再結成!


レイリーを背に走るルフィ達。またも海兵がやって来たが、そこへ現れたのはスリラーバークで敵として出会い、ゾロをここまで送り届けたペローナだった。

「やっぱりお前らか、この大騒ぎ。まだここでぐずぐずしてたのか!?」
「はァ!! キミはスリラーバークの!!」
「お前こそ何でまだここにいるんだ!!」
「誰だっけ」

3人ともバラバラな反応をする中、ペローナは急いで出航しろと言う。それもそうだ、何せ島のそばにはもう軍艦が現れたのだから。
ルフィ、ゾロ、サンジが焦る中、サニー号に集まる他の仲間達はと言うと…。

――42番GRグローブ海岸 “麦わらの一味” 集合場所

「ヨホホホホホ〜〜〜〜!!! ウソップさん♪ ナミさんロビンさん♪ シアンさ〜ん♪ フ〜〜ルァンキーさ〜〜ん♪」
「ブルック〜〜〜〜!!」
「おめェ、よくスターの座を降りて来たな。あっぱれだ」
「なんとお懐かしい〜皆様ァ〜〜♪ YEAH!!」

ブルックがサニー号へ来たことにより、更に騒がしくなる船内。パンツを見せて欲しいと強請り、ナミに蹴られるのも懐かしい光景だ。
着々と集まりつつある仲間に、シアンはまたそわそわと落ち着きなく周りを見回す。そんな様子にロビンが柔らかく笑っていると、

「お〜い!!!」
「!」

空から降ってきた、その声。船内にいる者は皆同じ様に空を見上げると、そこには嬉しそうな顔をしたルフィ、ゾロ、サンジが居た。

うおー!!! みんな〜〜〜!!!
ルフィ!!! ゾロ!! サンジ〜!!

連れてきた! と声が踊っているチョッパーに、シアンも顔が綻んだ。

「男上げてんなァお前ら!!」
「ルフィさん!! お会いしたかったァ〜〜〜!!」
「へへっ…またみんな揃った!!!」
「おーーい!!」
「遅いよー!」

皆が口々に思い思いの言葉を言う中、ナミとロビン、それからシアンを見つけたサンジは、ブバァァァァ!!! と大量の鼻血を鼻から出し、宙へと飛んでいった。
そして、4人は船へと降り立つ。早速フランキーの身体に興味津々なルフィだが、生憎そんな事をしている暇などない。
――ドゴォン!!

「わああ!!」
「!!?」
「しまった!! もう撃ち込める距離に!!」
「反撃するか!! やられちまうぞ!!」
「撃てェーー!! 撃ち沈めろォ!!!」

絶え間なく大砲を撃ってくる海軍に、どう回避しようと模索していたその時――。

虜の矢スレイブアロー”!!!
「!!?」
「待て!! 撃ち方やめっ!!!」

突然現れたのは、王下七武海の一人――〈九蛇海賊団〉・ハンコック。又の名を蛇姫。
ハンコックはいつもの我儘な口ぶりで海軍に文句を言いながら、ルフィへと綺麗なウィンクをした。それにドキューン! ときたのはブルックだ。当の本人であるルフィは助かったと出航の準備を急ぐ。

「バルブ開くぞ!! 船底のエアバッグから空気を入れる!!」

フランキーがその言葉通り空気を入れた事で、船のコーティングがどんどん膨らんでいく。やがて、一つのシャボン玉が出来上がった。

「うわ〜!! シャボン玉の屋根ができた〜!!」

嬉しそうな声が響く中、ウソップが外を眺めているのを見たチョッパーは、下からウソップへ声を掛ける。

「どうかしたか? ウソップ」
「……………お前ら海兵全部やっつけて来たのか?」
「いや…、まだいっぱい海兵の声聞こえてたぞ!!」
「それにしちゃ陸から追って来ねェな」
「来ねェのは結構だ。来る前に出航しちまおうぜ!!!」

その話を聞いていたシアンは人知れず笑った。何故なら、彼女は全て知っているからだ。
今、シャボンディ諸島には、皆がこの2年間世話になった人達が海兵を食い止めてくれている事を。現にシアンが2年間船に乗っていた〈赤髪海賊団〉、そして〈白ひげ海賊団〉も、海軍に圧力を掛けているのだから。

「…ほんと、馬鹿なんだから…。シャンクス達も、マルコ達も…」

思い出すのは、彼らとの別れ際の会話だった。

「――それじゃあ、行ってきます!」
「行っちまうのかよシアン!! おれ達は寂しいぞォ!!!」
「せめてあと3日、いや2日!!」
「お前ら往生際が悪ィよい…。ま、安心して行けよい。海軍なんかは気にすんな」
「海軍を気にしないって…そんなの無理だよ。特にシャボンディ諸島に着いたらうじゃうじゃ居そうなんだけど…」
「いーからいーから!気にせず行ってこい!!」
「シャンクスまで…何企んでるのさ…」
「娘の新たなる門出だ! これくらいしか出来ないが…、せめてもの選別だ。海軍は任せておけ」
「……ばーかばーか! 最後までそうやって子供扱いするんだから!!」
「ただし、シアン限定だ。他のルフィ達バカ共の事は知らねェな!!」
「赤髪の言う通りだねい。エースの弟達には悪ィがな」
「〜〜〜ッ、親バカもいい加減にしてよね! 行ってきます!!」
「…あァ、気をつけて行ってこい」
「体調には注意しろよい」


2年で培われた絆はでかい。身をもって知ったシアンは、やっぱりこの船に、ルフィの船に来て良かったと改めて思った。

「みんな、いい!? コーティング船は色々な圧力を軽減する力を持っているの! ――つまり、コーティングした船は浮力が足りなくなり、今船底を支えてる『浮き袋』を外すと、船は海底へ沈んでいく。そういう仕組み」
「「なるほどー」」
「わかんないわよね」

ははーん、と分かった振りをするルフィとゾロに、ナミも諦めたように息を吐いた。
変わらないルフィを見て、シアンも安心する。外した帽子をきゅっと背中の後ろで握りしめ、スススッとロビンへと寄りかかる。
フランキーが浮き袋を外して、漸く出航の時が来た。

「出航か!? ナミ!!」
「ええ、どうぞ? 船長」
「ほんじゃ野郎共!!! ずっと話したかった事が山程あるんだけど!! とにかくだ!! 2年間もおれのわがままに付き合ってくれてありがとう!!!」

どんどん船が沈んでいく。バサッ!! と風に揺られる海賊旗と共に、ルフィは叫んだ。

出航だァ〜〜〜〜〜〜!!!
オオオオオオ〜〜〜!!!
行くぞォ!!! 魚人島ォ〜〜〜〜〜〜!!!

雄叫びを乗せて、船は水底へ進んでいった。

「(魚人島……、何年ぶりになるのかな…!)」

物語は、漸く一歩を踏み出した。





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