五章ネタバレ注意 うっすら五章沿い
ケルト系
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「あー、一ついいっすかね。」


遠慮気味に、かといって無視されるのは困るといった風に緑のマントに身を包んだアーチャー―ロビンフッドが声を上げその場全員の視線が集まる。


「あの狂王サマに対抗する策がないならとりあえず、ここらで噂の「森の賢者」サマにあいに行きませんかねぇ?」


「森の賢者…?」


ロビンフッドの言葉を繰り返すように返せば一つ頷かれる。なんでも、「森の賢者」のいる森はケルトの戦士にもアメリカの兵器にも攻撃されないという。正直大戦張りの特異点でそんな場所があるのかと素直に目を見開いた。


そこが休戦区域なのか不可侵利用域なのかはわからないが、攻撃されないとなれば激戦続きのこの特異点で多少の休憩が取れるだろう。


「よし、そこに行こう!」


迷うことなく即決し、「森の賢者」がいると噂される森に向かった。



―*―



森の中は鬱蒼と木々が生えそろい陽の光を遮り、どこかのホラーゲームの部舞台のような薄気味悪さを醸し出している。唯一の救いと言えば、モンスターが襲ってこないということだろう。


「それにしてもずいぶん歩いたのに、どこにもつきませんね…」


「こうも似たような景色ばかりだと、仮に同じ場所をぐるぐる回っていても気が付かないね。」


疲労感をにじませたマシュの声に頷きを返し冗談交じりでそう告げる。その言葉を聞いていたのか前を歩いていたロビンが立ち止まりこちらを振り返る。その様子にマシュと顔を見合わせて首をかしげる。


「あの、ロビンさん何か…?」


「あー、そのなんというか…」


マシュの問いかけに歯切れの悪い様子で声を出し、視線をさまよわせるロビンにいやな予感がする。いやいやまさかそんなことは…。静かに否定的な意見を上げる脳に申し訳なさそうなロビンの声が聞こえる。


「たぶん、なんっすけど…マスターの言う通り同じところをぐるぐる回ってると、思い…マス…。」


「…。」


「…。」


「…。」


「…まじで?」


「まじで。」


このあとめちゃくちゃ休憩した。



閑話休題



マシュとラーマとナイチンゲールと休憩している間、ロビンたちが何とかこの状況を打開でないかどうかいろいろと試したが、どれも現状を打開することができなかった。一応、ドクターにも頼んでみたが色よい返事は来なかった。


ただ、何らかの魔術による妨害を受けてることは確かで、その原因をどうにかすれば現状を打開できるという。


『まぁ、その原因が何かはまだ特定できてないんだけどね…。』


そういうドクターの声音はひどく沈んでいるが、こちらからしたら大きな進歩である。この後も引き続きドクターたちが原因の特定作業を続けるということなので、今日はもう体を休めることにして現地での原因探索は明日からということになった。


「それじゃあみんな、おやすみ」


「はい、おやすみなさい先輩。」


柔らかく笑うマシュに自身も笑みを返し、体を横たえる。明日にはこの森を抜けられることを祈って。




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緩やかなまどろみの中にいる。今自分が目覚めているのか夢の中にいるのか判別できないようなあいまいな意識の中にいる。薄く開いた視界には限りなく広がる闇と、薄ぼんやりと辺りを照らす橙色の明かりが揺らめく。


自分に背を向けるようにしてその明かりの前に座り込んでいる人物がいる。誰だろうか?僅かに身じろぎをしながらその人物に手を伸ばせば、自分の気配に気づいたのかこちらを振り返る。


その人物はフードを目深に被っており、わずかに持ち上げられた口角しか見ることができない。


「やぁ、人類最後のマスターさん。この森に何の用かな?ここには君の望むモノ聖杯はないと思うけど?」


まるで、どうしてここにいるのか。寄り道も良いところだというようにその人物は問いかける。


用、用ならあるではないか。この森にいるという「森の賢者」に。自分は回らなくなってきた頭を必死に回転させ「森の賢者」を探しているのだとその人物に伝える。


「へぇ…「森の賢者」をねぇ…そいつにあってどうするんだ?


彼に何かを期待しているのならばやめた方がいい。彼にあの狂王様をどうにかする力もアメリカの彼等をどうにかする力も無い。


彼に出来ることと言ったら教え諭し、道を示すことだけだ。」


口元を三日月型に歪ませ、言外に無力なやつだと皮肉げに告げるその人にそれでも、「森の賢者」の力を借りたいのだと告げる。


様々な特異点を経てセイバーオルタのように力を持った英雄に出会った。ジャンヌ・ダルクのように守るための力を持った英雄に出会った。


自分は何も戦う力を持つ英雄に助けられてここまで来た訳では無い。出会った英雄その全てに助けられてここまで来たのだ。


「だから、会ってみたい…」


「森の賢者」という人がどんな人なのか。


つぶやくようにそう告げればその人は、落ちかけていた瞼の上からそっと手を重ねる。手のひらから伝わるじんわりとした暖かさに自分は抵抗することなく瞼を閉じる。


意識が完全に落ち切る前に、その人が何かをつぶやくのを聞いた気がした。





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「―――。―――ぃ――――せ―――ぃ―――ぱい――


先輩!」


揺さぶられる感覚に目を開けば、差し込む眩しい日差しに思わず目を細める。


…日差し?


横たえていた身体を起こし、辺りを見回せば入ってきた当初とはうってかわり、木々の合間からさんさんと陽の光が差し込み、どこ遠くで鳥の囀る音が聞こえる。


「マシュこれは…?」


「それが分からないんです。私も目が覚めたらこのように森が様変わりしていて…」


ドクター達も見張りをしていた人たちもいったいいつこのよう様変わりしたかは分からないそうだ。


「ま、何はともあれ「森の賢者」サマを見つけるにせよ、森を抜けるにせよ動きやすくなったのには変わりねえ。


あんたの準備が出来しだい動くとしますか。」


ぐぐっと伸びをしながら、こちらを見やるロビンにコクリと頷き出発の準備を整え始める。


昨夜見た夢の内容はもう忘れていた。




−*−




支度を整え、森の中をしばらく歩いていると拓けた場所にこじんまりとした小屋を見つけた。


あそこに、「森の賢者」と呼ばれる人が居るのだろうか。


僅かに高鳴った胸の前で握りこぶしを作りながら一歩を踏み出し小屋に近づいていく。一歩、二歩と近づいて行けば不意に小屋のドアが開く。


「やぁ、待っていたよ。」


開かれたドアから姿を表した人物は目深にフードを被っており、緩やかに弧を描いた口元しか見ることは出来なかったが何処か見たことのあるような既視感を抱かせた。


「そんな所で突っ立ってないで入ってきたらどうだ?


なにか話があるだろ?」


その人1人しか入る隙間のなかったかドアを開き招き入れるかのように手招かれる。


その招きに応じて、小屋に入ろうとすればロビンに腕を少し強く引かれる。それに非難の声をあげようとすればそれに被せるようにして彼が口を開く。


「散々森の中を歩き回って疲れきってるんで、入りたいのはやまやまなんですけどねー?


お宅がどこの誰か分かんないとちょおっと入り辛いってもんですわ。」


ロビンの棘の含まれた声音に相手は一瞬きょとんとしてから、再び愉快そうに口元を歪め顔の半分を覆っていたフードをとり、素顔を晒し名前を告げた。


「申し遅れたな、俺は「森の賢者」と呼ばれている−まぁその正体はサーヴァント・キャスター翼だ。」


その言葉を聞いた瞬間その場にいた誰もが呆けた顔を彼に晒していたのだろう。彼はまるで悪戯に成功した子供のように目を細め口角をあげ笑っていたのだから。