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平日の放課後机をどかして、屋台の看板とか作っていく。この文化祭の準備は基本的に帰宅部が中心的に行なう感じだ、運動部は練習、文化部は文化祭にむけてそれぞれ仕事がある。なので必然的にミサキや私含めて男女10人くらいでべちゃくちゃお喋りしながらのんびり作る。最後に間に合わないとなるのは当たり前だろう。そもそもな人選が間違っている。
「ミサキ、私飲み物買ってくるから少し抜けるね」
飲み物を片手に作業したくなったので、断りを入れて買いにいく。
自販機は一階だ、放課後の人の気がない階段をリズミカルに降りていく。一階に降りた所で部活休憩なのか汗まみれの荒北に遭遇した。
どうもロード特有のピチピチしたユニホームに未だ慣れない。なんて言うかどこ見て話したら良いか分からない。変な話やけに空いた胸元やら目のやり場に困る、絶対言えないけど。
そしてこれ私は絶対着れないな、こんなに身体の線出せる気がしない。
「荒北、お疲れー」
「あー、あちィ 何?残ってんのォ?」
「そう。文化祭の準備ね」
「あっそう ...新開は教室いんの?」
汗を拭いながら聞いてくる荒北、って新開君は部活じゃないの?
「え、居ないけど?出てないの?」
「あのボケなす、サボりかァ?」
そうなんだ。珍しいね、サボらなそうな人なのに。
「あー...気をつけて帰りなねェみょうじチャン」
「ハイハーイ、そっちこそ傷増やさないよーにね」
るっせと言って去って行った。自販機でミルクティーを買った。新開君やっぱりここ最近変な感じがするんだよね。まぁ私には関係ないけどさぁ。
教室に戻り、プシュと言う音とともに甘い匂いが広がる。やっぱり疲れた時には甘いものだよね、そんなに疲れるほど仕事してないだろとか言わないでほしい。
連日、放課後集まってダンスの練習やら屋台装飾を行なう。もちろん毎日なんか飲み物は買わないよ。
ダラダラやっている割には形になってきたんじゃない?
数日後
風の噂というやつが流れてきた"新開がインターハイを断わったこと"が。ちなみに風というのは荒北の事である。
荒北が"あいつなに考えてやがんだ"と言っていた。久しぶりに荒北に同意だ。そんな荒北が続ける。
「...お前もなに考えてんのォ?」
「え、何が?」
「今更かもしんねェけど、お前も中学でやっていた部活なんでやんねェの?」
いつもより厳しい顔の荒北だ。三白眼がいつもよりキツイ。思わず目を逸らす。
「今更だね...そりゃその部活無いからね」
「ある学校行きゃ良かったんじゃねェの?」
「なんていうか荒北は私の事嫌かもしれないけど、私の熱は中学で終わったんだよ、後悔はないよ」
「そーかよ」
荒北は去って行った。ハァ、手ぐしで髪をかきあげる。
荒北に言った事はほぼ本心だ、野球がやりたかった荒北にとってみれば私のような人間は好きじゃないんだろうな。
小、中学と楽しみながらやってきたが成長期とともに思ったように動けなかったりしてここまでだと中学時点で区切りをつけて終わらせた。多少膝を痛めたのもあったけどさ。とりあえずこの事は忘れようよ荒北さん。
やはり教室で見る新開君はいつも通りな気がするんだけど、どうしても暗いオーラを纏ってる。風の噂も関係あるんだろうな、あーもう、ジメジメする。
翌々日の放課後
文化祭の準備で出たダンボールゴミを捨てに行くことに任命された。捨て場は旧校舎付近でちょっと遠い、内心えーと思いながらもいいよと笑顔で重い腰を上げる。ゴミを持ったはいいが飛び出しているゴミで前が見えにくい、なんとか階段を降りて旧校舎へ向かう。
旧校舎裏で人影?もう!ゴミで前よく分からないんだけど。人であってたけど新開君だった。
「新開君何してんの?」
「おーみょうじさん、ゴミ捨てか?そこまで付き合うか?」
「え、大丈夫だけど、部活じゃないの?」
「ん?まぁ、そうだなぁ」
なんだか煮え切らない返答に、少し苛々してくる。ゴミ箱を横においたら視界が広がる、と同時に新開君の足元に大きいカゴに入ったウサギが目に入る。新開君同様しゃがんで、ウサギを見つめる。え、なぜここにウサギ?あ、しまったそのまま声に出してしまった。
「あー、俺が育ててるんだ」
少し悲しそうな顔をされたので内心しまったと思った。
「...何かあったの?」
「......」
そう"言いたくない"ってことですか。
「...ぁー、これは私の独白なんだけどさ、最近クラスの中でいつもと変わらなく明るく優しい奴がいるんだけど、少し前からなんだか暗いオーラを漂わせるので気になるんだけどどうしたらいいのでしょうか」
大きい目をさらに大きくした新開君。私はさらに続ける。
「ぶっちゃけどうでも良いんだけど、明るくするならするで良いんだよね。ただ私にバレないように落ち込むなりして欲しいのよ。雰囲気ジメジメするので」
「おめさんひでーな」
「いや、私に気付かせる新開君がいけない」
思わずフフと笑ってしまった。新開君にはなんとなく意図が伝わったようで笑ってくれた。
そこからウサギの話をポツリポツリと話してくれた。人は話すだけでも楽になったりするしね。私は何も言うことなく相槌をうって聞いていた。
「...俺はどうしたら良いのか、自転車を全力で出来ない」
私は、正直同じ立場に立てない。自転車の知識もなければ現在部活動すらやっていない。ただあの不器用な荒北が、私に風の噂をしてくれることはそういうことなんだろう。
「でも、新開君はこれからどうするかは分かってるんでしょ?」
ポカンとした新開君。え、そんな顔初めて見ました、開いてる口にパワーバー突っ込めそうだ。
笑っちゃうよ、これだけ自転車の事悩むってことはそれだけ大事ってことでしょ部活や仲間が。すぐには無理かもしれないけどねっと付け足して言っておく。
「意外と投げやりだな」
「そりゃ立ち直るのは自分自身ですから?あとは仲間ってやつが助けてくれるんじゃない?」
「...まぁそうかもしんねぇな」
話して少しはスッキリしてくれたら良いと思う。
「私には関係ないけど、暇だから話くらい聞いてあげないこともないよ」
スカートをはらいながら立ち上がり、新開君に手を差し伸べる。
「おめさん予想以上にいい女だな」
「フフ、いい男に言われてもなんにも出ないよ」
新開君は手を取って立ち上がってくれた。
新開君はそこからゴミ捨て場まで、ゴミ箱を持って行ってくれた。さすがいい男だ。
そして私はというと、長くかかったゴミ捨てを怒られるというイベントが待っていた。ちょっと待ってよ、少し良いことしたんだから言い訳くらいさせて欲しい。
それから新開君とは苗字で呼び捨てで呼び合うまで時間はかからなかった。
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