荒北の思うこと
昔からそうだ。飄々と好き勝手やっていたなみょうじなまえっつー人間は。
小学校はヒョコヒョコ来て野球を眺めていったり、憎まれ口を叩いたり、正直家は近けェけどそんなに仲良くはなかったような気がして気にもしてなかった。
中学入り、これからだっつー時に嫌な事があった。離れていく仲間や教師達。腫れ物として扱いやがって、そーいうの雰囲気での生活は苦しかった。ただあいつだけは変わらず飄々と話しかけてくる、こいつが何にも考えてねェっつーのも知っていた。適当に人の事にフラッと突っ込んでみて様子を伺い、なんかしらフォローをしたりする。
昔っからこうだと知ってんけど、そう他人に関わるこいつに何か虫酸が走った中学時代。
ちっせー頃から新体操だかやっていて、中学でも続けてるのは知っていた。そのせいか微妙に人気のあるなまえチャンが嫌いだ。嫌いななまえチャンを好きだという男がいるって言うのにも虫酸が走る。
そんな嫌いななまえチャンとは中学でオサラバだと思った。ヒョコヒョコ顔出して人の様子を伺う、んな事なんて臨んでねェんだ。無視してくれりゃ良かった。箱根学園は野球はもちろん女子新体操もないから必然的に顔を見なくて済む。
箱根学園に入学してから、さらに周りの環境は良くなかった。つまらねェ奴らは多いわ、突き刺さる視線もムカつく。
入学して数週間、廊下で同じクラスの声のでけェ野郎が他のクラスに綺麗だか可愛いだかの女が要るとかいねぇとかほざいていた。どうでもいいが、ほらあいつと後ろで話すから思わずそっちに目をやってしまったら、居ないはずの人間がいたみょうじなまえだ。あいつ俺を見て笑いやがった。後ろの奴らがほら可愛いだろとかうぜェこと言ってっから睨み付けてやった。つーかあいつ可愛くねェヨ。
あいつはもう必要以上に関わって来なかった。
秋になり、色々と転換があってまさかの自転車競技部に入った。うぜェ上級生を殴りそうになるのも多々あった。ロードを回してる事が多くなって、多少満足出来ることも出てきた。
が、サボっていたつけか勉強が追いつかなかった。テスト前は部活も休みになる、気まぐれで実家に帰って勉強をする。したくねェけどやらねぇと部活にでれねぇ。
やろうとしていた数学の教科書がねェ。どうにも数学の気分で考えた末にあのボケなすから借りる事にした。
新開っつー奴にアドレスを聞いたら知っていた。
早速"数学の教科書貸してくんねぇ? "と送りつけたら、用件のみのメールが返ってきて借りる事になった。
あいつの家に行く、ラフな服装で佇むあいつから教科書を受け取る。
変わらず接するなまえチャンにむずかゆさを感じた。
土曜の夜に、ノートの貸し借りやらコンビニやら適当に話すことが多くなった。こいつとこんなに話したことはない、近いくせに新鮮だった。意外と生意気なこと言うなまえチャン。と思ったら時々的を得ている事も言う訳分からないやつだった。
中学ほとんど会話らしい会話してねェからあえて言わなかったがこいつ新体操はどうしたんだヨ。
2年になりうぜェ奴らも卒業した。さらにロードに打ち込んだ。
そんな矢先に体育祭とやらがあった。
決める際にすげェどうでもいいので寝ていたら、種目が決まっていた。誰だよ俺を障害物競走にしやがったの。
当日保健委員だかでテントから見ていたら25人26脚でなまえチャンが転けんのが見えた。プ、ダッセ。しばらくするとテントにやってきたbk_name_2#チャンに声をかける。俺を見て嫌そうな顔に気分を良くする。
痛くするな丁寧にしろと注文するこいつを煽ったら脛を蹴りやがった。出された細い白い足が妙に印象的だった。触れてはビクつくこいつに加虐心が煽られ、必要以上に消毒してやった。
障害物競走で最後の最後で引いた紙がヘアアクセサリーだった。東堂と思ったが簡単には見当たらず、目線をあげたらなまえチャンがボケっと見ていた。俺の目は横の髪飾りだった。つかつか寄って行き、ヘアアクセサリーを奪う、なぜか甘い香りが鼻につく。
体育祭も終わりしばらくするとインハイメンバー決めが行われ、新開が辞退した。
なんとなくなまえチャンに話したくなって屋上に呼び出した。素直に話を聞いていたなまえチャンを見ていたらフツフツとムカついてきて気になっていたことを聞いた。なぜ新体操がねェここに来たのか、やれるならやりたかったそんな思いを否定する存在だみょうじなまえと言う人間は。
あいつは
「荒北は私の事嫌かもしれないけど、私の熱は中学で終わったんだよ、後悔はないよ」
お利口さんの答えを言いやがった。一線を引かれたようで気分が悪く席を外した。
それから何と無くあいつが避けているのに気付いた。ボケっとしているなまえチャンも色々考えているらしかった。
今期始めの水泳、微妙に避けられていたこそ、とりあえず水かけてからかってやった。二の腕を掴んだらやたら柔らかく思わずビビる。去り際に新開に二の腕の感触は胸と一緒だぜと言われ、さっきの感触を思い出そうとする手で新開叩いてやった。
文化祭の前夜祭
フラッと俺に近づいてきて、クラスのダンスみとけと言って去っていった。
あいつはクラスのダンスの最後、側転からのバク転を決めた。瞬間沸き立つ歓声の中、俺に向かって晴れ晴れとした笑顔で笑いやがった。なぜか俺の隣の野郎が生唾を飲み込んでいた。おい、ふざけんな。
こいつ、お利口さんの答えはほとんどそのままの答えだったか。やっと本当に後悔がないのに気付いた感じがした。
暗い体育館を1人で出て行くなまえチャンを見た。思わず足を向け、周囲を探したら影のベンチで仰向けに寝ていた。
「中々良かったんじゃナァイ?」
とりあえず労いの言葉をかけたらタオルを取って見つめてくるなまえチャン。とりあえず頭側に座り、くだらない世間話をする。なまえチャンが小声で喋り出す。
「...荒北ぁ、この前の続きなんだけどさ、新体操は今でも好きだよ。でも私なりに決着つけてあるから心配しないでいいよ」
心配?あぁ俺心配していたのかこいつの事。ふと胸に落ちてくる感情の名前に思わず戸惑う。
ずっと好きだったのかこのみょうじなまえの事を。
ふと感情が高ぶったのかなまえチャンが涙をポロっと流すのが目に入った。なんつー泣き方すんだこいつ。初めてこいつが綺麗だと思ってしまった。勝手に手が涙を拭ってしまう。そして、それを恥ずかしそうにタオルで隠すこいつがやたら可愛く思えて、ついおでこに手をやり、あやしてやった。
体育館へ戻れと言うこいつにしぶしぶ腰を上げる。...まだここで泣くんだろうが、ここにいる権利はねェから体育館に戻る。
しばらくするとなまえチャンは戻ってきたのか同じクラスの奴らがいる方へ行った。横目で捉えてしまう気持ち悪りィ自分自身。少し離れていた新開にも話しかけに行き、新開と話しているかと思いきや新開は何か囁いたのかなまえが恥ずかしそうにしゃがんで、さらに新開は身体を触っている。おいセクハラじゃねェのか?セクハラを通り越して愛撫に近い2人の雰囲気に気分が悪くなり思わず体育館をでた。
翌日、適当に時間を潰しながら文化祭を過ごす。
東堂に新開のクラスに誘われ行くとなまえチャンも店番していた。やたらフリフリした明らか趣味でなさそうなエプロンを褒めてやったら嫌な顔された。そしてなぜか10本買えと無茶振りしてくるなまえチャンと新開、息のあった2人にさらにイラつく。こいつらこんなに仲良かったのか?選んだチョコバナナを俺らに渡そうとしてくるちっせェ手。それを取ろうとしたら新開がなまえチャンが呼び、口にチョコバナナを突っ込んだ。さすがに驚くなまえチャン、声にならない声をあげている。苦しそうにチョコバナナを突っ込まれているその画がある行為を想像させて急激に体温が上がる。あろうことか写メを撮った新開をぶっ叩く。マジ何してんのこいつ。焦っていたなまえチャンもやっとこチョコバナナを抜き糸を引く唾液に思わず興奮したのは男子高生の性だ。
後々新開に声をかけられた。
「さっきの要るか?」
要らねぇよそんなもん。
「...要る、そしててめェは消せ」
「それはひどくないか?」
正直それは夜使用したので、次の日がやたら顔合わせるのが気まずかった。
そんな中あいつはひょっこり登場した、俺のテリトリーに。
物珍しそうに辺りをキョロキョロ見渡しながら様子を伺う姿は小動物だ。昨日からやたら可愛く見えてきて一昨日までの自分はなんだったのだろうか。
適当に端に連れていきロードに乗らせる。転ばないような作りだから適当に回せと言う。
身体痛いとか当たり前のような事を言ったと思いきや凄いねと笑顔で褒めてくる。素直な笑顔が昨日の今日で直視出来ない。
「んな当たり前なこと褒めんな」
と思わず言いながらなまえチャンを見たら、よろしくない状況になっていた。タンクトップで胸元の多少緩いのか前傾姿勢でしっかり谷間が見えてなんというか眼福。着痩せしているのかこいつ、意外とあんな。つーか本当こいつ男の事気にしなさ過ぎで嫌いだ。この男ばかりの状況でこれはまずいからロッカーでユニフォームもってきて着させる。
が、それはそれでこっちとしては嬉しいような恥ずかしいような少し胸がキツそうな上にピッタリと身体のラインに張り付く、緩めのつなぎからの比較で余計細く見える。着せたは良いがこの光景は余計にくるものがある。
とりあえず少しは痩せるんじゃナァイ?とからかっておいた。
「良いことしてんなぁ靖友!」
聞きたくない声が聞こえ、思わずため息を吐く。こんななまえチャンの姿なんて見せたくねェからロードから降ろさせる。
新開が言ったユニホームが似合うっつーコメントは俺には伝わるが、こいつには言葉通りにしか伝わってねェ。思わず不恰好だといったら、新開には意図が伝わってしまった。
何か考えた新開がなまえチャンに着させているユニフォームの胸元のジッパーに手をやり一気に下げタンクトップと首が露わになる。さすがにビックリする俺となまえチャン。電話がそれから鳴り、バタバタと去って行った。
「で、何してんのてめェは?」
「いやぁ可愛かったなあの驚いた顔。それおめさんのユニホームだろ?マニアックな事させてんな」
「うっせェヨ、ボケなす」
文化祭も終わり、保健委員の関係で保健室に向かう。
聞き慣れた声がしてきた、チラッと覗くとそれは両方見知った顔だった。まさかの告白シーンに戸惑い、思わず隠れて引き返そうとするがいかんせん動かない足。これじゃ盗み聞きじゃねェか。
なまえチャンは結局断わった形になり思わずホッとする情けない自分自身。
と思いきや佐藤クンが半分抱き締めるような形でイラっとする。その上なまえチャンは佐藤クンの頭を撫でる始末に、すんなりブレスレットまで交換する悪い女だ。佐藤クンの言葉には心底同意する。
佐藤クンとなまえチャンを見た後焦りを感じた。出遅れた感じが否めねェ。
とりあえず後夜祭後、ぼーっと歩いているなまえチャンを捕まえて、会う予定を立ててやった。ついでに上書きのつもりで頭を撫でてやり、少しは気分が落ち着いた。
そしてテスト前の週末家に呼ぶが風邪をひいた情けない俺だ。メールを送って寝るがそのせいでやたらエロい夢を見たような気がする、覚えていないのが残念なくらいだ。妹からなまえチャンのノートを受け取る、それなりに綺麗な字で早く治せと書いてあった。ペラペラ捲ると簡単な解説やら書いてあって元々の頭の良さが分かる。これをわざわざやってくれたなまえチャンかと思うと余計に好きになるキメェ俺だ。
週明けからなまえチャンは、どこかおかしかった。不思議なくらい顔合わせない。テストも終わり、さすがに気になってなまえチャンを屋上に連れ出す。
訳を問いただしても無言なこいつに苛立って無理矢理目を合わせる。瞬間恥ずかしそうに真っ赤になる顔。くそ、可愛い。こちらの顔を見られないようにしながら逃がしてやった。耐えられねェ、あんな顔しやがってボケなすがァ。
メールに明らかに言い訳が返ってきたが、あの顔見れただけ許してやることにした。
夏休みに入りすっかりロード三昧だ。そんな中東堂が海に無理矢理誘ってきて行くことになった。
そしてしぶしぶ着いていけば、ビーチバレーに参加しろと言うので殴っておいた。福チャンが言うから新開と組んで参加したビーチバレー大会。適当な相手ばかりだったのでそれなりに勝ち上がる。ふと新開がナンパだかの相手をしてんから声をかけたらなまえチャンが居て、軽やかに挨拶してくる。
なんつーか、予想外でどこを見たら良いかわからねェから視線が定まらない。引き締まったウエストやらそれなりにボリュームある胸やら尻やら盗み見するがすげェうまそう。
そんな中、あいつは野次を受けた。ハッこいつにそんな野次なんて聞かねェヨ。こいつそんなに柔じゃない。なまえチャンのことだからパーカーのジッパーを上まで上げるかと思いきや、やたらエロく脱ぎやがった。ふざけんな軽く立ったじゃねェか。
そしてその水着で試合は目に毒過ぎる。
「やっぱ良いなみょうじ」
こいつはどこかに埋めた方が良い。捕まっていいほど舐めまわす様に見つめる新開を叩く。
なまえチャン達と対戦してみて分かる、今までなかったカメラの多さ。あいつらそーいう欲とかを分かってなさ過ぎねェ?俺らの背後からなまえチャン達が動く度に連写するカメラの音が非常に気分が悪く、思わず睨む。
それにブロックをする瞬間に揺れる胸にどうしても目が行く。だめだほんとに俺。
俺らは負けて、向こうも次で負けた。夜会うことになったが、それまでに平常心に戻さねェとならねェ。
「とりあえず靖友ガン見し過ぎじゃね?おめさんは変態か」「そうだ、あれみょうじさん以外だったら訴えられているぞ」
うるせぇ奴らからお小言を言われる。そんなに見てねぇヨボケなす。むしろ新開てめェの方が舐め回してんだろ。
暑い中パラソルの中で休んでいると友人と2人でフラッと現れるが寝たふりをする。合流することになったようだが、理由を聞けばまぁ当然のようなもんだ、あんだけ観客煽ってんだからな。
合流した俺たち、新開は例によって適当なセリフをはいている。なまえチャンの友人が、水着を"チャリ部カラー"とか言いやがった。思わず吹き出す、なんつーかそう見えると余計に下心が出てしまうような気がした。恥ずかしそうに前を全部止めたなまえチャン、おうそうしとけ。
そんななまえチャンの胸元のジッパーに手をかけるセクハラ野郎。このまま何か始めかねない雰囲気の2人に思わず寝たふりしていたが耐えられなくなり、全力で叩く。なまえチャンはやっと新開の手を離した。そんな俺に
「箱学カラーの水着堪能したいくせに」
と当たり前の事を言いやがった新開。チラッと盗み見したら様子を伺うなまえチャンと目が合いさらに気まずく、海に逃げた。
するとなまえチャンは俺を追ってきた。新開は良いのかよ?海に浮かぶ泳げないなまえチャンをまだ直視出来ない。と思ったら顔を引っ張る力技、すっげェ目を逸らしたい。不安そうな視線を感じとり微妙な気分だ。くそっ、男が廃ると思い伝える思い。
「箱学カラーの水着似合ってんヨ、可愛いヨ」
最後の一言は余計過ぎた。真っ赤な顔したなまえチャンの浮き輪に顔を伏せる。こんな顔見られたくねェ。そんな俺を可愛いとかほざくこいつはなんなんだヨ。
福チャンが登場しホッとする。このまま2人だと何しでかすか分からない自分だからだ。
3人で浜辺にあがり、なまえチャンは新開から服を着させられている、んなにイチャついてんじゃねェヨ。
福チャンと話している隙にあいつはフラッと消えた。ミサキとか言う友人に聞いたら自販機に行ったという。何となく気になり、いったらナンパに引っかかっていた。割り込み男どもを追い払い思わず怒鳴った。ありえなくねェか?
下向きながら言い訳するなまえチャン。あ?怪我?足を切ったのか...一連の流れが想像ついた。ったくこいつは、しょうがねェからおぶる事にした。が背中に感じる色々柔らかい身体で問題がある。さっさと海の家に運び治療をしはじめる、ビクビク痛がるなまえチャンを見ているとこう腰にくる部分があって尚更問題があることに気付いた。頭沸いてんじゃねーヨ俺。
頭沸いてる様な状況で、なまえチャンと2人になれる様に持っていく。もう我慢出来ない、戸惑うなまえチャンを引きずり帰る事にした。後にあいつらにからかわれる事は予想ついたが、今はどうでもいい。
公園でいきなりトンチンカンな事言うなまえチャン、クラスTシャツ?彼女?意味わからねェ。とりあえず質問に答えるとあからさまにホッとするなまえチャンをからかったら、えらく素直な言葉が返ってきて反応に困った。挙句恥ずかしそうに泣きそうななまえチャンに手が伸び涙を舐める。パニクるなまえチャンが面白れェ。すがりつかれもうダメだった、手を重ねて抱きしめて気持ちを言う。
なまえチャンも言いたい事あると言うので力を弱める。赤い顔して直球で言ってくるなまえチャン。ずっと側にいろとか本当上等すぎるこいつは。
まぁ、もう我慢しねェで良いから好きな様にキスをした。初めてだと言うなまえチャンにテンション上がり余計に甘やかした。ホワンとした表情と熱い吐息がすげェエロイ。ここがある意味外で良かった。屋内だったら、初っ端から襲っていただろう。
通行人によって中断され、帰宅しようとする俺たち。スルッと手を繋いできたニヤついたなまえチャン。
とりあえず覚悟しとけヨ。
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