もう働き手はなくなった。
そう、つまり流行りのリストラ。
この不景気のせい。
決して業績が目立つように悪かったわけではない。何となく気付いたら、皆の中で最下位だったってゆう。(これは決して、ミントくさい記者の真似ではない。)
でもこんなのただの言い訳。言われなくたって、そんなことくらい知っている。でも、こんな逆境、言い訳しなきゃやってられない、と正直思う。鋼みたいに強くない、マシュマロの心が悲鳴を上げっぱなし。
私は、暖かい昼過ぎに冷たすぎる「(実質的)解雇」の言葉(退職金が良いから、今が潮時だよというやつ)を頂いて重い心と足を引きずってようやく二時過ぎに帰宅。
お昼なんて食べてない。というか、そんな精神的余裕なんてなかった。
しかし身体は、精神的理由なんて関係なしにやるべきことをやるらしく、家に帰るころにはお腹がぎゅーぎゅるぎゅーぎゅる鳴りっぱなしだった。
遅いお昼ご飯だ、と思いながら開けた一人暮らし用にちょうどいいサイズの冷蔵庫には、粉チーズやポン酢などの要冷蔵調味料。
主食は、見当たらない。
いつも安いときに買い溜めしている、カップラーメンたちもそこに姿はなかった。
もしものときの、かろりーめいとなんて私が用意してるはずもない。
缶詰めは、鉄臭くて嫌いだから買っていない。
あとは。
あとは、何がある?
頭の中で、ぐるぐると食べられる物が何処かに無かったか考えるも、頭の中まで空っぽになるばかり。
今の自分のいる状況が少しずつ深刻なものだと分かり始めてきた。
正直、想像以上、かも知れない。
いや、まだだ。
まだ、あわてる時間じゃない、なんて自分を落ち着かせながら、バッグから財布を取り出す。私には、心強い紙と金属があるじゃないか。文明的な紙と金属が。
「…93、円、って、待ってよ…」
百円均一にも行けないのかよ、と独りごちるが意味もない。私に残された食料は、マヨネーズと塩コショウ、醤油、ポン酢、粉チーズくらいだろう。死ぬ気になればサバイバル、そんな感じで生きられそうだったが、贅沢な私の脳味噌は、もっと別の想像をし始める。
あいつだ。
携帯電話に飛びついた。