■ ■ ■
02
「ここはどこ?」
気がつくとどこかの建物内にいた。
大きな窓ガラスに囲まれた廊下は長く、いくつも扉がある。窓の向こうの景色は一面真っ青な海で、既に陽は傾き始めている。
この通路に人が通るのは……5分に2、3人ペース。
どんだけ通らないのだろう……と思いながら少しだけ歩みを進めると、あることに気がつく。
通り過ぎる人は皆同じような服装で、違うところといえば、色だったり肩の装飾の柄だったり、胸元の部分の作りくらいだった。
何かの制服?と思ったが、見覚えは全くない。
そんなことを思いながらどうしようかと立ち尽くしていると、誰かと肩がぶつかり、何故か逆上した相手の男に腕を掴まれた。
掴まれた痛みに動揺しながらも、思った以上に強い力に身動きが取れない私はされるがまま。
「ちょっと!やめてください!!」
声をめいっぱい張り上げた途端、私の腕を引っ張った人の動きが止まった。
「なんだ?上官に逆らうつもりか?」
上官?
何を言っているのか理解が追いつかぬまま、ふと目に入ったのは男のもう片方の腕。その手は今にも私の身体に触ろうと、こちらへ伸びている。
………ちょっと待って。これって、危ないパターンじゃない?
このまま拉致……なども考えられなくも無い。そう思ったときだった。
私の腕を掴んでいた男の腕が、離れた。
###
「大丈夫か?」
同時にさっきの人とは違う人の声がし、反射的にその人から離れた。
「……大丈夫、だと思います」
正直のところ引っ張られた腕は痛むが、こんなところで迷惑をかけるわけにはいかない。
「見せてみろ」
男の人は私の腕に触れる。
そのとき、初めて私はその人の顔を見た。
「マッキー!!!」
「ん?」
「……あ」
くちにしてからしまったと思った。……彼は私のことを知らない。
「すみません……知り合いに、似てたので……」
「何故、その呼び名を……」
やっぱり。目の前の美丈夫は目を丸くして私を見た。
「どこでその呼び名を?」
「え……」
貴方の嫁で、そうやって呼んでます。とはさすがに言えそうもなかった。言ったところで不審がられるだけだろう。
「……すみません、人違いかなと。本当に申し訳ありません!」
普通なら不思議な顔をするはずなのに、彼は目を細めて笑った。
「構わない。それより腕が」
「腕……?いたっ、」
「腫れているようだな」
言われて気づいた。
強く掴まれたところがどうやら腫れているようで、触れると重い痛みがはしる。
「来い」
訳も分からぬまま、私はマクギリス(に酷似している人物)に引っ張られるようにして歩き出した。