「優しさに包まれたら」

「枢、どうしたんだ?そんな顔して」

名前は覗き込むようにカウチに座る彼の顔色を伺う。

そのときの彼の顔色は悪く、不健康そうである。
やはりここ数日の元老院からの書類などの整理に追われていたせいだろう。

あまり寝ている様子も見られない___。

「これくらい大丈夫だから、君はこれから授業だろう?早く行かないと・・・」

そう急かすように言う枢はふらりと倒れ、カウチに横になる形となる。

「枢、無理するな・・・・・・今日は授業を休む。勿論お前もだ」

「僕のことは気にしないで・・・「あぁもう、俺とお前は友だろう?友を心配しては駄目だろうか?」」

心配そうに見つめる名前に観念したのか、枢は微かにこくりと頷く。

これは傍にいても良いということだろう。

「ごめん・・・休憩したらすぐ良くなると思ったんだけど・・・」
「ん、純血種だろうと体の本質は変わらない。無理をすれば疲れるのは誰だってそうだ。

まだ残ってる分は俺が処理をするから、ベッドで休むと良い」

枢に肩を貸し歩くのを手伝ってやる。そうして何とかベッドまで辿り着いた彼はその中に身を沈める。

「ありがとう名前。何かこんなこと昔もあったね」

「いや・・・あーそういえば、お前は昔から無理ばっかしてたよなぁ。

あの時は風邪を引いて、樹里さん達が『初めての風邪記念☆』とか言って風邪に寝込むお前の写真を撮ってたな」

あの時の情景を思い出したのか名前は僕に背を向けるように堪えるようにして肩を震わせていた。

確かにあの時は酷い目にあったけれど___妹の面倒に手馴れていた彼は、写真を撮ってはしゃぐ両親を追い出し看病をしてくれた。

風邪で寝込んでても覚えてる微かな暖かい手の記憶。

それと同じ手が僕の頬に触れる。
それに安心したように枢はまどろみの中に意識を委ねるのだった。

「なんだか、弟が出来た気分だな・・・」