かわいい彼氏


8月も終わりそうだ。と言うことは夏休みが終わりが近い事になる。

夏休み明けには総合テストが待っている。中間や期末に比べると軽いもんだけど、私としては前回が悪かっただけ挽回したいとこだ。

今日はこれから荒北家でお勉強予定だ。海の日以来、一応付き合っているのだが、ほとんど顔合わせて居ない。なぜなら、荒北が部活が忙しいからだ。まぁ分かり切った事である。
でもそれを咎める事もしない私だ。付き合っても荒北は荒北、私も私の生活は維持したいと思う。なんしろ荒北が束縛嫌いそうだしね。


約束の14時までもう少し。
私は部屋着のようなそうで無い様な格好をする。今までが今までだっただけ、彼氏の家に行くからって気合いいれるのは恥ずかしいので、ある意味着るものを悩む。

勉強道具をもって外にでる。暑い空気で湧き上がる汗をハンカチで拭う。

荒北家の前で立ちすくむ。イ、インターホン押して良いんだろうか。少しは邪まな気持ちが僅かながらもあるため素直に押すことが出来ない。この前まで押せたんだけどな。家の前をうろちょろして結局携帯で"着いたよ"とメールをする。
数十秒で玄関から荒北が顔を出した。
「ハイ、いらっしゃい」
「お邪魔しますー」
う、ヤバい、なんだか緊張してきた。荒北は私の手を握って部屋まで連れてく。
「どーぞォ」
「あ、お邪魔します」
もはやお邪魔しますしか言ってない私。
パタンッとドアを閉めた瞬間、手を引かれ荒北に向き合わされてキスされる。
「.........った」
耳元とですっごい小声で囁かれた、らしくない台詞。"会いたかった"もうなんてカワイイのだろうか、初めて男性がカワイイと思ってしまった。
"私もだよ"小声で素直に返した。恥ずかしいので軽く抱き着く。荒北のトクントクンと鳴る心音が心地いい。

「...ヨシ、荒北勉強するよ!」
荒北を引き剥がす。互いに顔が真っ赤なのはお互い突っ込みはしない。ブーメランで返ってくるのは分かってるからだ。
「...ヘイヘイ」
頭をガシガシかきながら、"茶ァ持ってくるから適当に座ってて"と言われたので大人しく荒北が勉強していたところと向き合いになる形で座る。
...ここは慣例に従ってエロ本を探さないといけないのだろうか。そうと決まれば、とりあえずベットの下を覗く。んーCDと参考書くらいかな、ないの、かな?
「何してんのォ?」
「!?いやちょっと、慣例に従ってエロ本でもあるかと思って」
「んなとこに隠さねェヨ」
ですよねぇ。やっぱ人くるので違う場所に移してるか。チッ。

麦茶を一口頂き、勉強モードに入る。
「分からないとこあったら言って、私も解けるかわからないけど」
「ヘイヘイ、優等生様ァ」
2人で机に向う。

カリカリシャーペンの音が響く部屋。荒北にこれどーゆーことォ?と時々質問されながらお互い勉強を進める。
目の前にはノートに向かっている荒北、目を伏せているのでまつ毛が目立つ。荒北ブサイクかと思いきやチラチラ綺麗なんだよね。指も細長くて綺麗だ、雑に動くけど色気があるんだよね。ジロジロとここぞとばかりに荒北を観察する私、中々荒北と一緒に居ないしなぁ。

「....何見てんのォ?」
少し頬を染めた荒北が顔を上げる。あ、バレてたんだ。
「中々一緒に居ないので観察してました」
「チッ勉強しろ」
荒北に勉強しろと言われる日が来るとは思わなかった。フフッと笑って私もノートに向かう。



しばらく経った時、荒北が一言言い出した。
「飽きた」
まぁかれこれ2時間勉強に向かってたもんね。
「アイスでも買いにいく?糖分補給に」
「デブるヨ、なまえチャン」
余計なお世話だ。

コンビニに行くことになった。暑い中2人で歩き出す。話題はもっぱら部活の事だ。ある意味付き合っても変わらないこの関係が居心地が良い。
コンビニに着いてアイスを選ぶ。そんな時に私に話しかけてきた人がいた。
「みょうじアイス買いにきたのか?」
「あ、佐藤君!久しぶり、もう暑くてねー」
ラフな格好している佐藤君だった。
「だよなぁ」
言いながら世間話を始めそうになった時、他のレーンに居た荒北が近寄ってきたらしく私の肩に顎を乗せてきた。
「なまえチャン太るんじゃナァイ?」
「「荒北!」」
「あー...佐藤クンも久しぶりィ」
佐藤君は私達の顔を見比べる。
「やっと付き合ったのか?」
鋭い佐藤君だ。何て言えば良いのだろうか、チラッと荒北を見る。
「...ソー、俺のだから手ェださないでねェ」
佐藤君が吹き出した、そこからケラケラ笑ってる。そ、そんなに笑う事なの?
「ハハッ良かったなみょうじ」
「あ、ありがと」
会計をして佐藤君に手を振って別れる。

そこから帰り道は無言になった。
「荒北?」
「あー...来年は交換すっからァ」
手首を掴まれる。ブレスレットの事か。
「...あんたどこまで知ってんのよ」
「たまたまだ、たまたまァ!」
私の彼氏はストーカーだったのではないかと言うほど私を見ていてくれたようだ。嬉しいっちゃ嬉しいが微妙に怖いんですけど。

荒北家に帰ってからアイスを食べる。私はサッパリチョコミント、荒北はソーダの氷系のアイスだ。
「なまえチャン一口ちょーだい」
私の手ごと寄せて一口かじられる。
「ドーゾ」
私にもくれるようだ。所謂アーンで、なんか恥ずかしいな。
荒北に向かって口を開くアイスを乗せたプラスチックのスプーンが口に運ばれる。ん、冷たい。
「冷たくて美味しい」
「そりゃ良かったなァ」
アイスを食べ終わって勉強っとならなかった。

腕を引っ張られあぐらで座ってる荒北の足の間に座らされた。身体に緊張が走る。
「えと、荒北?」
「補給ゥ」
背後から抱きしめられる。背後から伝わる暖かい体温が心地良い。
着ていた服を少しズラされて、首筋にキスされる。ピリッとした少しの痛みが身体を走る。
「んっ、あ、荒北見えるとこに痕つけないで」
さすがに今回はお願いする。少し言うの遅かった、今一つつけられたところだが。
「...ヘイヘイ」
「ヘイは一回」
「ヘイ」
素直な荒北はやたら可愛い。思わず手を後ろにやって荒北を撫でる。
「...襲っていい?」
「生理だから、ダメ」
私の今日の余裕はこれだ。
「腹痛くねェの?」
「もともと軽い方だから大丈夫だよ」
荒北はスルッと私のお腹に手を当ててあっためてくれる。ヤバい、幸せかもしれない。
「ありがと」
だから
「また、今度ね?」
自分からこんなこと言ってしまって顔に熱が集中する。もう後ろは振り向けなくなった。
「耳真っ赤だヨ、なまえチャンの今度はいつになるか楽しみだなァ」
今度も今度で引き延ばそうとしている私。耳をペロッと舐められて、ビクッと反応する身体。
「ぅ、うるさい」


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