それからはもう何時ものように、普通に授業を受けて、部活動の日誌を書いて、下校。
 帰りも当たり障りのない会話をして、帰宅。
 夜ご飯を食べて、後は寝るだけの時間。日付が変わる前に、先輩に電話。2コールで出る。
『はい』
「起きてた」
『どうせ掛けてくるだろうと思いまして』
「どうせって」
『パスチラ、美味しかったですよ。ありがとうございます』
「どういたしまして。ね、先輩、次の土曜日お泊まりしていい?」
『お母様に許可を取ってからになさい』
 お母さんはドス先輩のとこなら駄目って言わないもん。そう言っても、折れない。
 じゃあ明日聞く。そう言って漸く、お泊まりの話が出来る。
 ある程度まとまって、時間を見ると、もうすぐ日付が変わる頃。
「ね、ね、先輩」
『はい?』
「誕生日おめでとうございました」
 そう言えば、クスクスと笑われる。電話越しだから、あまり聞こえないけど。
『飽きませんか?それ』
「んーん。だって先輩の一番最初も、一番最後も、私でしょ?」
 それが嬉しいから、飽きない。だってこれは意地みたいなものだから。
 少し考えるみたいな間が空いて、それから、とびきり優しい声。
『おやすみなさい。また明日』
「うん、また明日ね」


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