花京院はフラグをへし折りたかった。
ふわふわと視界の端で特徴的な前髪が揺れる。初期の時はそんなに長くなかったのになとかメタタァな事を考えながらエジプトの夜空を見上げる。なんの因果か、某奇妙な冒険漫画の花京院典明に成り代わってしまった俺はそれに気づいた瞬間思わず、「なるほど詰みゲーじゃねぇの!!」と思わず遊んでいたゲームのコントローラーを叩き付けた。(唯一の友達の法王の緑が心配してくれた。ありがとう。)
そんなこんなで、花京院典明=エジプト=DIO様=死亡フラグしか建っていないこの俺に誰か救いの手を差し伸べて欲しい。切実に、
ふぅとため息を吐き、そろそろ現実逃避を辞めて寝に入ろうと窓に背を向ければきしりと何かに体重が掛かり軋む音が鼓膜を震わせる。あ、これ、振り向いたら終わるパターンだ。え、やだやだ。「わたしメリーさん今あなたの後ろにいるの…」的な展開じゃあないですか。あ、此処はメリーさんじゃなくて「私はDIO、今お前の後ろにいるぞぉ!!」か、ってどっちにしても禄なことにならねぇ!!
「なぁ、君…」
背後から艶のある声で語りかけられ、心中おわたと思いながら俺はゆっくりと声をかけた人物を視認すべく振り向くのであった。
そして僕は闇夜に浮かぶ美しくも官能的なその紅い両眼に魅せられながら意識が遠くなった。
―*―
結論から言うとDIO様から肉の芽を植え付けられて今空条承太郎を倒すべく日本に帰国しました。えぇ、逃げようとしましたよ、だけどね人外ハイスペック野郎には勝てませんでしたよ。ちくしょー。仕方ないので腹いせに顔面殴りつけて置きました。ガチムチブルマさんからの視線がとても痛かったです丸後なんかDIO様が「これは、これで…」と恍惚の表情を浮かべていて本当にお家に帰りたくなりました。
閑話休題
肉の芽に操られては居るが思考まではどうやら操られていないので、好き勝手な事を考える事にする。まぁ喋れはしないんですけどね。脳内でため息を吐きながら、目の前のキャンバスに描かれている青年―空条承太郎の脚に紅い線を引く。お世辞にも上手く書けたとは言い難かったが、こう言う画材道具高いのになーと思いながらも身体は無言で片付けを始め怪我を負わせた空条の元に向かう。
「君、大丈夫かい?」
「ん?あ、あぁ…」
「脚を怪我しているようだね…これを使うといい。」
すっとハンカチ(宣誓布告入り)を空条に渡す。空条はじっと俺を見つめて何を思ったのか左手を腰に回し空いた片手でハンカチを持った手を握ってきた。ドウイウコトナノ?
少し遠い目をしながら空条の動向を見守っていればその端整な顔をずいっと近づけて来る。婦女子の皆様が喜ビマスネ!
「見ねぇ顔だな…おめぇ、名前は?」
「か、花京院天明です…今日転校してきたんです。」
「花京院天明か…いい名前だな。この恩はぜってぇ忘れねぇ…必ず返す。」
「あっ、お気になさらず。忘れてくださって構いませんよ?」
「いや、それは男が廃る。必ずさせてもらう。」
顎に手をかけられる前に空条の腕の中からするりと抜け出し、背を向ける。あっ、そうだ。
「怪我、ちゃんと治療してくださいね。」
化膿したら大変ですからね。と一言付け加えて立ち去った。取り敢えず保健室で出待ちしてれば良いですかね?
ふらふらとした足取りで保健室に向かうと、自身の身体が勝手に動き法王を養護教諭の先生の体内に潜ませる。法王めっちゃ動揺してましたけどね。安心してくれ、ぼくも動揺している。内心の動揺が表に出ることなく、こっそりと窓の下で待機する。傍から見たら不審者だが、制服だから問題ない。
体育座りしながら待つこと数十分。どうやら空条が来たようだ。立ち上がり、窓枠に脚をかければ、おや、見たことのない女子生徒だ。ショッキングピンクの髪は取り敢えず目に痛いと思います。
「あっ、あなたっ!!」
うわー、見つかったー。
内心棒読み気味でそう思考しながら、ちらりと視線を養護教諭の方に向ければ空条がずきゅうううううん!と言う効果音と共にキスをしていた。あっ、これ頭を齧られるっていたたたたっ!?
「っぐ!」
「?!」
「じょーたろうー!!その人!その人がそのスタンドの本体だよぉ!」
「きっさまぁ!!」
甲高い声とともに指を刺された上に頭がものすごく痛い。肉の芽に操られていると言ってもこの痛みは本物だ。ちょっと本気で反撃しても赦されるよな…
少し座った目をしながら空条を睨み付ければ、微かに動揺したように瞳を揺らした。俺はそのことに気付かず法皇の緑の必殺技を高らかに叫んだ。
「『エメラルドスプラッシュ』!!」
「きゃあ!!じょーたろうー!!」
というか君誰だ?今更な疑問を感じながら、僕は倒れた空条を見下ろした。
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あとがき
突然出て来た謎の少女は七人目ではありません。よくある逆ハー狙い主的なお方です。
これでフラグはべきべきにへし折られるといいなー