「ああ、もうはむはむはむほーすけくん!はむはむありがはむはむはむとう!」

「ごめん、全然聞き取れないから食べるかどっちかにして」

「はむはむはむはむはむはむはむはむ」

「…(食べる、を選びやがった)」

「ごっくん。うあー、ほんともう幸せでした!ほんとありがと、ほーすけくん!!」

「いいえいいえ」


私が泣きついたのは、他でもない、昔からのお友達(いわゆる幼馴染)である、おどろきほーすけ。何とも不思議な名前ではあるが、もう慣れてしまった。彼も今は、そんなに気にしていないみたいだ。

ちらりと彼を見れば、いつもの前髪をぴょんとさせて、水の入ったプラスチックを握っている。

「ほーすけくん、お変わりないようで」

「それって、喜んでいいのかな」

「うん、褒めてる。変わってなくて良かった」

「…まあ三ヶ月前に会ったばっかりだしね」

「まあね。でもほら、仕事に就いてさ、変わっちゃってたらどうしようかと思ってたの」仕事っていうのは、彼の弁護士業のこと。

「ああ、たとえば?」

「ほら、紫色とかの派手なスーツとか着てたら、それこそ絶望しちゃってたかな」

「…オレはそんなもの着ないけどね。誰かさんと違って」

「なら良かった!」

私も、すりガラスみたいなプラスチックを握る。まだまだ残っているご飯を、幸せを感じながら見つめる。それから、彼を見つめる。


「…あのほーすけくんがねえ、弁護士先生、だなんてね…」

「なんだよ、それ」

「あー、いやいや。凄いなって思ってさ」

「そう?オレ、かなり前から弁護士になりたいって言ってたから、驚かないと思ったけど」

「まさか受かっちゃうとは思ってもみなかったからね!今更だけど、おめでとー」

「…褒められてると思っとくよ」

苦笑したほーすけくんは、「他になにか頼む?」と優しくも訊いてくれた。
それなりに満足した私は、大丈夫だと答えた。

「じゃあ、ほら、これ」

そう言って彼は、彼のお財布から五千円札を取り出した。

「節約して使いなよ」

「か、かみさま!!!!」

何度もお礼を言って、その五千円札を大事に財布にしまって抱きしめた。

「このご恩は、」「あ!!!」
深々と頭を下げたら、大声と重なった。


「なに?財布でも落とした?」

「そんなわけないだろ!今、もふこちゃんに五千円札渡したばっかりなんだから!」

「ああそっか。じゃ、なに?」

「もしかしたら携帯失くしたかも…」

「えー!そりゃ困った!」

「ちょっとオレ、店内探してくるね」

「うん、わかった!私、この牛丼特盛りを全部食したら加勢するから、それまでは頑張って!」

「…え、あ、うん…」

そうして私は、焦くりまわるほーすけくんを尻目に、牛丼を頑張って平らげることに専念することにした。




 


-Suichu Moratorium-