かみさまみたいな
――親不孝者な末娘であったとは、自分でも思っている。悪夢を見たとかいう、そんな薄ぼんやりとしたたったひとつの原因だけで、わたしは家の中に引きこもって、誰にも会いたくないなんて宣って、病んで、なにもかも放り出したくなって――その通り、元に戻るように頑張ることすら辞めてしまった。
実家である巴家は、やや落ち目ではあれどかなり規模の大きい財閥であり、二人いる兄のうち長兄が家を継ぐことになっていた。表舞台に出てこないわたしのことを面白半分に嫌な噂として消費するひとたちの中にあって、真ん中の兄――日和お兄ちゃんは、それをひどく奔放な立ち居振る舞いでもって崩したり、しっかりと閉まったまま母すら開けることのないわたしの部屋に入ってきたり――面白がっていたのか、あるいは「兄」としての役割を担おうとしていたのかは、定かではない。アイドル雑誌を一緒に覗き込んだこともあるし、もしかしたら暇だっただけなのかも。
――ただ。『衛藤昂輝』――彼と出会ったのは、お兄ちゃんが買ってきた雑誌の中でのことだった。その時はまだジュニアだったから、デビューしたひとたちと同じように大きく扱われることはなかったけれど――美しい、とおもった。大輪の花のような鮮やかなものではない、ただ、ささやかな花の咲いた境内のような雰囲気さえ滲ませて、彼はそのページに顔を載せている。するりとそのすがたを人差し指で撫でつけたわたしの手が、ばかみたいに震えて――わたしの名前を呼んで首を傾げるお兄ちゃんに返事をすることも忘れてしまった。