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ミサキ達に合流して、お昼も食べ終わった。自販機でペットボトル買って、ダラダラ歩いて校庭に集合する。
ミサキに最前列で応援してるよと言ったら嫌な顔された。もちろん競技は校庭の真ん中で行うので、生徒は周りを囲む感じに観戦する。

他の友人達とムカデ競走を応援する。うん、やっぱりあの動きキモい。
あーだこーだ友人と話しながら観戦する。ってなかなかいい成績じゃん!帰ってきたミサキに労いの言葉をかける。


目の前では体育祭委員や生徒会的な人たちが、テキパキの次の障害物競走の障害物を準備していた。本当体育祭委員とかにならなくて良かったと常々思う。

コースはぐるっと校庭を回る感じになっている。最初は平均台、網くぐり、パン食い、スプーンにピンポン球、借り物という盛り沢山なコースだ。
私達の目の前には借り物障害が準備されていた。なかなか面白い位置取りだったかもしれない。

一年女子男子からスタートする。いくら早くても大体借り物で逆転したりするものだ。可愛い女の子がウサギの耳のカチューシャつけさせられて走ったり、ネタ要員っぽい男子が校長を連れてきたり、なぜかブロッコリー持ってたり、ありきたりにペンを借りていく人もいる。中々カオスな状態だ、そして借り物に差があるような気がするが運としか言いようがない。

一年生が走り終えて、次が二年生だ。遠くから歓声が聞こえる。どうやら東堂君も出るらしい、そして新開君と同じレースらしい。東堂君と同じくスタート前からキャーキャー言われていた。隣の友人も東堂君ファンだったのかキャーキャー言っている。確かに美形だからね。

スタートのピストル音に合わせて新開君は東堂君に向けて指でバキュンポーズだかをやっていた、それよりも早くスタートしようよ。
遠くから見てても新開君はパン食い障害は誰よりも早かった。もうあの人にとってはご褒美ではないでしょうか。
そして、東堂君はスプーンに乗ったピンポン球がブレることなく走ってくる凄技を見せてくれた。

借り物障害では、新開君はママチャリ、東堂君はマイクだった。新開君は札を見た瞬間走りだしてママチャリにのった新開君が表れたと思った瞬間かつてない速さのママチャリが目の前を通過して一番にゴールした。よし、よくやった。
東堂君は実況席のマイクを借りて、"登れる上にトークも切れる!更にこの美形〜"まさかの借りたマイクで何かのパフォーマンスをしながら黄色い声援とともに走っていった。場を沸かせることが出来るピッタリなお題だった。

あ、次のレースは荒北だ。と、あの金髪な人って確か"フクチャン"?だっけ、時々荒北の話に聞く。
それにしてもいつも以上に眉間の皺が深そうな顔つきをしている。まぁ精々応援してやろうじゃないの。
隣の友人は東堂君についての魅力をまだ語っている。うん、個性が強いっていう事はよく分かるよ。未だ遠くで黄色い声援が聞こえるもん。

スタート前、荒北はヤンキー座りしながら、"フクチャン"と話をしている、荒北には聞いていたけどフクチャンは表情が全く変わらない。

ピストル音と、ともに走り出す。荒北はおそらく身軽なんだろう、平均台や編みくぐりもヒョイヒョイ抜けていく。ただパン食い障害で、時間かかって後続に抜かれていっている。
スプーンの上にピンポン球を乗せてフクチャンが一番に借り物障害に到着した。選んだ札をみても顔色が少しも変わらず一目散に何処かへ走り去った。一体お題はなんだったんだろうか。

続々他の人が到着して借り物の札を見ては、少し困った顔をして走って借りに行ったりしている。荒北は最後の到着だった。いやいやどんだけパン食い時間かかったのさ。最下位だし簡単なお題が当たるといいね荒北よ。

荒北はパッと札をひいて、見た瞬間眉間の皺が深くなった。ゴール付近をチラ見して、そして札を見ながら頭をガシガシかきながら固まってる。そんな無理難題なんでしょうか、大丈夫か?
一般的には怖い顔している顔を上げる...瞬間バチッと目があってしまった。え、どうした?私ペットボトルしか持ってないよ。それなら貸すけど、ペットボトルを振ってアピールしてみた。
怖い顔してつかつかと寄ってくるので周りが不思議な緊張感に包まれる。歩み寄ってきた荒北は私の正面で止まった。と思ったらしゃがんで目線が合い、荒北の伸びた右手が私の顔の横を通って
「...借りんヨ、なまえチャン」
「え、?」
私だけが聴き取れるくらいの声量でボソッと呟かれながら、サイドで髪をまとめてあったシュシュをスルッと取られた。
今までにない息がかかりそうな近い距離と息が止まるような感覚とで返答する暇さえなかった。地味なゴムで一回まとめてあったのでほどけなかったけど、随分地味になってしまった私の髪型。
私が呆気にとられている間に荒北は私から奪ったシュシュを持ったまま走り出してゴールをした。ゴール間際にリンゴを持ったフクチャンに抜かれてたけど。
荒北のお題はヘアアクセサリーだったらしい。

まぁ言ってしまえば荒北は他のクラスだし、ぶっちゃけどうでもいいんだよ、私への周囲の意味深な視線に比べればね。何か言ってこようよ、何この触れちゃいけない感は。荒北も荒北だ、シュシュ貸してくれの一言あれば私が自身でとって渡すのに。珍しく名前で呼ばれたり、言葉より行動したせいでなんとも言えない空気になったじゃないか。

後々ミサキには"本当仲良い幼馴染ですこと"と言われたので、"はいはい、お好きにご想像下さい"っと返してやった。まぁ目の前に東堂君が居たら東堂君からカチューシャ奪っていただろうしね。

リレーも無事に終わり、私達のクラスはそこそこの成績で体育祭は終了した。

貸したシュシュはリレー後に新開君経由で返ってきた。






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