今日はハロウィンよ、とアンジーが教えてくれたお陰でありったけのお菓子をポケットに詰め込めた。
歩くたびにカサカサと音が鳴る。
両手に持ったドリルやノート、シャーペンが落ちそうで、落ちてしまったキャンディを拾うのは諦めた。
きっと、誰かが食べるだろう。
うん、きっと……。


「「ヘイ!アキカ!Trick or Treat!!」」
「君にはどんな悪戯が似合うか」
「考えてたら、眠れなかったぜ」

談話室に入ると、期待に満ちた顔で双子が飛んできた。
片っ端からここで巻き上げたり、悪戯したりしてるのだろう。
その口の周りは、お菓子の食べかすでベトベトだ。

いつもはやられっぱなしの私も、今日はアンジーのお陰でびっくりさせられる!
手近にあったテーブルへドリルなどを置き、抑えきれない笑いを浮かべる。

「ふふ、お二人さん。甘くて美味しい飴ちゃんはいかが?」

勢いよくポケットの中から掴めるだけ掴んで引き抜く。
ポロポロと零れ落ちるのも、二人の掌に転がるのも、細かく苺の絵が書かれた飴ちゃん。
昔から変わらないその三角の形をした飴は私の大好物。

「えーーー。持ってるのかよ」
「君にはオカリナになってもらおうと決めてたのに!」

「あはは!ジョージ、素の声が出てるわよ!!」

飴ちゃんを眺めつつ、大げさに肩を落とすジョージ。
ニヤニヤと笑うフレッド。

「え…?」
「アキカ、今なんて呼んだ?」


真顔で詰めてくる二人が怖い!


「え?え、ガッカリしたのがジョージじゃないの?ごめん!」

どうしよう!
なんとなく、そうかなって自信あったのに…
まだ見分けるなんて出来ないんだ。





すぅ、






やばい!
怒鳴られる!




「「どうしてわかったんだい!?!?」」





身構えたのに、ジョージはきょとん顔のまま。
フレッドは嬉しそうに、理由!理由!と急かしてくる。

「合ってたの?なんだぁ、もう。……リアクション、の違いかなぁ?」


「アキカ、そんなに僕が好きか!」

火薬と泥の匂い、だ。
と思うやいなや、私の顔は鍛えられた硬い胸板に埋まっていた。

「ぎゃあ!」

ハグ習慣なんてない日本人には刺激的すぎる!
仲良くしてるとはいえ、異性だし、

なによりこのイケメンの胸に居るのは心臓に悪過ぎる。
破裂するんじゃないかと思うほど、激しく脈打つ心臓。
鏡を見なくても分かる。
私、今、顔真っ赤だ。

「フレッド!離してよぉぉぉぉ!!」

じたばたと暴れる私が面白いのか、フレッドの笑い声がダイレクトに響く。
それなのに、腕の力は弱まらず、決して私を逃がしてはくれない。

「フレッド!やめろよ、アキカが嫌がってる」

きつく抱きしめる腕を剥がしてくれたのは、相棒のジョージ。


あ、2度目。
さりげなく自分の後ろに私を隠してくれるのも。
あの、険しい顔も。

「おいおい、相棒。僕は嬉しさを表現しただけだぜ?」

「フレッド、お前はいつも考えなしなんだよ。アキカが可哀想だろ」

「相棒、いつも言ってるだろ?お前は固っ苦しいんだよ。お兄ちゃんは悲しいぜ」


「ジョ、ジョージ?私、恥ずかしかっただけで、」

「アキカは黙ってて」



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