火車編 壱
「まあ言わずもがな。君たちは半妖と死者の魂が集まって生まれるがしゃどくろ」とある休日。雪はクジで決めた参組の買い出し班の一員として、文化祭の買い出しきていた。佐野らと一足先に百鬼学園島駅に到着する。
「狢たち今寮出たって」
「間に合うかなぁ」
入道のスマホをちらりと覗いて雪がぽつりとこぼした。早めに着いた四人とは対照的に、狢らはゆっくり出発のようだ。流石に電車には間に合うだろうが、多分ぎりぎりの到着だろう。
「つーか、なんでアイツもいるのさ」
「いいじゃない、俺だって参組の副担任なんだから。期間限定だけど」
恵比寿と佐野の会話を横耳で聞いていると晴明が現れる。雪が挨拶をしてそれぞれが顔を上げた。さらさらと紫色の髪が揺れている。タタンタタン、とトンネルの奥から電車の音が聞こえるなかで晴明と恵比寿は百鬼学園島の路線マップを確認した。
「にしてもこの島、電車は知ってたんだね」
「ね。僕も初めて乗るよ〜海岸を沿って走ってるみたい」
「モール前駅は結構きれいなんだよ〜!」
――モール前の喫茶店、パパとよく行くんだ〜。ひょこっと二人の後ろから顔を出した雪が声を出す。そこのパンケーキがお気に入りらしい。二枚重ねのパンケーキは上にバターが乗っていてメープルシロップが絶品らしい。どこのパンケーキもそんなものだが、雪にとっては特別のようだ。そしてそれは父との思い出が詰まっていることが「お気に入り」の大半であるが当の本人は無自覚である。そして、モール前駅の話からパンケーキに話がずれていっていることも気が付いていない。そんな雪を見て晴明は微笑ましそうに「じゃあ買い物の後にパンケーキ食べに行こうよ!」と提案した。恵比寿は嬉しそうにはしゃぐ雪を観察している。にっこにこの笑顔と白い肌、華奢な体、赤い瞳、紫色の髪――
「……蘆屋さんのお父さんって――」
『マモナク壱番線ニ……電車……参……マス……』
ザザ……というがさついた音とともにアナウンスが流れる。時刻表記載の時刻からは十分以上早い。
「えっ!?もう!?」
『黄色イ線……内側マデ……オ下ガリクダサイ』
「しょうがない、もう先に行っちゃおうか」
急いで改札をくぐればちちょうど電車が到着した。古い車両だった。前面の三枚窓に行先表示板はアナログである。雪らは気にせず乗り込んでいるが、晴明は本土の電車との違いに関心を示していた。恵比寿はやけに妙な気配を感じる電車に首を傾げた。
『扉……ガ閉マリマス……ゴ注意クダサイ……』
「わーッちょい待ち!!」
っぶねー!!!と、電車に駆け込む男が一人。息を切らしながら駆け込み乗車をしてきたのは、秦中だった。ベビー用品等の買い足しに行くらしい。雪だけがおめでとう〜と反応していた。
「なら車使えばいいのに」
「この人、仮免の学科で十五回落ちてるから」
マシュマロですら三回で取れたというのに、なんと情けないことだろうか。先ほど、めでたい〜!と笑っていた雪もポカンと口を開けている。
「「今後受かったとしてもそんなに落ちた奴の車に乗りたくないね(ねーな)」」
「ハモった」
佐野が心の中で思っている言葉が空間に音として落ちる。発言は佐野ではなく雪である。長袖
二ッとセーター
カーディガン
シャツ
ノースリーブワンピース
秋分の日、お盆、灯篭流し