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01
私は3年前に挙式をあげた。
相手は、職場で偶然知り合ったマクギリス。
彼は紳士でかっこよく、人の気持ちに気づくのが早かったり、気遣いに長けていて……───等、魅力的なところが多すぎて数え切れない。
「アーネ。夕食はまだだろうか?お腹が空いてしまったよ」
呟きながら料理を作っている私のところにやって来て、彼は隣に並んだ。
「もうちょっとで出来るよ。待ってて」
「俺にも何か出来ることは?」
「ううん、大丈夫。マッキーは待ってて」
「そうか。では待たせてもらおうかな」
そう言うと私の頬にちゅっとキスを落としてから、彼は立ち去っていった。
お互いの呼び名は恋人だった頃からそのままだった。
結婚してからも変わらないところが、私たちらしいかなって2人で決めたのを思い出す。
そんなことを考えてるうちに簡単ながらご飯が出来上がったので、テーブルに一つ一つ綺麗に並べていく。
なんとなく、綺麗に並べないと食べるものが美味しく見えなくなる気がして嫌で。
「マッキー!ご飯できたよ」
マクギリスが居るであろう2階に向かって階段から声を張り上げる。
しかし後ろから「すぐに行く」と声がして、驚いて振り向くと、彼は「こっち」と呟いた。
「そっちに居たの?静かだったね?」
「少し本を読んでいた」
「またその本?好きだね」
「ああ、どことなく憧れる話だ」
そんな他愛もない会話をしながら食卓の席につく。
「とても美味しそうだ、いただきます」
彼はいつも、私の決して美味しいとは言えない料理でも「美味しい」と言って食べてくれる。私が焼く時間を間違えて焦がしてしまった料理だって笑顔で食べてくれた。
ご飯の時間は、2人にとって大切な、幸せな時間だ。
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私が家事もお風呂もすべて終えて、有意義な時間を過ごしているときだった。
日頃あったことを書き留めておきたくて、今ではもう習慣になった日記を、自分の机で書いていた。
いつもなら全く眠くない午後10時───。
今日はすごく眠かった。
ウトウトしては目を覚まし、ウトウトしては目を覚まし、の繰り返し。
日記帳の紙にシャーペンが触れ、薄い線が何本が描かれてしまっていた。
「なんなの、もう……」
そして、気づかぬうちに私は深い眠りについていた───。