ぜんぶ溶かして全部教えて


前々から予定されていた同期での忘年会。久しぶりに集まる同期とは、上司への愚痴を筆頭にそれぞれの近況報告をグラスに口をつけながら笑いあった。
グラスについた水滴を指でなぞった時、私の名前が聞こえた。地獄耳でもなんでもないけれど、やはり自分の名前というのは少しくらい離れていても捉えてしまうのだ。

「で、アレからどうなのよ」
「何がよ…?」
「ご、う、こ、ん」

語尾にハートマークが付きそうな程にいやらしく笑う同期のその4文字にむせ込んだ。あぁ、そうだあの問題だらけだった合コンについて多少報告したけれど、深いところははぐらかしたままだった。酔いが回り声が大きくなってきたところでその話題をわざわざこの複数人が聞いてるこの場で出してくるとは、なんとも人が悪い。ニヤつくその友人の顔を苦み走った顔をしながら、肘で突くと"じゃ、私が喋ろうかなぁ"と気を良くした返事をしてきた。

「ま、待って!私が話すから!」

爛々とした友人を慌てながら手で制し、期待の目を向けられる中、渋々口を開いたのだ。新開君との誤解を呼びそうな出会いなどは省いた説明を行った。シンプルに"気になっていた人が合コン相手で来ただけだ"と言うところを強く言えば、何それどんな偶然と笑われながらも深くは追求されずに済んだから良しとしよう。



「ね、相手の写真とかないの?」
「え…」

その一言にピタッと止まる。新開君を撮った事か、考えてみればない気がした。そりゃそうだ毎日顔をあわせる人の写真なんて撮る事なんてないだろう。しかし同棲しているとは言っていない手前そんな反論は出来なかった。写真があったかどうか考え出して止まった私に対して、話の輪にいた他の人が"〇〇みたいにツーショット的なのとかさ"と同期で付き合っている所謂バカップルの二人を微笑みながら指差した。指摘された先の二人は忘年会の中でも二人の空間を作り出していた。そういえば先程ほっぺにキスをしているような画像を"えー、恥ずかしい"と言いながらも満更でもないらしく見せられたのを思い出した。

「あー…撮った事ないなぁ」
「え、相手のだけのも?」
「うん」

私の答えに残念やなんやらの不満が上がる。それを"写真ないんだからしょうがないでしょ"と笑い飛ばしたのだ。その反応から、この飲み会の中では、もし画像フォルダに新開君の写真があったとしても見せない方が正解だと感じてしまった。話題はその後収束しながら、他の話題へと移っていった。



時刻は日付が変わるかどうかの時間、疎らに帰っていく人もいた中で、最後追い出されるかのようにお店を出た。それぞれ帰る算段をする人や三次会に行くと盛り上がっている人達でたむろっていた。私は先程、なまえさんが心配だから連絡してくれという可愛い所もある新開君に'帰るメール"を送ったところだ。これでタクシー拾って帰ろうという算段だ。寒い筈の夜風が気持ち良いのは、中の熱気がまだ保っているからだろう。そして飲み屋の前でしゃがみこんだのは、新開君と付き合う前に新開君のバイト先の定食屋に連れて行ってくれた同期だった。

「あー…呑んだ呑んだ……、キモチワリィ」
「大丈夫?」

彼が項垂れる中、近くでその一言を聞いてしまった私が思わず反応してしまった。迷ったがソッと背中に手を当てると"なんだみょうじか"と何とも言えない顔をしていた。その表情を見ながら、まぁそう言いたくもなる気持ちも分からなくもなく苦笑いを浮かべた。

「なぁ、みょうじ」
「ん、何…? 水?」
「…ぁ〜…今日これから一緒に帰らねー…?」

背中を摩る私の耳元で掠れた声でそんな事言われたら、不可抗力ながらもビクッと反応してしまう。きっと彼は私がまだ新開君と付き合っては居ないと思っているのだろう。しっかりと彼氏がいるから帰りませんと笑い飛ばしながら立とうとした時だ。コートの中でスマフォが震え出した。長いバイブ音に、ポケットの中からスマフォを出すと電話がかかってきてその表示に少し焦った。

「もしもし」
"迎えに来たんだけど取込中か?"
「…どこかで見てる?」
"さすがなまえさん。驚かせようとしてたんだ"
「全く…、直ぐ行く」

終了した通話。ポカンとする目の前の彼に苦笑いのまま「ゴメン、彼が嫉妬激しいから」という一言を小声で告げた。全ての状況を把握した彼がイケると思ったのになと笑みを零した。







ガードレールに身体を預け、寒さからか首を竦めている新開君。遠巻きで女性が新開君を見ながらコソコソ話している中、新開君に近づいた。それが次第に私に向けられて何とも視線が痛かった。

「おモテになる様で」
「なまえさんがそう嫉妬してくれるなら悪くねぇな」
「よく口が回る事で。 …ただいま」
「おかえりなまえさん」

余裕な笑みを浮かべる新開君と並んで夜の道を歩き出した。夜のネオンがキラキラと誘う、しかし行き先はタクシー乗り場だ。今日はさみぃなと何度も繰り返し言う新開君が隣なのだから直帰するしかなさそうだ。新開君の二の腕を掴み、凍えそうになる身体を縮こませて歩く道、新開君がいる側だけが暖かかった。




「あ、そう言えば、今日私の話題になっちゃって、新開君の写真がないかとか言われちゃったよ〜」
「あぁ、そういや撮らねぇよな」

タクシーに乗り込みながら、飲み会での話を新開君に洩らした。タクシーの運転手さんをジッと見た新開君。何か言いたげな新開君を不思議そうに見つめると新開君はタクシーの運転手さんに行き先を告げた。新開君と後部座席に座る。そして1日の気疲れを癒すかのように軽く背伸びをした。そんな私の肩を抱き寄せてきたのは逞しい腕だった。一緒に住んでいる所為かこういう恋人っぽい事なんてした事なかったなと素直に身を預けた。

「…なまえさん酒くせぇな」
「そりゃ飲み会終わりですから」

喉を鳴らしながら笑う新開君に小声で笑いながら返す。そんな新開君が私の肩をトントンと指で叩くので顔を向ける。すると真近に迫っていた顔と息がかかる距離だった。しかしそれを断る理由もない、受け入れる為に数ミリ開けた唇に噛み付くように唇を合わせてきた新開君に目を閉じた。タクシーの中だという事は重々承知だ。けれどバックミラーでは映らない低さだろうし、仮に見られても暗いし、若いけれどタクシーの運転手さんだしこういう事くらい慣れている事だろう。そんな浅はかな予想と酔った頭で、昼間では拒否してしまいそうなのに、今は簡単に受け入れてしまった。熱い舌が重なり合い、歯列をなぞられる。口内を舐めまわす様に這い回る長い舌を必死で捕まえた。

「呑みすぎだな」
「ん…やっぱり?」

薄眼を開けた新開君が零す少し咎める様な一言。タクシーの中の所為か小さい声なのに、低く甘い声は私の身体に響いた。再度唇を合わせながら、他人がいる空間でイチャつく罪悪感に酔いしれた。いつもならこんな事しないのに…、厚い唇に乗せられるかの様にため息が漏れてしまう。私の腕を押さえる様に添えられていた大きな手が器用にスーツの大きいボタンを外しだす。絡める舌に力をこめて拒否を表すが丸め込まれる様にほぐされてしまう。
カットソーの下から進入した手が胸に到達された時、さすがに手で少し押し返した。薄眼がちに開けた先は、熱情を宿したタレ目が待っていて、ある瞬間を思い出してしまう目に恥ずかしさが生まれる。

「…少しだけ、な?」

新開君は小声で私を宥めながら、ソッとカットソーを捲る。深夜のラジオと時折入る無線の喋り声が響く車内の後部座席で僅かに肌を晒した。キスをされながら、滑らされる大きな手が胸の頂点を探し出す。そしてパチンという音と共にブラが浮き上がった。やわやわと揉み込まれる双丘。運転手さんの反応ばかりが気になり、神経を尖らせる中のこの行為は問題であった。フニフニと圧し潰していた頂点は直ぐに立ち上がり、硬くとがる。それを何度も何度も弾かれたり、サイドから揉み込む様に手を這わされるともうビクビクと身体を揺らした。あろう事か車内だと言うのに、身体を低くしてその頂点を舐め始めた新開君。さすがに抵抗を示して、茶色い髪に手を埋めた。重点的な刺激は酔った身体にこの快感はあまりにも毒だ。再び指で弄り始めた新開君。くぐもった声を新開君の口の中に発しながら、新開君の服を握り締めた。

「なまえさん、いつもより感じてやらしいな」
「ちが…」
「ここどこか分かってるのかい?」
「っ、」

耳元で小声で囁かれる毒に言葉が出てこない。硬くなってしまった頂点が新開君の指に反応してしまい、声が出そうになるのでキスを強請った。"それ逆効果だぜ?"と小声で言う新開君がスカートの中に手を伸ばした。そう、いつもよりもおそらくアッサリとしたペースの速い愛撫なのに、いつもと違うこの状況では何かが違った。ここまではしないと思っていたのに…少しだけと言ってたくせに…そう反論する言葉はあるし、突き飛ばせる事も出来るのに。その手の侵入を許してしまうとはどういう事だろう。
小狭いタクシーの中で行う秘め事に狼狽を隠せない。もう、ショーツの上からでもこの状況は分かってしまうだろう。唇を合わせているのが幸いだ。いつも発してしまう声は新開君の口に消えるから、器用にストッキングを下げ、横からそっとショーツをずらされる。そしてその長い中指を受け入れた。

外からのネオンが暗い車内の中で不規則に新開君の顔を照らす。その中でも新開君の口角が上がったのは唇を合わせながらでも分かる。ダメだと分かっているのに…。下手したら路上の人から見られてしまってるかもしれないのに。神経を尖らせたこの状況では快感が何倍にもなってしまうみたいで、すんなりと新開君の指を飲み込んだ。

「し、新開君…ってば!」
「ん、あぁ」

目の前の新開君は自身の中心に私の手を導いた。ズボンと上からでもガチガチに勃ち上がった雄が生々しい。そういう事を言ってるんじゃないと思うのに、中を探る指に声が漏れそうなのを抑えながら新開君の雄を欲するように撫で回す。雄を求める様に発情しトロトロになってしまって、音を立てないようにしていた新開君の指に反論するみたいに私の秘部からは卑猥な水音が聞こえ始めていた。

「っ!」

ダメ、恥ずかしくて死にそう…!さすがにもうきっと運転手さんにバレちゃってる。いくら知らない人だろうと恥ずかしいもんは恥ずかしい。キスをしながらギュッと目を瞑る。見知らぬ人にこんな痴態を知られるとかもうやめて欲しい。せめて運転手さんが振り返ってずり上がってしまったスカートの先をどうか見ないでと願うだけだ。

「あぁ、そうだなまえさん」
「…っ!?」

頬に接する厚い唇を感じた瞬間、照らされる光と共にパシャりとお気楽な電子音が響いた。

「ホラ、さっき写真ねぇって言ってただろ?」

不敵な顔して目の前に突きつけられた今撮った写真は、余裕ある新開君の顔と涙目になり、しだらく口を開けて何かを待っているような私の姿で、誰がどう見ても情事の最中なのは明らかだ。自分の顔なのに知らない顔だ、こんな顔を晒しているのだと思うと目を背けたくなる。しかしこの現状を直視せざる終えない写真に身体の熱が上がってしまうのは必然であった。

「…ゃ、ぁ…」

口を離した瞬間に反論しようとした声も単なる快楽の声として漏れ出てしまう声が自身の耳にも入る。今はもうそんな写真を咎めている余裕なかった。ヒクヒクといつの間にか増やされた指を味わいながら、新開君の細く射抜く目に見つめられる。私の身体を知り尽くしてしまっている新開君は、利き手でもない左手で私を愛撫するのにその左手は私を躍らせてくる。入口よりも少し上、充血した突起を撫で回しながら、中の弱い所を先程よりも速く刺激してくる。両手で口を抑え、タクシーのドアに身体を預けながらビクビクと何度も身体を震わせる。耐え忍んでいる筈なのに出てしまう荒い息、時間を追うごとに込み上がる快感があと少しで達しそうになった。その瞬間、グチョグチョになってしまっている秘部から指がスッと抜かれた。

「お、お客さん着きましたよ」

その瞬間に止まるタクシーと僅かに戸惑いを含む声に引き戻された。止まった所は目の前はアパート近くの行き慣れたコンビニだった。さも何事もなかったように私の頭を撫で、直ぐさま財布を取り出す新開君。
もう、服の中で浮いたブラジャーを留める暇なく、コートで乱れた身を隠し新開君に支えられる様にタクシーを降りる。新開君はいつの間にかタクシー会社の名刺を運転手の座席の後ろから一枚とっていたらしい。今の今まで私の中にあった指で挟み、閉まりそうなドアの中にいる運転手さんに挨拶をしていた。

「またタクシー利用させてもらうよ、黒田」

太い腕に支えながら乱れた衣服をコートで隠してアパートへと向かう。無言で歩く数分、頭ではこの状況の責任をとってくれるのかどうかを初めて心配した夜であった。












title:深爪

(タクシーネタが書きたかった)
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