ティッシュ
それから暫く暮らしてみたが、程よく暮らせる事に驚く。意外と順応性高いじゃん私。
ここまでで決まった事は多数ある。最もメインは料理だ。新開君の腕試しにある日曜適当に昼を作ってもらったら、斬新な料理が出来上がった。食べれなくはないが正直これを食べるのであったら私が作りたいので基本が私となった。というよりも先に新開君が卵を持って電子レンジに入れたのを止めていた時から決意していた。
あと注意したのは、電気の付けっ放しや使用したタオルの置きっ放し等の小姑ちっくな事だ。
「新開君次どうぞ」
脱衣所から頭を拭きながら新開君に声をかける。風呂の順番は、一応部屋主の私が先だ。
「なぁ、おめさん"新開君"をやめてくれないか?」
「え、何で?」
「こう、距離感が」
「問題ないでしょ?」
「まぁ、そうだな」
時々不思議な事を言う新開君だ。服だかを持って立ち上がる新開君に声をかける。
「あ、そうだ。悪いんだけど少しTVで録画したやつ見たいの」
そう金曜だから少しくらい自由にしたい。TV配線がどうしても新開君部屋なので、必然的にそこで見ることになる。その為一応許可をもらう私。当たり前だけど新開君は断らない。
一応ヘッドホンをつけて、大きなビーズクッションにもたれかかりながら録画してあったドラマを見始める。
TVを見ているとシャワーだか風呂だか入って髪が濡れたままの新開君が出てきた。ので手元で使っていたドライヤーを新開君に無言で手渡す。
ヘッドホンをしているのでドライヤーの音は聞こえなく自分の世界に入れる。
…ああ、やっぱりそうなったか…ドラマの内容が涙もんな上に演出良すぎで、思わず溢れる涙。
あ、ティッシュ、ティッシュ…指で少し拭いながらティッシュを探す。と同時に目の前に出されるティッシュ2枚…って、そうだ新開君居たんだっけ。
ヘッドホンをして完全にのめり込んでいて完璧に新開君の存在を忘れていた。
彼の顔を見ると柔らかい表情を浮かべている。
「あ、あのごめん」
終わったドラマと共にヘッドホンを外しながらなんとなく気まずくて謝る。
「そのドラマ面白いのか?」
「…まぁ」
「暇な時見てもいいか?」
「ご自由にどうぞ」
自分の部屋に入る。
あー、しまった、油断しすぎだ私。思わずベットに顔を埋める。もう何なのよあの顔は…バカにして、垂れ目のくせに!
新開君はここ2週間ほど一緒に住んでみて残念なところはあるけれど良い男っちゃ良い男だった。
それなりに気を遣ってくれるし、笑わせにかかってくるのだ。いや、あれは私のご機嫌をとっているといった方が正しいか。
そりゃ、この歳だし裏がありそうな意図は少しは読める。
でも最近は帰る時にメールをして用件を伝えるとやっておいてくれたり、買い物しておいてくれたりする。所々抜けているけど意外と働いてくれていた。
そしてどこか人が待っていてくれる人がいるというのも悪くはないと思ってしまう。しかし待っている人が、まだお金を一銭も払ってくれないヒモっぽいのが残念だけど。
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