コタツとお友達
やはり12月となれば、一気に寒くなる。そして師走らしく、年末に向けて仕事は慌ただしくなった。それに伴い増えてくるのは忘年会だ。先日他社の友人と電話した時は、忘年会だけでもう4回あったという会話をした。それを聞いて人の経済状況が気になってしまうのだけれど、そこはボーナスという素晴らしいものが私の懐にも入っているので心配はいらないのだろう。
そして私も例外ではなく、部署内、同期での飲み会の予定がしっかりと入っている。あとついでに寒くなるにつれてコタツを住処としている新開君も忘年会の予定はあるらしい。
半纏を着て、その上から毛布をかけてコタツに収まる様は外で見る新開君とは印象が違う。トイレ以外はコタツに根を生やしていた。
「新開君ー、コーヒー」
「良いな、俺のも頼むぜ」
「私さっきお菓子持ってきたから、新開君の番」
「…そうだな、そのうち」
嫌味ったらしく喉の渇きを訴えたのだが、さり気なくとスルーされる。まぁ私が気付く自体で意味ないのだけれど。そしてコタツを棲家としているのは新開君だけではなく、私もこの暖かさを享受していた。
フイッと逸らされる視線に苦笑しながらを席を立つ。室内だけれどやはりコタツに比べると寒さが際立つ。そしてキッチンへ向かう私を見送る新開君にこれ見よがしにため息を吐いた。
コーヒーメーカーが音を立てて、カップを満たしていく。カップ2つ。私も大概新開君には甘い。大袈裟にため息を吐いたけれど、私自身はそれ程苦痛にも感じていないし、おそらく新開君もそう理解しているのだろうと思っている。非常に解せない。
「さすが、なまえさん」
「なーにが"さすが"よ。コタツから出る気皆無な癖に」
「いやぁ、昔なまえさんとやりあって勝ち取ったコタツは無下に出来ないぜ」
「…、また懐かしい話を」
コタツの台を撫でるようにする新開君にカップを渡す。少ししたり顔で約1年前の事を掘り下げられた。そうか、このコタツ買ったのそんな時だっけ。思い出すとやたら恥ずかしくなった。そう、あの時は…。
「あの時はなまえさんの事ひでぇ女だと思ったんだ」
「私もさっさと出て行ってもらいたいと思ってたよ」
「…」
「…」
あの時買ったコタツを囲んで座り、そしてコーヒーを呑むタイミングが重なり沈黙が訪れた。口に広がる独特の苦味と風味。味わうかのように口を閉じたまま考えるのは1年前の事。よくもこう懐まで進入を許してしまったのかは自分でも不明だ。
「なぁ、今は?」
コタツに頬杖をついて不敵に聞いてくる新開君の目はやはり強気だ。今更何を言えばいいって言うのか…、私は結構甘いっていうのも承知しているくせにこの男はやはり面倒くさい。
「とりあえず、その姿と台詞は似合わないかな」
「…しまったな」
半纏姿で笑う新開君に釣られて笑う。男女の関係において言葉を必要とする時も多いだろう。しかし今なんて聞く必要なんてないくせに、わざわざ聞いてくる新開君に少しくらい意地悪をしたって許されるのだろう。時刻は23時過ぎ、カップを洗って布団に入らないとならない。そしてコタツと一体となっている新開君を布団に追いやるという仕事も残している。
「ほら、もう寝ようよ…。…ぁー…偶には一緒に寝る?」
「え…!!」
とりあえず声をかけてみた事は、コタツから腰を浮かせるのに成功した。驚きながらも立ち上がった新開君をつれて私の部屋へと移動する。きっとコタツで暖かくなっている新開君の体はいい湯たんぽになるだろう。
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