なんなの、この9と3/4番線って。
飛行機と地下鉄を乗り継ぎながらやっと着いたキングスクロス駅。
飛行機を外から眺めるのではなく、中に乗るのは初めてでちょっと緊張したし、機内食は意外と美味しかった。
お尻と頭を痛くしながらも、やっと着いたから安心だと思ったらこれだ。
周りを見渡しても、まあ当然マグルしかいない。
魔法使いがいてもマグルの格好をしてるだろうから、イギリスに疎い私に見分けがつくわけない。
『ありえないありえないありえない!なんでこんなに適当な案内なの!?……うわ!』
9番線に着いた電車に八つ当たりの様に怒鳴りつけていると、結構強く後ろからぶつかられた。
思いっきり振り向きながら怒鳴る声は尻すぼみしていく。
だって、だって。
振り向いたら燃えるような赤毛と、王子かと思う程整った顔が目いっぱいに広がったから。
「あー……その、ごめん」
勢いよく離れた王子は、若干顔を赤らめながら小さく謝ってきた。
ああ、そうか、英語じゃないといけないのか。
「いえ、大丈夫です。お怪我は?」
「問題なしさ!本当にごめん。えっと、何をしてたんだい?」
人の良さそうな笑顔で投げられた質問に言葉が詰まる。
迷ってましたって言ったら、9と3/4番線の話をしなきゃだし。
9番線で電車を待ってましただと、全く違う電車に乗らなくてはいけない。
クシャ……
知らず知らずのうちに力を入れていたらしく、手の中で紙が音を出した。
「ん?9と3/4番線?」
日本語で書かれた中で唯一理解出来た部分なんだろう。
一番反応して欲しくない所に反応された。
「や、これは、その……」
ああ。
これで変人確定。
折角の目の保養に変人って思われる。
穴があったら入りたい……。
「兄弟が新入生なのかい?場所を教えてくれる人は一緒じゃないのか?」
「そう、一緒じゃない……ん……で……す……?」
あ、れ?
場所を教えてくれる人はって言った?
ない場所を探してる変人って思わないの?
「大丈夫、僕はマグルじゃないから」
混乱が顔に出てたのだろう。
悪戯っ子な笑顔で今欲しい的確な答えをくれた。
「ああ、よかった!ここまでは来れたんですが、迷子になってて!」
「それなら、9番線と10番線の間の柱を抜ければいいんだ」
軽く笑いながら指さした所には、小さくだが王子と同じく赤毛の団体がいるのが見えた。
「フレッド!早く来なさい!」
多分お母さんと思われる女性が王子を呼ぶ。
フレッドっていうんだ。
王子改めフレッドさんを見ると苦笑しながら、じゃあね。と走り去ってしまった。
なんて爽やかなんだ……。
フレッドさんたちが消えた後は黒髪の子も同じ様に消えて行った。
正直、柱にぶつかっていくなんてしたくないけど、他に方法は無い。
『ええい、ままよ!』
お父様の口癖を呟きながら、思いっきりぶつかっていく。
目をつぶり衝撃に備えてみるが何事もない。
先ほどより音が溢れてる……?
そっと目を開けると、そこは全くの別世界だった。
機関車が止まっていたり、ローブを着てる魔法使いが家族との別れを惜しんでいたり、学友との再開を喜んでいる声も聞こえる。
マホウトコロとは大分雰囲気が違うが、魔法界だと実感する。
遂に来た。
息を大きく吸い込み、ゆっくりと歩き始めた。
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