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6月も半ば過ぎるとあることが始まる。
私は運動神経はもともと良い方だ、それでいて中学まで身体を動かしていたから、スポーツが盛んな箱根学園で通知表で5をつけられるくらいだ。ただ2学期だけは別なのだ、なんしろ水泳が始まる。高校に入ったらないとこも聞くのに箱根学園はあることを知った1年時ショックを受けた。人間は陸地で生きる動物だよ、なぜ人はわざわざ泳ぐんだ、本当に意味不明だ。とりあえず浮輪を使わせて欲しい。

当たり前だが水泳は小さい時から苦手だ、今は大丈夫だけど潜るって事が出来なかった小学校の一年生。だってよく分からないけど鼻から水入ったりするじゃん。授業参観で辛い思いもした。荒北には水をよくぶっかけられて泣かされたな...あ、思い出したらイライラしてきた。
それでも小中学と成長して、25mを泳げる時もあるレベルになった。

高校の水泳は授業は緩くはなっているけど、全て入らないって訳にもいかない。この水泳期間の私の生理はとても長い。むしろ一ヶ月に二回くる勢いだ。

本日より水泳授業開始だ。今年の体育は荒北のクラスと合同になっている。あいつは意外となんでも運動出来るから、水泳も問題ないんだよね。

ミサキ含め友人達とワイワイ、私だけはテンションだだ下がりの中更衣室に向かう。
前の時間帯も水泳だったのか、特有の水に濡れた更衣室の匂いがたちこめている。足場はペトッてするし更にテンションが下がる。
皆様子見ながら着替え始める、私ももちろんコソコソと制服を脱ぎ水着を着る。ミサキにボソッと話しかけた。
「...スクール水着って身体の線が出るし難易度高いからやなんだよね」
「同意はするけど、なまえが言ったら色々腹立つからやめてくれる?」
「いや、ミサキに言われたくないんですけどー」
私はもうちょっとお尻小さくしたいし、足細くしたい。まぁよくある悩みにはなるけど、女子高生にとっては重要だ。
着替え終わってプールサイドに集まらないといけないのだが、女子更衣室ではなんとか倶楽部のどうぞどうぞ状態だ。そう、皆の心は一つ"始めに出て行くのはなんだか恥ずかしい"だ。男子は何も考えずガヤガヤプールサイドもう集まってしまってるから余計に出て行きにくい状態だ。
見るに見兼ねてか、リーダー的な女子が最初に出て行く。微妙な男子のざわつきが嫌だ。ゾロゾロと連なって出て行く、意外と足が熱い、6月なのにプールサイドは熱くてこの私でも早くプールに入りたい。
男女の間には深い溝が出来たように行き来がない、普段仲良い人達も気恥ずかしいようだ。

あぁやっぱり新開君は良い筋肉してるなぁ、焼け方は面白いけど。余裕の出て来た私もミサキとそんな話をする。

教師が出て来て、授業の説明と準備運動を行う。
とりあえず今日は初回ということなので適当に25m何本も泳いでいけ、そして最後10分は自由時間ということだ。うん、プール上がるのに時間かけてプールサイドはダラダラ戻ります、それならまだ今日は頑張れそうです先生。

とりあえず平泳ぎが楽で時間かけられるので平泳ぎで泳ぐ。とは言っても元々遅いから頑張って泳いでいるのに進まない、本当何故なんだ。クロールは溺れてるようにしかならないし、とことん水泳に向いていない事を改めて実感する。

自由時間、私とミサキはビート板を使って風呂の様に浸かっていた。そこに天敵が現れた。
「みょうじチャン相変わらず水泳はてんでダメだねェ」
ピッと水を飛ばしてくる。この前のギクシャクした話以来で気まずくて私から話かけてはいかなかったがどうやら気にしないで居てくれるようだ。あ、水に流せっていうことか。くだらないことを考えてながら応戦する。
「ウルサイ細北、私は陸地で生きるので良いんですー」
負け時と私も水を飛ばす。

「2人とも良い身体してんな」
そんなところにいい男な新開も寄って来た。流石にプールではパワーバーは食べないらしい、少し安心した。ミサキとともに笑いながら言った。
「新開に言われるならなんでか悪くないよね」
これがイケメン特権というやつか。
「ハッ デブちんがァ、これでなんで浮かないか疑問だね」
黙れ細目が。新開とミサキが話しているのを尻目に荒北はあろうことか私の二の腕の肉を引っ張りやがった。このセクハラ野郎、と荒北を蹴ろうとしたけど水の中なので掠った程度になってしまった。

終了との教師の号令でプールから上がる。荒北と新開はまだプールの中で、荒北は新開の頭を叩いてた。仲良いのは分かるけど早く上がれよお前ら。



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