ピピピピッピピピピッピピピピッ
「ん、んん〜〜!朝かぁ〜」
6:00 a.m.。忙しい一日が今日も始まる。
母親である彼女の朝は早い。まず起きたらパンツとロングTシャツに着替え、顔を洗い歯を磨く。軽めの身支度をしたら、エプロンをし、先に夫のお弁当のおかずを作る。ご飯を炊いたら玉子焼きとタコさんウインナー、金平ごぼうに野菜炒め。色々な料理を作って大きめの二段のお弁当箱に詰めていく。ミートボールと昨日の夜ご飯の残りの唐揚げも入れたら上の段は完成だ。下の段に入れるご飯は炊き上がったら入れるから、ひとまずはそのままで。そしたら次は全員分の朝食の準備だ。朝は一家全員ご飯派なので、簡単に味噌汁を作り、おかずを作る。ベーコンに目玉焼き、ソーセージを炒めてプチトマト入りのサラダも作る。ベーコンとソーセージをひっくり返していると長女がリビングへやってきた。
「津美紀おはよう〜!」
「お母さんおはようっ」
「はいおはよう!顔洗って歯磨いておいで〜」
「はーい」
長女を洗面所へ送り出し、出来たおかずを人数分のプレートへ盛り付けていく。夫は多めに、長女と長男のは少し少なめに。次女はまだ三歳なので、少し薄目の味付けにしてあるものを専用のプレートへ盛り付ける。
「わぁー!おいしそう!お手伝いすることある?」
「ありがとう津美紀!じゃあみんなを起こしてきてくれる?」
「はーい!」
長女、もとい津美紀にみんなを任せ、ダイニングテーブルにプレートを置いていく。誕生日席に津美紀、そこから右回りに甚爾くん、せら、恵、私。恵とせらは子供椅子で、津美紀は小学生になるからと最近卒業した。
箸を並べみんなのご飯をよそっていく。
「おかあさんおはよう」「はよ」「……スピー」
「おはよう!あれ、せらまだ寝てる?」
「あぁ全然起きねぇ」
「そっかそっか笑せらー!ご飯出来てるよ〜みんなで食べよう?」
「んん、おはょぅ……ごはん……」
「ありゃりゃ、甚爾くん顔洗って起こしてあげて」
「はぁ、せら、起きろ」
「んんー、、もうちょっと……」
「だめだ、飯が冷める」
「せら、おにいちゃんとかおあらおう」
「ごはん……あらう……」
甚爾くんがせらを抱っこしたまま三人で洗面所へ向かっていく。まだ少し寝ぼけているが、顔洗って歯磨きしたらスッキリするだろう。
津美紀にご飯をよそった茶碗を渡し、机に並べてもらう。
「お手伝いありがとう!座って待ってようか」
「えへへ!うん!」
「今日はどんな服着てく?」
「えっとね、水色のワンピース!」
「いいねいいね!じゃあ上に白のカーディガン羽織ろっか!」
「うん!それとね、このまえお母さんがかってくれたゴムつけていきたい!」
「いいよー!気に入ってくれたの?」
「とーーってもお気に入りだよ!がっこうにはつけていったことないからちょっとドキドキだけど……」
「そっかそれは良かった!じゃあご飯食べて着替えたら髪結ぼう!」
「うん!ありがとうお母さん!」
「どういたしまして!」
「おかあさんおねえちゃんおはよう!」
「おはよう〜!」
「せら、はみがいてるときにねぼけて、おとうさんのふくにペってしてた」
「ブフッ」
「やりやがったこいつ……」
「せら……フフッ……お父さんにごめんなさいした?……ククッ」
「あ!おとうさんごめんね!」
「はぁ、ああ」
「フフッ……ふぅ、よし!じゃあいただきますしましょ!」
「「「いただきます!」」」「「いただきます」」
「そーせーじおいしいね!」
「そう?ありがとう!ゆっくり食べてね〜」
「うん!」
朝はあまり時間は無いけど、朝食はできるだけゆっくりする。やっぱり食事はみんなで笑顔で!これが一番だから。
「「「ごちそうさまでした!」」」「「ごちそうさまでした」」
「わたしおさらさげるの手伝う!」
「ありがとう!じゃあこれお願いします!」
「分かった!」
「甚爾くん二人連れてって歯磨きさせてー!」
「あぁ」
「せら、次は……ふふっ……お父さんのお服に……くっ……ペってしちゃ駄目だよ?……んぐっ」
「わかった!」
「おかあさん、ぼくがペってしていい?」
「あははっっ!……駄目……だめだよ……くくっ……ブフッ……ヒィッ」
「……」
「やめて……ふっ、ふふっ……甚爾くん、見ないでっ……ねぇっ……アハハハッ!!」
「おかあさんどうしちゃったの?」
「ツボに入ってんな」
「つぼってはいれるの?」
「うっ……やめて……それ以上はやめて……もう無理だって……ハハハッ!……く、うっふふっ……」
「津美紀、何とかしとけ、行くぞ」
「も〜、ほらお母さん!もどってきてー!」
数分、伏黒家の母は使い物にならなかった。
落ち着いてから津美紀の髪を結び、甚爾くんと恵とせらのお弁当箱にご飯を詰め、冷ましてから箸と一緒に袋に入れる。甚爾くんと二人が戻ってきたら入れ替わりで私と津美紀が歯を磨く。
リビングへ戻り、二人が見ているテレビに表記された時刻は七時四十五分。そろそろ津美紀と甚爾くんが家を出る時間だ。
「甚爾くん、これお弁当!」
「あぁ助かる」
「「いってらっしゃい!」」「いってらっしゃい」
「行ってきまーす!」「行ってくる」
玄関でお見送りをしたら中へ戻る。さて、幼稚園へ向かうまでのタイムリミットはあと三十分。テキパキとやることをやれば少し時間が余るかもしれない。
まずは朝食の食器の洗い物。家族が増えてからは食洗機を奮発して甚爾くんに買ってもらったのだけど、この子がもう、ほんっとに素晴らしい。この子で洗えないのはフライパンや炊飯器とかの大きすぎるものと、食洗機に入れられないプラスチック製のものだけで、お皿からなんでも、少し汚れが取れずらくても問題なし!ピカピカに洗ってくれる。もう本当に優秀だわ。
そしたらその間にちゃちゃっと残った洗い物をして、テーブルを拭く。その間も二人は大人しくテレビを見てくれていて、感謝しかない。
寝室へ行き、タンスから二人の肌着と制服、靴下を取り出してリビングへ戻る。
「二人とも!先に制服に着替えよっか!」
「はーい!」「わかった」
「せらバンザーイして〜」
「ばんざーい!」
「上手上手!よし、そしたらズボンも脱ごう!お母さんの肩捕まる?」
「うん……できた!」
「えらいえらい!じゃあこれ履こっか!」
裏表は反対になってしまったけど自分で脱げるようになってきたのは大きな進歩だ。
「おかあさんできた」
「わぁ恵お着替え速くなったね!凄いね〜!!」
「……うん」
「いい子いい子!じゃあちょっと髪の毛綺麗にしよっか!二人ともここで待っててくれる?」
「「はーい」」
洗面所から日焼け止めと櫛、せらの髪ゴムを取り、戻って先に日焼け止めを塗る。
「じゃあ恵からね〜……はいおっけい!次は髪をとかします〜……よし完了!OKだよ〜」
「ありがとう」
「どういたしまして!次せらさん〜」
「はい!……ひゃっ!つめたーい!」
「そうね〜、ちょっと冷たいね!……はい終わり!じゃあ髪結ぼっか!髪ゴムどっちがいい?あ、お姉ちゃんはこっちつけていったよ!」
「おねえちゃんとおそろいがいい!」
「分かりました!……はいできたよ〜」
「わぁー!かわいい!おかあさんありがとう!」
「いえいえ!じゃあお母さん準備してくるからテレビ見ててー!」
「うん」「わかったー!」
日焼け止めと櫛、使わなかった髪ゴムを戻し、二人の幼稚園の準備をする。リュックには着替えと歯磨きセット、連絡ノートを入れお弁当も入れる。上の制服のポケットにハンカチとティッシュを入れ、帽子とリュックと一緒に玄関へ置いておく。自分の鞄に財布と携帯、鍵等諸々入れて机に置き、腕時計をつけて時間を確認すると八時十五分を指していた。そんなに時間残らなかったか、残念。
「準備できたよー!何見てたの?」
「あんぱんまんだよ!」
「おお!いいね!」
「もうちょっとでおわるよ」
「そっか!じゃあアンパンマン見終わったら幼稚園行こうか!」
「「はーい」」
そのまま三人でアンパンマンを見終えて、マーチを歌いながら家を出る。二人を後部座席のチャイルドシートに乗せてシートベルトをし、助手席にみんなの荷物を置いたら運転席に乗り込み出発だ。せらの「しゅっぱちゅしんこー!」という舌足らずな可愛い合図でアクセルを踏み込んだ。
ここから幼稚園までは車で十五分。今日は幼稚園に行ったらどんな事をするとか、おやつはあれがいいとか、少し話していれば目の前にはもう幼稚園だ。
駐車場に車を停め後部座席から二人を降ろし、助手席のリュックを背負わせて、幼稚園の中へ送る。
「伏黒さんママおはようございます!恵くんとせらちゃんもおはよう!」
「先生おはようございます!」「「おはようございます」」
「今日はよく晴れて気持ちがいいですね!」
「はい!やっぱり春っていいですね〜」
「分かります!子供達も桜の花びらに夢中で!あ、そうだ!実は今日、みんなで桜の花びらを使った作品作りをするんです!出来たらお家に持って帰れるのでお母さんも楽しみにしててくださいね!」
「わぁ!とっても楽しみにしてます!」
「はい!それじゃあ二人とも行こっか!」
「うん!」「うん」
「よろしくお願いします!じゃあまたね!いっぱい遊んでおいで!」
「おかあさんばいばい!」「いってきます」
「はい!いってらっしゃい〜」
二人を送り出し、見えなくなったら車へ戻る。さあ今からは買い出しと家事だ!
スーパーへ着いたら、食材をささっと選んでカゴへ入れていく。余計なものは買わないように決めているものだけ見ることが大事だ。選び終わったらすぐレジへ。朝はとても人が多いわけでもないからそこまで待たずに会計ができる。会計が終われば食材をエコバッグへ詰め、カゴを戻す。これで買い出しは完了だ。次はいざ自宅へ!
帰宅し、手洗いうがいを済ませたら取り敢えず洗濯物をぱぱっとまわし、リビングへ移動する。ハンドバッグとエコバッグの中身をそれぞれ片付けたら、水気のきれた食器を棚にしまって行く。そしたら次は重要な掃除だ!負担にしない為にも細かく気にしすぎず、簡単にやっていく。チェストなどの埃をササッと落とし、掃除機をかける。この前長年使っていた掃除機が壊れてしまい、いい機会だと思い前から気になっていたコードレスの掃除機を甚爾くんにお願いをして買ってもらったのだ。お願いなんて滅多にしないから少し緊張したんだけど言えて良かった!いつも掃除機をかける時、地味にコードが届かなくて家全体にかける時に何度もコンセントにさし直していたのだが、この掃除機はそれが無い!とても楽だし時間短縮にもなる。昨日届いたばかりで明日使おうとワクワクして寝たのだが、もう最高だ。甚爾くん帰ってきたらお礼言わないとな。
いつもより早く掃除を終わらせて全員の布団をベランダに干す。我が家はみんなお日様に当てられた布団が大好きなので、出来るだけ毎日干している。その代わり干す時は早めの時間に短めに。傷んでしまっては元も子も無いのでね!丁度干し終わったタイミングで洗濯機が止まり、洗濯物を取り出してベランダに干していく。天気も良くて、幼稚園の先生の言う通り気持ちがいい。鼻歌交じりに全部欲し終えて部屋へ戻る。カゴを洗面所へ戻し、水周りの掃除をささっと終わらせたら家事は一旦終了!昼食は簡単にパスタを茹でお皿に盛り、温めるだけのミートソースをかけたら完成だ。一人分だからそこまで時間もかからず洗い物も出ないから楽チンだけど、やっぱり一人は寂しいなぁ〜。
料理をテーブルへ置き、テレビをつける。食事中にはテレビをつけない家庭もあるだろうが、我が家は自由だ。今は一人だし静かで余計に寂しいしね。
テレビのワイドショーをぼーっと見ながらパスタを平らげ、食器を洗って水切りカゴにかける。干していた布団を取り込み、寝室と津美紀の部屋へ持っていき、畳んだ所でふうっと息をつく。リビングへ戻り、テレビを見ると時刻は十一時過ぎ。ここからは自由タイムだ。テレビを消し、寝室の本棚からこの前本屋で気になって買った文庫本を取り出し、リビングへ戻りテレビ前のソファに腰掛ける。あ、この前、前のアパートの大家さんがくれた紅茶飲もう!
本をローテーブルに置き、やかんでお湯を沸かす。色んな種類の入ったパックを貰ったのでどれにしようか悩み、ピーチティーにすることにした。沸騰したお湯とティーバックをティーポットに入れ、甚爾くんからもらった高そうなティーカップセットを棚から取り出し、二つをお盆に乗せてローテーブルに置く。突然プレゼントしてくれたティーカップセット、今までずっと使う機会がなくて二三度しか使ったことがなかったけど、これから沢山使えそうだ。そうこうしてると紅茶のが出来上がっていた。ポットからカップに移し入れ、ソーサーに置く。なんだかちょっと優雅なティータイムみたいでテンションが上がるなぁ。午後ではないけど。
夢中になって本を見ていたらいつの間にか時計は十三時四十五分を指していた。そろそろ二人を迎えに行く時間だ。思ったよりも時間が過ぎるのが早くて、今気づけて良かった……。ティーポットもティーカップももう底をついていたので洗って水切りカゴへ。本を本棚に戻し、荷物を詰めたハンドバッグを持って家の鍵を締める。腕時計さんによると時刻は十四時!丁度いい時間だ。車に乗り、今日はどんな話をしてくれるのかと楽しみにしながら幼稚園へ向かった。